$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
弦理論入門16
閉じた超弦
Calabi-Yau 多様体における超弦理論
低エネルギーで素粒子の標準模型の場の量子論に似た振る舞いをするような弦理論を構成するアプローチは、Calabi-Yau 多様体上の$10$次元のうちの$6$つをコンパクト化することである。これらは特に、自明な標準バンドル(標準バンドルとは、体上の$n$次元非特異代数多様体$V$上の余接束$\Omega$の$n$次外冪である。ここで、代数多様体とは多変数の連立多項式系の解集合として定義される図形のことであり、$n$次外冪とは$x_1\wedge x_2\wedge\cdots\wedge x_n,~x_i\in V(i=1,\cdots n)$で張られる$\wedge(V) = (\mathrm{Tensor~Algebra})(V)/(\mathrm{Two~sided~ideal})$の部分線型空間である。)で、以下で定義を述べるコンパクトKahler 多様体となる。
Kahler 多様体
複素次元$n$のKahler 多様体は複素Hermite 多様体であり、Kahler 形式
\begin{equation}
J = g _ { k \bar{l} } d z ^ { k } \wedge d \bar { z } ^ { \bar{l} }
\end{equation}
は閉形式である、つまり、$d J=0$が成り立つ。このことは、局所的に、次のように書くことが出来る。
\begin{equation}
g _ { k \bar{l} } = \frac { \partial } { \partial z ^ { k } } \frac { \partial } { \partial \bar { z } ^ { \bar{l} } } K ( z , \bar { z } )
\end{equation}
つまり、$J=\partial\bar{\partial}K$が成り立つ。この$K$はKahler ポテンシャルと呼ばれる。閉じたKahler 形式において、平行移動は正則な添字と反正則な添字を混合しない。$n$次元のKahler 多様体のホロノミーは$U(n)$となる。
Calabi による初期の推測に続いてYau によって証明されたCalabi-Yau の定理は、自明な標準バンドルを有する所与のCalabi-Yau 多様体に対して、Ricci スカラーが消失する、すなわち、Ricci 平坦(Ricci 平坦は、物理的には、宇宙定数が$0$となることを意味している。)である固有の計量が存在するということを主張する定理である。更に、これは複素$n$次元で、そのようなKahler 多様体がどこでも$0$とならない正則な$n$形式$\Omega$、または$SU(n)$に含まれる大域的正則性を許すということを主張するのと等価である。
弦理論では、必要とされる標準バンドルは超対称性を課すことで得られる.実際、微小な超対称性変換が消えるという条件は共変的に一定のスピノールの存在が要求され、
\begin{equation}
\nabla _ { m } \epsilon = 0
\end{equation}
となる。スピノール$\epsilon$は必要としているバンドルを提供する。$10$次元空間を$4$次元にコンパクト化するときの弦理論における最も適切な場合である実$6$次元(または複素$3$次元)では、
\begin{equation}
J _ { k \bar { l } } = – i \epsilon ^ { \dagger } \Gamma _ { k } \Gamma _ { \bar { l } } \epsilon\label{eq:4.86}
\end{equation}
\begin{equation}
\Omega = \Omega _ { j k l } \mathrm { d } z ^ { j } \wedge \mathrm { d } z ^ { k } \wedge \mathrm { d } z ^ { l } , \quad \Omega _ { j k l } = \epsilon ^ { \mathrm { T } } \Gamma _ { j } \Gamma _ { k } \Gamma _ { l } \epsilon
\end{equation}
によってKahler 形式$J$と正則な$3$形式$\Omega$は、スピノール$\epsilon$から明示的に構築出来る。但し、$\Gamma_i$は$6$次元のDirac ガンマ行列である。
Calabi-Yau 多様体の例としては次のようなものがある。
実$2$次元では、複素平面$\mathbb{C}$と$2$次元トーラス$T^2$がある。$2$次元トーラス$T^2$を除いて、コンパクトなRiemann 面は、至る所で$0$となるようなRicci スカラーを持つことが出来ず、それ故にCalabi-Yau 多様体ではないので、$2$次元ではこれ以外の例は存在しない。
\item 実$4$次元では、$2$つのコンパクトなCalabi-Yau 多様体、$4$次元トーラス$T^4$とK$3$曲面がある.コンパクトでないCalabi-Yau 多様体の例としては$\mathbb{C}^2\times T^2$と$\mathbb{C}^4$がある。
\item 実$6$次元では、多くの$3$次元Calabi-Yau 多様体が存在する。実際、$3$次元Calabi-Yau 多様体の数は無限でさえあるかもしれない.現在に至るまで、$3$次元Calabi-Yau 多様体の数の有限性についての数学的証明はなされていない(Yau は約20年前に$3$次元Calabi-Yau 多様体には有限個の族が存在すると予想したが、現在確認されている数は彼が見積もった数よりも遥かに大きいものとなっている)。非自明な解は、自明でない(すなわち縮約不可能な)サイクルを有する微分不可能な点を有する幾何学形状を必要とすることに注意せよ。






