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【弦理論入門17】超弦理論の基礎07

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弦理論入門17

双対性のウェブ

IIA 型、IIB 型、そしてI 型、$SO(32)$ヘテロ型、$E_8\times E_8$型といった異なるタイプの超弦理論はそれぞれ異なる双対性というもので関連付けされている。特にここでは、その代表例としてT 双対性とS 双対性を紹介する。

T 双対性

T 双対性とは、異なる背景時空でコンパクト化された$2$つの超弦理論が等価であるという意味の\textbf{標的空間双対性}(target space duality)である。円上でコンパクト化されたII 型超弦理論を考えよう。すなわち、座標$X^9$では周期的であるという恒等式

\begin{equation}
X ^ { 9 } \sim X ^ { 9 } + 2 \pi R
\end{equation}

が成り立っている。

閉弦のT 双対性

初めに、閉弦のT 双対性を考えよう。埋め込み関数$X^9(\tau,\sigma)$は周期的境界条件

\begin{equation}
X ^ { 9 } ( \tau , \sigma + 2 \pi ) = X ^ { 9 } ( \tau , \sigma ) + 2 m \pi R
\end{equation}

を満たす必要がある。但し、$R$は円の半径であり、$m$は閉弦がどれだけコンパクト化された方向$X^9$に巻き付いているかを数える任意の整数である。

コンパクト化されていない方向では、右進行モードと左進行モードにおけるモード分解は$p^M_{(\mathrm{R})}=p^M_{(\mathrm{L})}$となる。コンパクト化された方向でも同様のモード分解は適用できるが、$p^M_{(\mathrm{R})}\neq p^M_{(\mathrm{L})}$となる。振動項を取り除くことで、分解式

\begin{equation}
\begin{aligned} X _ { ( \mathrm { R } ) } ^ { 9 } ( \tau – \sigma ) & = \frac { 1 } { 2 } x _ { 0 } ^ { 9 } + \alpha ^ { \prime } p _ { ( \mathrm { R } ) } ^ { 9 } ( \tau – \sigma ) + \cdots \\ X _ { ( \mathrm { L } ) } ^ { 9 } ( \tau + \sigma ) & = \frac { 1 } { 2 } x _ { 0 } ^ { 9 } + \alpha ^ { \prime } p _ { ( \mathrm { L } ) } ^ { 9 } ( \tau + \sigma ) + \cdots \end{aligned}
\end{equation}

を得る。$X^9=X^9_{(\mathrm{L})}+X^9_{(\mathrm{R})}$なので、周期的境界条件は次のようになる。

\begin{equation}
\alpha ^ { \prime } \left( p _ { ( \mathrm { L } ) } ^ { 9 } – p _ { ( \mathrm { R } ) } ^ { 9 } \right) = m R
\end{equation}

$X^9$方向はコンパクト化されているので、重心運動量$p^9_{(\mathrm{R})}+p^9_{(\mathrm{L})}$は$1/R$の単位で量子化される。すなわち、

\begin{equation}
p _ { ( \mathrm { L } ) } ^ { 9 } + p _ { ( \mathrm { R } ) } ^ { 9 } = \frac { n } { R }
\end{equation}

である。従って、$p^9_{(\mathrm{R})}$と$p^9_{(\mathrm{L})}$は以下のように与えられる。

\begin{equation}
p _ { ( \mathrm { L } ) } ^ { 9 } = \frac { 1 } { 2 } \left( \frac { n } { R } + \frac { m R } { \alpha ^ { \prime } } \right)
\end{equation}

\begin{equation}
p _ { ( \mathrm { R } ) } ^ { 9 } = \frac { 1 } { 2 } \left( \frac { n } { R } – \frac { m R } { \alpha ^ { \prime } } \right)
\end{equation}

我々は今、閉弦の状態のスペクトラムに興味がある。初めに、閉弦におけるレベル一致条件は以下のように修正される。

\begin{equation}
\bar { N } – N = n m
\end{equation}

これによって、弦の状態の質量公式は以下のようになる。

\begin{equation}
M ^ { 2 } = \left( \frac { m R } { \alpha ^ { \prime } } \right) ^ { 2 } + \left( \frac { n } { R } \right) ^ { 2 } + \frac { 2 } { \alpha ^ { \prime } } ( N + \bar { N } – 2 )
\end{equation}

しかし、これで話の全てが終わるわけではない。閉弦のセクターは驚くべき対称性を有している。質量公式を考えることで、半径$R$でコンパクト化された閉弦のスペクトラムは、巻き付き数$m$と運動量の数$n$を入れ替えて半径${R^{(0)}}=\alpha’/R$でコンパクト化された閉弦のスペクトラムに等しい。つまり、

\begin{equation}
R \leftrightarrow \tilde { R } = \frac { \alpha ^ { \prime } } { R }
\end{equation}

\begin{equation}
( n , m ) \leftrightarrow ( m , n )
\end{equation}

という双対性が成り立つ。ここでは自由な弦におけるT 双対性の証明しか述べていないが、相互作用を入れた場合でも閉弦のT 双対性は量子レベルで正確な対称性となるということを示せる。

実は、$2$つのコンパクト化を区別することは不可能である(これは、どちらを巻き付き数だと思って、どちらを運動量だと思っても良いということを意味している。)。もし$R$が大きければ、それと双対な半径${R^{(0)}}$が小さいということに注目せよ。これは通常の点粒子の場の理論にはない驚くべき特徴である。T 双対性が円における巻き付き数と対応する離散的な運動量の量子数を交換するということから明らかなように、この対称性は通常の場の理論における対応物というものは存在しない。というのも、コンパクト化された次元の周りで弦を閉じるという操作が必要不可欠であるためである。

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