古典力学における常微分方程式の解法
前回のコラムではニュートンの運動方程式と常微分方程式についてを扱いました。
古典力学では、運動を記述するために常微分方程式(ODE)が頻繁に登場します。これらの方程式を解くことにより、物体の運動状態を完全に記述できます。本稿では、古典力学で頻出するODEの型を具体例とともに解説し、それぞれの解法を説明します。
一般的な常微分方程式の分類
常微分方程式は、次のように分類されます。
1) 線形微分方程式
未知関数とその導関数が一次の関係にある。
an(t)dnydtn+an−1(t)dn−1ydtn−1+⋯+a0(t)y=f(t)
2) 非線形微分方程式
未知関数やその導関数が非線形の関係にある。例えば、以下の方程式。
d2ydt2+y2=0
線形常微分方程式
一次線形常微分方程式
一次線形ODEの一般形は次のように書けます。
dydt+P(t)y=Q(t)
これを解くためには、積分因子を用いる必要があります。
1) 積分因子 μ(t)=e∫P(t)dt を計算する。
2) 方程式を両辺に μ(t) を掛けて整理する。
3) 両辺を積分して解を得る。
例題演習
dydt–2y=et
積分因子は μ(t)=e−2t。両辺に掛けると、
e−2tdydt–2e−2ty=e−t
左辺は積分可能な形になります。この式から、
ddt(e−2ty)=e−t
が得られます。これを更に積分して計算すると、以下の式を得ます。
e−2ty=−e−t+C
従って、求める解は未知定数Cを用いて
y=Ce2t–et
二次線形常微分方程式
二次の線形ODEの一般形は次のように書けます。
d2ydt2+pdydt+qy=0
特性方程式を用いることで解くことができます。
1) r2+pr+q=0 を解き、根 r1,r2 を求める。
2) 根の種類に応じて解を記述する。
例題演習
d2ydt2–3dydt+2y=0
特性方程式は以下のようにあらわせます。
r2–3r+2=0
解は r1=1,r2=2。したがって一般解は、
y(t)=C1et+C2e2t
古典力学で頻出の微分方程式
単振動の方程式
単振動は次の2階線形微分方程式で記述されます。
md2xdt2+kx=0
これは次のように書き直せます。
d2xdt2+ω2x=0,ω=√km
特性方程式を解くことで解を求めることができます。
r2+ω2=0⇒r=±iω
解は次のようになります。
x(t)=Acos(ωt)+Bsin(ωt)
減衰振動
減衰振動は次の形で記述されます。
md2xdt2+cdxdt+kx=0
一般化すると。
d2xdt2+2γdxdt+ω2x=0,γ=c2m
特性方程式を解きます。
r2+2γr+ω2=0
根の種類に応じて解が異なります。
1) 弱減衰 (γ2<ω2) x(t)=e−γt(Acos(ω′t)+Bsin(ω′t)),ω′=√ω2−γ2
x(t)=C1er1t+C2er2t,r1,2=−γ±√γ2–ω2
数値解法の必要性
解析解が得られない場合、数値解法を用います。
1) オイラー法
次のように更新式を用いる。
xn+1=xn+vnΔt,vn+1=vn+anΔt
2) ルンゲ=クッタ法
より高精度な数値解法で、次の更新式を用います。
xn+1=xn+16(k1+2k2+2k3+k4)Δt
今回のまとめ
常微分方程式は古典力学の基盤であり、運動を解析するために不可欠な手法です。線形方程式では解析解を求めやすい一方、非線形方程式では数値解法が重要となります。これらの解法を適切に選択することで、単振動や減衰振動、さらには複雑な天体運動まで、幅広い物理現象を理解することが可能です。