MENU

【永久保存版!】現役大学院生が教える熱力学のオススメ参考書

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

古典力学の勉強を終えた物理学科の学生は,電磁気学とほぼ同時期に熱力学も勉強することになります。
熱力学は古典力学・電磁気学と並んで古典物理学の一分野であり、熱機関や化学平衡を始めとして、工学や化学への応用も多岐にわたります。

熱力学は将来、統計力学を勉強するための基礎になります。
加えて最近はブラックホールに熱力学と酷似した物理法則があるという事も議論されており、大変重要な分野となっています。

ここでは皆さんが図書館や書店で簡単に手に取れる本をピックアップするため、和書に限定して紹介していきたいと思います。

熱力学を勉強する前に

熱力学とはどういう学問か

ちなみに、熱力学には大きく分けて平衡系の熱力学と非平衡系の熱力学がありますが、後者は未だに理論が殆ど確立していないため、通常熱力学とは平衡系の熱力学を指します。
この記事でも、以下平衡系の熱力学の本を紹介していきます。

熱力学に必要な物理数学

さて、ここまで皆さんは古典力学で常微分方程式を主な数学的手法として用いて運動を予測し、電磁気学でベクトル解析を手法として用いてベクトル場について理解を深めてきました。
これに対して熱力学では、あまり高度な物理数学は要求されません。
熱力学の法則は偏微分と全微分の形で記述されるため、基本的な微分積分学を理解していれば十分です。

但し、熱力学関数を勉強する時にルジャンドル変換について深く学びたい場合は関数解析の基礎も少し必要になります。

 熱力学の基礎を理解したい人への3冊

熱力学をサクッとマスターするならコレ!

馬場敬之、『熱力学』、マセマ、2017
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★☆☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

単位取得が危ういので熱力学の基礎をサクッとマスターしたいという人にはこの本がオススメです。
発展的な問題は扱っていませんが、熱力学の基礎を例題を交えて分かりやすく解説しています。
なお、マセマのシリーズはそれぞれの分野をマスターするために最低限必要な知識が分かりやすくまとめられているので、新しい分野を勉強する時の1冊にオススメです。

初学者に配慮し尽された、熱力学の入門書

}
芦田正巳、『熱力学を学ぶ人のために』、オーム社、2008
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★☆☆☆☆】

熱力学の基礎を理解したい人には、前述のマセマのほかにこの本もあります。
ところどころで著者による自問自答があり、初学者が躓きやすいところがしっかりとフォローされています。
なお、必要最低限の演習問題もあるため、理解を確かめながら進んでいくことが出来ます。

平易な語り口で書かれた標準的な教科書!

押田勇雄・藤城敏幸、『熱力学』、裳華房、1998
【難易度:★★☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

この本は興味深い応用が紹介された個性的な本という類の教科書ではありません。
しかし、標準的な内容を徹底して平易な語り口で解説しているのが特徴です。
今何の問題を考えているのかを常に意識しながら進むことが出来る、初学者にとって非常にありがたい入門書であると言えるでしょう。

熱力学の応用を見てみたい人への2冊

エントロピーの応用を知りたいならコレ!

ナイム、『エントロピーの正体』、丸善出版、2015
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★☆☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

エントロピーの考え方は情報理論や生物物理学、宇宙物理学などに応用されています。
これらの分野にどのように応用されているのかを知りたい人はこの本をお勧めします。

物理化学への応用を見たいならコレ!

アトキンス、『アトキンス 物理化学要論』、東京化学同人、2013
【難易度:★★☆☆☆ ボリューム:★★★☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

物理化学への応用が見たい人にはこの本がオススメです。
物理化学において熱力学がどのように応用されているのかを知ることが出来るでしょう。
また、明解な図と豊富な例題・演習問題で着実に理解しながら進んでいけるのも大きな特徴の1つです。

熱力学の問題演習をしたい人への3冊

サクッと熱力学の問題演習をしたいアナタにオススメ!

馬場敬之・高杉豊、『演習 熱力学』、マセマ、2016
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

おなじみマセマシリーズの演習書です。
熱力学の問題演習をサクッとこなしたい人にオススメです。
熱力学の基礎的な問題が収録されています。

収録問題数758問!辞書として持っておきたい問題集!

原島鮮、『熱学演習―熱力学』、裳華房、1979
【難易度:★★☆☆☆ ボリューム:★★★☆☆ 網羅性:★★★★☆】

演習書として古くから使われ続けている本としてこの本があります。
熱力学のココロを理解するために必要十分な量の演習問題があります。
原島鮮さんの語り口はとても分かりやすいのでオススメです。

現代物理学へのつながりを意識した好個な問題集!

久保亮五他、『大学演習 熱学・統計力学』、裳華房、1998
【難易度:★★★★☆ ボリューム:★★★★☆ 網羅性:★★★★★】

熱力学の本格的な演習書としてはこの本があります。
この本は後半が統計力学の問題演習になっていて、そういった意味でも長くお世話になる本です。

より深く熱力学を学びたい人への4冊

熱力学史を学ぶ人のバイブル!

山本義隆、『熱学思想の史的展開1・2・3』、ちくま学芸文庫、2009
【難易度:★★★★☆ ボリューム:★★★☆☆ 網羅性: ― 】



熱力学を学び終えた後、熱力学の発展の歴史に興味を持った人もいるかもしれません。
そんな人へオススメなのがこの本です。
この本では熱力学における思想の発展が生き生きと描かれています。

現代的視点から熱力学を整理した名著!

田崎晴明、『熱力学―現代的な視点から』、培風館、2000
【難易度:★★★☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】

熱力学を本格的に勉強したい人へぜひオススメしたいのがこの本です。
仕事を主役にして話を進めていくことで熱力学の本質に迫っていくというスタイルをとっています。
なお、章末の演習問題はやや難しい問題もあるので、読了してからまた戻ってきても良いかもしれません。

相転移なども詳しく解説された現代的な教科書!

清水明、『熱力学の基礎』、東京大学出版会、2007
【難易度:★★★★☆ ボリューム:★★★☆☆ 網羅性:★★★☆☆】


田崎晴明さんの本を読み終えた後に読む本として、この本がオススメです。
将来統計力学や物性物理学を学ぶことを考えて、随所に工夫がなされています。
また、相転移を議論する場合に論理破綻が起こらないような形式で議論をしているのも特徴の1つです。
ちなみに、著者のホームページに大学の講義の受け方などについて著者の意見が書かれているので、気になる人は参考にしてみてください。

熱力学・統計力学の名著!

キャレン、『熱力学および統計物理入門 上・下』、吉岡書店、1999
【難易度:★★★★☆ ボリューム:★★★★☆ 網羅性:★★★★☆】

昔から定評のある名著としてこの本が挙げられます。今日多くの本で目にする説明はこの本が基になっていることが多いです。
ちなみに、上・下となっていますが、下巻の内容は殆どが統計力学です。

まとめ

さて、いかがだったでしょうか?
入門書を探している人、演習書を探している人、発展的な本を探している人、様々かもしれませんが少しでもこの記事が皆さんの参考になることを願って筆をおきたいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。