$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
宇宙物理学01
\subsection{ブラックホール}
ブラックホールの質量が増加するとブラックホールの半径・温度・寿命はそれぞれ増加するか減少するか?という問題が問われたことがある。ここでまとめておく。
\begin{itemize}
\item Schwarzschild 半径:\\
%
\begin{equation}
E=\dfrac{1}{2}mv^2-\dfrac{GMm}{r}=0
\end{equation}
%
を考えると、$v=c$のときの半径$r_{\text{H}}$は以下のように書くことができる。
%
\begin{equation}
r_{\text{H}}=\dfrac{2GM}{c^2}
\end{equation}
%
光すら脱出できないくらい強い重力を持った天体の半径であると言える。この天体をブラックホールと呼び、半径$r_{\text{H}}$をSchwarzschild 半径と呼ぶ。\\
\item Hawking 温度とブラックホールの熱力学:\\
ブラックホールの絶対温度$T_{\text{H}}$は以下で定義される。
%
\begin{equation}
T_{\text{H}}=\dfrac{\hbar c^3}{8\pi\kb GM}
\end{equation}
%
つまり、ブラックホールは自身の質量$M$で決まる温度$T_{\text{H}}$の熱放射を放出していることになる。つまり、ブラックホールは完全に「黒い」訳ではない。これをHawking 放射と呼ぶ。Hawking 放射はエネルギーを外部に放出するので、ブラックホールの質量は減少する。ブラックホールは質量が小さいほど高温であると言える。\\
\item ブラックホールの寿命:\\
ブラックホールの蒸発時間は$t_{\text{BH}}$は以下で定義される。
%
\begin{equation}
t_{\text{BH}}=5120\dfrac{\pi G^2}{\hbar c^4}M^3\propto M^3
\end{equation}
%
よって、ブラックホールの質量が大きいほどブラックホールの寿命は長い。
\end{itemize}
\subsection{その他の問題}
宇宙物理学における重要な事実として、この宇宙は膨張しているということがある。これらは結論と使い方だけ覚えておけば良い。
\begin{itemize}
\item 光子はスケール因子によって赤方偏移する:\\
%
\begin{equation}
\dfrac{\lambda_{\text{Today}}}{\lambda_T}=\dfrac{a(\text{Today})}{a(T)}\label{scale}
\end{equation}
%
但し、$a(t)$は時間の増加関数である。\\
\item 黒体放射:\\
(\ref{scale})とWien の法則$\lambda_{\text{max}}\propto T^{-1}$から、黒体放射の温度はスケール因子の比に反比例すると言える。宇宙が$2$倍に膨張したら、黒体の温度は$1/2$倍に冷却される。\\
\item Hubble の法則:\\
膨張速度は距離に比例する:$v=H_0D$。これをHubble の法則という\footnote{$H_0$はHubble の定数であると言われるがこれは誤りで、実際には時間の関数である。}。銀河が$2$倍離れている場合、$2$倍の速さで膨張しているように見えるということは覚えておく必要がある。\\
\item 赤方偏移は時間の測定に利用される:\\
赤方偏移$z(t)$を以下で定義する。
%
\begin{equation}
z(T)=\dfrac{\lambda_{\text{Today}}}{\lambda_T}-1
\end{equation}
%
これは光子が$t=T$から今日$t=\text{Today}$までにどれだけ赤方偏移したかをあらわす。そのため、$z(\text{Today})=0$となるように$-1$が付いている。故に、$z$が正なら$T$は過去の時間、負なら$T$は未来の時間に対応していることになる。\\
この宇宙論的な赤方偏移はDoppler 効果による偏移ではないということはよく問われるので注意。\\
\end{itemize}