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第01講:物理学における楕円関数論

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楕円関数論とは何か

楕円関数論とはその名の通り,楕円関数について扱う分野です.楕円関数はもともと,楕円の州の長さを求めるために研究されていた楕円積分の逆関数として発見されました.楕円関数の主たる特徴は,その二重周期性にあります.複素関数論を前提知識として考察がなされます.

数十年前までは楕円積分の教科書も盛んに出版されていたようですが,近年はあまり出版されておらず,今出版されている楕円関数論の本も殆ど復刻版です.

微分積分や線形代数と違って必修科目として大学で習うことはまず無いため,そういう意味では軽視されがちですが,しかし,一方で非線型物理学を中心として物理学の至る所に登場するため,近年その重要度に再び注目が集まっています.この講座では楕円関数論の気持ちを理解してもらえるように解説を行います.

この講座の目的と構成

この講座は物理学における楕円関数論の応用を理解することです.具体的には,参考文献[4],[5]に出てくるような楕円関数の計算が出来るようになることが目標です.講座は以下の構成になっています.

[第1章 物理学と楕円関数論] 

[第01講:物理学における楕円関数論]

[第2章 楕円積分] 

[第02講:楕円積分]
[第03講:標準形1]
[第04講:標準形2]
[第05講:実楕円積分と楕円無理関数]
[第06講:楕円積分の多価性]
[第07講:楕円積分の分類と第1種楕円積分]

[第3章 Jacobi の楕円関数] 

[第08講:第1種楕円積分の逆関数と周期関数]
[第09講:楕円関数とsn,cn,dn 関数]
[第10講:加法公式]
[第11講:乗法公式]
[第12講:不定積分]
[第13講:実楕円関数]
[第14講:Landen 変換]
[第15講:第1種実楕円積分の計算]

[第4章 Wierstrass の楕円関数] 

[第16講:記号及び規約と楕円関数の一般性質]
[第17講:$\wp$関数1]
[第18講:$\wp$関数2]
[第19講:$\wp$関数の例]
[第20講:$\zeta$関数]
[第21講:$\sigma$関数]
[第22講:楕円関数の表示式]
[第23講:$\wp$,$\zeta$,及び$\sigma$関数の加法公式]
[第24講:$\wp$関数の乗法公式]
[第25講:楕円関数の特性]
[第26講:$\sigma_1$,$\sigma_2$,$\sigma_3$関数]

[第5章 $\vartheta$関数とその応用] 

[第27講:$\vartheta$関数]
[第28講:周期に対する性質]
[第29講:無限乗積展開]
[第30講:$\sigma$関数との関係]
[第31講:$\wp$関数との関係]
[第32講:sn 関数との関係]
[第33講:楕円積分の計算]
[第34講:楕円の弧長と双曲線の弧長]

[第6章 母数関数] 

[第35講:絶対不等式]
[第36講:基本領域]
[第37講:$J(\tau)$の値]
[第38講:母数関数]
[第39講:関数$\lambda(\tau)$]

[第7章 代数的加法公式] 

[第40講:代数的加法公式をもつ関数1]
[第41講:代数的加法公式をもつ関数2]
[第42講:代数的加法公式をもつ関数3]

[第8章 物理学への応用] 

[第43講:振り子の問題]
[第44講:可積分な独楽]
[第45講:可積分な非線型格子]

第2章から第7章に関しては大部分の解説を参考文献[1],[2]に頼りました.第8章に関しては参考文献[3],[4],[5]で扱われている問題を参考にしました.それぞれ表記は参考文献[1],[5]に合わせてあります.この講座は,参考文献[5]を読みたい人などが楕円積分をしっかりと身につけられるように作成しました.

参考文献

参考文献は以下の通りです.

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し,著作権消失済み.
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み.
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み.
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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