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第46講:代数的加法公式と関数4

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代数的加法公式と関数4

前回に引き続き代数的加法公式と関数について考察しよう。

$f_0(u)$の収束半径は$r$であるから、$|u|\lt r$において考えるならば

\[R_1\left\{f_0\left(\frac{u}{2}\right),\ f_0(u)\right\}=0\tag{3}\label{3}\]

としなければならない。$\eqref{3}$と

\[R_1\left\{f_0\left(\frac{u}{2^2}\right),\ f_0\left(\frac{u}{2}\right)\right\}=0\]

の間に$f_0\left(\dfrac{u}{2}\right)$を消去すれば

\[R_2\left\{f_0\left(\frac{u}{2^2}\right),\ f_0(u)\right\}=0\]

のような形の式を得る。さらにこれと

\[R_1\left\{f_0\left(\frac{u}{2^3}\right),\ f_0\left(\frac{u}{2^2}\right)\right\}=0\]

の間に$f_0\left(\dfrac{u}{2^2}\right)$を消去して

\[R_3\left\{f_0\left(\frac{u}{2^3}\right),\ f_0(u)\right\}=0\]

などの結果を得る。この手続きを一般化して、

\[R_n\left\{f_0\left(\frac{u}{2^n}\right),\ f_0(u)\right\}=0\tag{4}\label{4}\]

が得られる。これは$|u|\lt r$において成立する式である。

$\eqref{4}$の中で$f_0\left(\dfrac{u}{2^n}\right)$は$|u|\lt2^nr$において収束する。ゆえにいま原点を中心とする半径$2^nr$の円を$K_n$と名付ければ、$f_0\left(\dfrac{u}{2^n}\right)$は$K_n$において一価正則である。$f_0(u)$は$K_0$の外では収束しないが、$f_0(u)$の一つの解析接続を$f_1(u)$とすれば、$u$が$K_n$の内部にある限り

\[R_n\left\{f_0\left(\frac{u}{2^n}\right),\ f_1(u)\right\}=0\]

が成立する。これを一致の定理という。このようにして$f_0(u)$から生じる直接または間接の解析接続はすべて$K_n$内では$f_0\left(\dfrac{u}{2^n}\right)$と代数的な関係をもつことが判る、したがってそれらの解析接続同士の間にも代数的関係が成立するのである。$f(u)$は必ずしも一価関数ではないから$f_0(u)$の解析接続を種々に作る中には分岐点が現れることもあるかも知れない。

しかし、とにかく$K_n$内では一価正則な$f_0\left(\dfrac{u}{2^n}\right)$と代数的関係を保つから、$K_n$内における$f(u)$の特異点は極または代数的分岐点に限るはずである。

いま$K_n$内において考えたが、その$n$はいくらでも大きくできるのであるから、つまり数平面の任意の有限部分において$f(u)$は代数的特異点のみをもつ。

したがってまた$K_n$におけるその特異点の数は有限である。なぜならばもし無限にあれば$K_n$の内部または周囲にその集積点となる真性特異点がなければならない。それならば$K_{n+1}$の内部に代数的でない特異点があることになって不合理となるからである。

$K_n$内には有限個しか特異点がないから、そのいずれをも通らないように互いに垂直な二つの直径を引くことが出来る。任意の一点$u_0$からその二つの直径に下した垂線の足を$u_1$、$u_2$とすれば$u_0=u_1+u_2$で、$u$が$0$から任意の曲線$L$を描いて$u_0$まで来るとすればこれに伴って$u_1$、$u_2$はそれぞれの直径上を往来することになる。この直径上には特異点がないから$f\left(u_1\right)$、$f\left(u_2\right)$はいずれも$f_0(u)$から各直径に沿ってただ一通りに定められる分枝によって与えられる。

換言すれば各直径の上だけで考えれば$f\left(u_1\right)$、$f\left(u_2\right)$は各一価関数である。そこでいま曲線$L$に沿って$f_0(u)$から接続して得る$f\left(u_0\right)$の値について考えると、$f\left(u_0\right)$、$f\left(u_1\right)$、$f\left(u_2\right)$はいずれも$f_0(u)$から導かれた解析接続の一つの値で、もとの$f_0(u)$については加法公式が成立するから、一致の定理により

\[R\left\{f\left(u_1\right),\ f\left(u_2\right),\ f\left(u_0\right)\right\}=0\]

の関係が成立しなければならない。ここで$f\left(u_1\right)$、$f\left(u_2\right)$は上述のように一価であるから、$f\left(u_0\right)$は高々有限価である。すなわち$R(x,\ y,\ z)$の$z$に関する次数を$g$とすれば、$f\left(u_0\right)$は高々$g$価である。この$g$は$K_n$には無関係であることに注意を要する。

円$K_n$はいくらでも大きくできるから、次のように言うことが出来る。

$f(u)$の一つの要素について加法公式が成立するならば、$f(u)$は任意の有限変域に接続され、その特異点はすべて代数的で、その各分枝の間には代数的関係が成立し、またその分枝の数は一定数を越えない。

さてここで$f(u)$のすべての分枝の基本対称式を作るとその中で少なくとも一つは定数でないと考えてよい。その定数でない対称式を$F(u)$とすれば、$F(u)$は一価有理型である。そして$f(u)$のすべての分枝は互いに代数的関係をもつから、$f(u)$の一分枝と$F(u)$とも互いに代数的関係をもつ。すると$f(u)$の分枝については代数的加法公式が成立する、したがって$F(u)$は同定理に挙げた三種の関数の中でなければならない。それならば$f(u)$はそれの代数関数でなければならないから、次の定理を得る。

定理5.

解析関数$f(u)$の一要素$f_0(u)$について代数的加法公式

\[R\left\{f_0(u),\ f_0(v),\ f_0(u+v)\right\}=0\]

が成立するならば、$f(u)$は次の三種の中のいずれかである。

1) $u$の代数関数

2) $\displaystyle e^{cu}$の代数関数

3) $u$の楕円関数の代数関数

参考文献

参考文献は以下の通り。

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。

[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。

[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001

[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。

[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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