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大学生・院生のための英語論文フォーマット 〜スタイルの種類、アブストラクト・本文の書き方〜

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本記事では、英語論文を執筆する際、最重要事項の一つである(それでいて見落とされがちな)、「フォーマット」について紹介します。

今回は、アカデミックな領域で最も有力な3つのフォーマット(CICAGOスタイルMLAスタイルAPAスタイル)の概要を解説し、その上で、アブストラクトと本文の基本的なフォーマットについて紹介します。

では、引用の書き方について、それぞれのスタイルを比べつつ、解説を加えていきたいとおもいます。

フォーマットはなぜ大切か?〜研究倫理・論文の正当性のアピール〜

本題に入る前に、「フォーマット」という、一見外面的な要素が、なぜそれほど大切なのかということについて、所見を述べておきます。

今日、どんな分野であれ、アカデミックな研究活動に参加する場合には、英語での論文執筆・投稿を免れる場合というのは、ほとんどないと言って良いでしょう。

文系の場合、フランス語やドイツ語などの欧語での研究が推奨される分野もしばしばですが、こと理系に至れば、ほとんどの場合が英語を求められると言えるでしょう。

しかし、日本の高校・大学での必修課程で、英語論文の書き方を一から教わるという機会は、実はほとんどありません。

そのため、学部課程での学内発表、学会発表、論文投稿や卒業論文など、あるいは、院進後の研究発表・投稿において、ぶっつけ本番で英語論文の執筆に挑まなくてはならないシチュエーションも増えてくるわけです。

そこで、英語で論文を書く場合、まずはじめの難関はどこにあるでしょうか。英語の語彙力・表現力でしょうか。

論文の構成でしょうか。
それとも、英語で書きながら思考する能力でしょうか。

これらのどれもが、英語論文執筆にあたっての頭痛の種になりうるということは間違いありません。

しかし、管見によると、とくに学部生が論文を執筆する際に最も問題を含みうるのは、こうした内容面ではなくて、形式面、つまり、論文のフォーマットなのです

フォーマットとは、文のスタイル、パラグラフのレイアウト、引用のルール、その他諸々の、外見上の事柄です。

こうした外見上の問題は、外面的だから「内容より重要でない」と考えてはなりません。

むしろ、外見上の問題こそ、執筆者が学問のルールをしっかり学び、これを守り、誠実に研究に向き合っているということを示すための、重要なアピールポイントであり、同時に判断基準なのです。

そのため、フォーマットを守っていない論文は、単に印象が悪いということだけではなく、執筆者の研究モラルや、研究者としての信頼性を疑われてもおかしくないといっても過言ではないのです。

剽窃や研究不正が頻繁に問題になる昨今においては、フォーマットを守ることが、その論文の正当性をアピールするひとつの手段にもつながる、というわけです。

要するに、論文のフォーマットとは、一定クラスのレストランに入る際のドレスコードと同じように、厳格なルールであり、かつ執筆者の品格とマトモさを判断する基準のひとつである、ということです。

高級レストランにTシャツ・ジーパンで入店すれば、白い目で見られるばかりか、最悪の場合、追い出されても文句を言えません。同様に、フォーマットを守らない論文がこきおろされたとしても、仕方のないことなのです。

3つのフォーマット(CICAGOスタイル、MLAスタイル、APAスタイル)

英語論文において、学際的に力を持っている、

  • CICAGOスタイル
  • MLAスタイル
  • APAスタイル

と呼ばれる3つのフォーマットがあります

実は、論文執筆の際に守るべきフォーマットは、専門分野・学会・雑誌などによって異なっており、枚挙にいとまがありません。

それぞれのフォーマットについては、執筆の際に指定されると思いますので、それに従って校正すれば良いでしょう。

しかし、そうはいっても、筆者の知る限り、様々なフォーマットは基本的に、CICAGOスタイル、MLAスタイル、APAスタイルの3つの組み合わせからなっています。
そのため、最初の基本として、これら3つのフォーマットを知っておくことは、ほとんど必須事項なのです。

 

雑誌や学会にかぎらず、学内発表や授業・演習などの場面で、先生や研究室のメンバーの前で恥をかかないためにも、基本の3フォーマットのどれを使うか、しっかり決めておくのが良いでしょう。

フォーマットの対象分野と特徴

まず、上の3フォーマットが、どのような分野で主に使われており、どのような特徴をもっているのか、簡単にまとめておきます。

これをもとに、自分に一番向いているのはどれか、判断するのがいいかと思います。

⑴ CICAGOスタイル

対象分野 … 人文科学(哲学、言語学、歴史学)、社会学、経済学、政治学、情報系、etc.

特徴 … シカゴ大学出版会がさだめたスタイル。基本的には人文系に用いられるものの、社会科学や経済学、政治学など、理系と学際的に関連する分野でも用いることがある。情報系の学生が用いるケースもしばしば。

⑵ MLAスタイル

対象分野 … 人文科学(哲学、言語学、文学)、社会学、経済学、政治学、自然科学系、etc.

特徴 … 米国現代語学文学協会によるスタイル。こちらも基本は哲学、文学、言語学などの人文諸学での使用を念頭において作られたが、科学系であれば、理系での使用も見られる。

⑶ APAスタイル

対象分野 … 社会心理学、心理学、医学、生物学、社会学、経営学、etc.

特徴 … アメリカ心理学会によるスタイル。心理学を中心に医学系での用例がある。また、社会学関連や、経営学などでも用いることができ、最も学際的なスタイル。

以上が、主要3フォーマットの基礎情報です。

ひとつ注意して欲しいのは、「対象分野」といっても、あくまで「用例が多い分野」ということであって、「他の分野で使用してはならない」ということを意味するわけではない、ということです。

たとえば、工学系の学生がAPAを用いたり、化学系の学生がMLAを用いたりしても、問題のあるわけではないでしょう。

大切なことは、ひとつのスタイルに定めたら、そのルールにしたがって執筆する、ということです。

つまり、どのスタイルを選ぶかということが問題なのではなく、ひとつの一貫したスタイルで書くことが問題なのです。

先ほど、フォーマットをドレスコードに例えましたが、その場合でも、[イカ胸シャツ+蝶ネクタイ]を選ぶか、[ボタンダウン+レギュラータイ]を選ぶかが大事なのではなくて、
[イカ胸+レギュラー]とか、[ボタンダウン+蝶ネクタイ]とかいった、ちぐはぐな組み合わせをしないということが大事だと言えるでしょう。

自分がどのスタイルを選ぶべきかということについては、指導教員や先輩の作った論文やレジュメを参考に、決めておくのがいいかもしれませんね。

フォーマットの基本

ここでは、最低限重要な事柄として、アブストラクト本文の書き方について、基本的なフォーマットを確認しておきましょう。

実のところ、パラグラフのレイアウト、つまりおおまかな書式については、3スタイルの間にあまり違いはありません

強いて言うならば、CICAGOのマニュアルが、他のものよりもいっそう詳しく解説を与えているくらいで、レイアウトについて外面上大きな相違は生じないでしょう。

ですから、ここでは、一般的な英語論文におけるフォーマットとして、CICAGOスタイルのものを参考に、レイアウトを示してみることにします。

アブストラクト/キーワード

掲載誌によりますが、一般的に、英語論文の多くは、アブストラクト(「概略」の意、通称「アブスト」)からはじまることが多いです。

アブストラクトの役割は、実際の論述に入るまえに、論文の手段・目的・成果について、手短にまとめることです。

これがあると、読み手としては、気軽にその論文のポイントをつかむことができるので、非常にありがたいですね。

アブストラクトの下には、これも場合によりますが、しばしば「キーワード」を記します。

キーワードは、基本的に、3〜5語程度で、研究分野を限定する言葉を選びます。

キーワードの役割も、アブストと同様で、一目で自分の研究領域を明示することにあると言って良いでしょう。

例を示してみると、次のようになります。

Abstract

This is a sample format of Abstract in English essay. When you write a paper in English, you ordinary start with a short sentence called abstract, which mostly consists of only one paragraph. Abstractive part is that which explicates the principal part of the following body. You have to write an Abstract in order to show your argument clearly to the readers.

Keywords: Logic, Modal Logic, Semantics, Possible World, Kripke

このサンプルでは、次のようなフォーマットを使用しています。

  • フォント…Times New Roman
  • 文字サイズ…12 points
  • 行間…5 points
  • 両端揃え
  • 段落の字下げをしない

細かい点は好みによりますが、とくに大事なことは、英語論文の場合、論文の最初の一段落目に限っては、字下げをしないというルールです。

フランス語やドイツ語の場合はこの字下げを行いますし、日本語でも原則段落の字下げは行いますが、英語の場合、最初の段落に限っては字下げをしません。それ以降の段落は、普通に字下げをします。

また、文字サイズは、日本語の場合よりもアルファベットの方が小さめに見えるので、通常11〜12ポイント程度が好まれます。

アブストラクトについては、わかりやすいように書きなれるようにしましょう。

本文のレイアウト

本文のレイアウトは、基本的にシンプルなものです。

ここでもまずは例を使ってみてみましょう。

This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style.

This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation. This is citation.1.

This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style. This is body sentence in Cicago style.

1  William Smith, 2019, p. 56.

  • フォント…Times New Roman
  • 文字サイズ…12 points
  • 行間…5 points
  • 両端揃え
  • tabキーで段落の字下げ
  • 引用文はインデント
  • 引用文の出典元を注釈で記す。

これが、基本的な英文エッセイの本文の書き方になります。

大事なルールは、まず、本文では段落の字下げを行い、tabキーを使って字下げをすることです。
日本語の感覚で全角1文字スペースだと、英文においては小さすぎるのに注意しましょう。

また、引用文にインデントを加えることも忘れないようにしましょう。
引用をインデントしていない場合、本文との見分けがつきませんので、ややこしくなってしまいます。

最後に、引用の出典元を注釈するのを忘れないようにしましょう。

注釈は、論文でしたら、多くの場合が脚注です。文末注でもダメということはありませんが、いちいちページをめくりつつ確認することになるので、読者にとってはあまり望ましくないこともあります。ともあれ、指定に従いましょう。

出典元の注は、ここでは、或る種の略号を用いています。すべての書誌情報を記入する手もないことはありませんが、それはここではふれないことにしましょう。

まとめ

以上、CICAGOスタイル、MLAスタイル、APAスタイルの概略と、基本的な本文の書き方でした。

ポイントをまとめると、次のようになります。

  • 説得力ある論文を書くためには、フォーマットを守ることが大事。
  • 3つのスタイルには、専門分野によって使い分けがある。
  • どのスタイルを使うかはある程度自由だが、一貫した論文を作ることが肝心。
  • 英語論文では、基本的にアブストラクトとキーワードを記載する。
  • 引用する際には、注釈で出典元を記す。

以上です。

3スタイルの細かい違いについては、実際に引用の仕方や参考文献の記載などのルールを見てみないと、あまりはっきりしたことはわからないかもしれません。

そうしたことについては、次の記事で解説を加えることにしましょう。

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