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【大学院入試対策】ベクトル解析演習14

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ベクトル解析演習14

今回も線積分の問題演習をしましょう。

要点のまとめ

以下、微分可能性を議論するのは面倒なので、スカラー関数やベクトル関数は全て滑らかであると仮定します。物理や工学での応用上はこれで充分です。また、定義域も空間全体R3とします。

始点と終点をもつ向きづけられた曲線C:x=x(t),y=y(t),z=z(t), atbとベクトル場v(x,y,z)=(f,g,h)に対して、
ba{fdxdt+gdydt+hdzdt}dt


という値をvの積分路C上の線積分といい、Cvdrであらわします。ここで、dr=(dx,dy,dz)です。流体力学の言葉で言えば、流体の速度ベクトルをvとしたとき、線積分はCに沿って単位時間に流れ出る流体の総量とみなすことができます。

線積分について成り立つ代表的な定理についてもまとめておきましょう。

v,wをベクトル場、λ,μを定数、C1,C2,Cを向きづけられた曲線とし、C1の始点とC2の始点が一致しているとき、以下が成り立ちます。
Cvdr=Cvdr


C(λv+μw)dr=λCvdr+μCwdr

C1+C2vdr=C1vdr+C2vdr

一般に、線積分は積分経路の取り方に依存し、始点と終点だけでは決まりません。しかし、特にスカラー場の勾配に限って言えば以下の式が成り立ちます。
C(f)dr=f(Q)f(P)


つまり、スカラー場fの勾配fの線積分は途中の経路に依存せず、始点と終点のみから決まります。特にCが閉曲線ならばP=Qなので、C(f)dr=0が成り立ちます。このようなときの線積分はと書くこともあります。

問題14

2つの向きづけられた曲線をC1: x=1,y=0,z=6πt, (0t1)C2: x=cosu,y=sinu,z=3u, (0u2π)とする。
(1)
ベクトル場v=(z,x,y)C1C2上の線積分をそれぞれ求めよ。

(2)
スカラー場f=x2y+xz3の勾配fC1C2上の線積分をそれぞれ求めよ。

(3)
(2)の結果が「要点のまとめ」の定理がコンシステントであることを示せ。

解答14

(1)
C1vdr=10(6πtdxdt+1dydt+0)dt=0


C2vdr=2π0(3udxdu+cosudydu+sinudzdu)du=2π0(3usinu+cos2u+3sinu)du=7π

(2)
f=(2xy+z3,x2,3xz2)であるので
C1(f)dr=10{(2xy+z3)dxdt+x2dydt+3xz2dzdt}dt=216π3


C2(f)dr=2π0{(2xy+z3)dxdu+x2dydu+3xz2dzdu}du=2π0(cos3u2sin2ucosu27u3sinu+81u2cosu)du

ところで、
2π0cos3udu=[sinucos2u]2π0+2π02sin2ucosudu

より
2π0(cos3u2sin2ucosu)du=0 (a)

また、部分積分を用いれば、
2π0(27u3sinu+81u2cosu)du=216π3 (b)

である。従って、(a), (b)より、
C2(f)dr=2π0(cos3u2sin2ucosu27u3sinu+81u2cosu)du=216π3

(3)

C1(f)dr=(6π)3=216π3, C2(f)dr=27×8π3=216π3


となりいずれも(2)の結果と合致している。

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