弦理論入門18
開弦のT 双対性
開弦の理論には巻き付きセクターがないから、一見、T 双対性は開弦の理論に適用できないように思える。しかし、開弦の端点が留まっている超曲面であるD ブレーンの助けを借りれば、T 双対性は開弦のセクターでも見ることが出来る。T 双対性を適用することで、コンパクト化された次元の半径を変えることだけでなく、D ブレーンの次元も変えることが出来るのである。
このことを見るために、コンパクト化されたX9方向がある時空でBoson 的開弦の伝搬を考えよう。更に、簡単のため、空間に満たされた、すなわち、弦の端点が自由に動けるD9 ブレーンを考える。閉弦のときにやったように、コンパクト化された方向での重心運動量は量子化される、すなわち、p9=n/Rである。これによって、n2/R2の項が弦の状態の質量公式に寄与することになる。しかし、閉弦のみのT 双対性の法則を適応した場合、この寄与は変化する。双対な半径はR(0)=α′/Rであり、質量公式への寄与はn2R(0)2/α′2へと変化する。
T 双対性はD ブレーンを考えることで開弦の場合でも回復させることが出来る。上で述べたD9 ブレーンの代わりに、双対な理論でX9方向に巻き付いていないD8 ブレーンを考えてみよう。Dirichlet 境界条件から、コンパクトな方向では運動量を持つ状態は存在しないことになる。更に、開弦の端点は取り付けた点x9=x90+2πnR(0)に残ることになる。但し、x90はコンパクト化された方向に関するD8 ブレーンの位置である。従って、質量項に寄与を与えるような双対な理論での巻き付いた状態は
(n˜Rα′)2=(nR)2
と得られる。これは確かに元々の理論の空間に満たされたD9 ブレーンでの運動量の寄与となっている。
従って、もしもD ブレーンの次元も変化するのであれば、T 双対性は開弦のセクターでの厳密な対称性となることが分かった。このことは、開弦の境界条件の種類がNeumann 境界条件なのかDirichlet 境界条件なのかということはT 双対性が起こる方向を変えるということになる。
座標X0,X1,⋯,X8方向を満たしているというD8 ブレーンを例として考えよう。これらの方向では開弦におけるNeumann 境界条件が課されている。更に、X9方向では、開弦はDirichlet 境界条件を満たす。X8方向とX9方向がそれぞれ半径R8、R9の円でコンパクト化されたと仮定すると、我々はこれらのコンパクト方向にT 双対性を適用することが出来る。X9方向にT 双対性変換を施すことによって、双対な理論での開弦のX9方向はNeumann 境界条件を満たす。故に、双対な理論ではD9 ブレーンが存在し、2つのコンパクト化された方向の半径はそれぞれR8、α′/R9で与えられる。代わりにX8方向にT 双対性変換を施すと、開弦はX8方向でもはやNeumann 境界条件を満たさない。従って、双対な理論では、コンパクト化された方向の半径がそれぞれα′/R8、R9であるようなD7 ブレーンが残ることとなる。
任意の理論とそのT 双対な理論は、右進行のRamond セクターにおいて異なるカイラリティを持つことが分かる。このことはT 双対性が右進行の基底状態または左進行の基底状態での相対的なカイラリティをひっくり返すということを意味している。もしカイラルでないIIA 型の理論にT 双対変換するとカイラルなIIB 型の理論を得ることが出来て、その逆も成り立つ。更に、T 双対性はIIA 型やIIB 型の異なるR-R 形式C(p)と互いに関連し合っている。
T 双対性を曲がった時空で適用すると、背景場が変化することになる、すなわち、計量、Kalb-Ramond 場、ディラトン場、R-R 形式場が変化する。X9方向にT 双対性変換を施すと、新たな背景場が生まれる。我々は、新たな背景場を以下のようにチルダ記号を付けて区別し、元々の場の項を用いてあらわすことにする。
{˜g99=1g99˜g9M=B9Mg99˜B9M=−˜BM9 = g9Mg99˜gMN=gMN+B9MB9N−g9Mg9Ng99˜BMN=BMN+g9MB9N−B9MB9Ng99
但し、M,N≠9である。同様の規則がR-R 形式場C(p)でも見られる。これらの関係式はBuscher 則と呼ばれている。