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弦理論入門22
超重力理論におけるD ブレーン
ここでは超重力理論の運動方程式におけるソリトンのような解を見ていく。Dp ブレーンは10次元超重力理論のBPS 解である。すなわち、背景のPoincare 超電荷\mathcal{Q}_\alphaの半分が保存する。また、Dp ブレーンはPoincar\'{e} 不変群\mathbb{R}^{p,1}\times SO(p,1)(\underbrace{\mathbb{R}^{p,1}\times SO(p,1)}_{=ISO(p,1)}である。)による(p+1)次元の平坦な超平面を持っている。故に横方向の空間はD-p-1次元である。
10次元におけるDp ブレーンは\mathbb{R}^{p,1}\times SO(p,1)\times SO(9-p)の対称性を持っている。IIB 型超重力理論の運動方程式を解くためにおく仮設(物理学における「仮設」とは方程式、定理、あるいは数学的・物理的な問題や解を記述するために初期値として設定され、境界条件として考慮される。仮設が設定された後、方程式は関数の一般形として解かれる。因みに、「仮説」と「仮設」はよく意味を混同されがちであるが、前者は「仮に立てた理論」と言う意味で後者は「一時的に立てた設定」という意味である。)は以下のとおりである。
\begin{equation} \mathrm { d } s ^ { 2 } = H _ { p } ( r ) ^ { – 1 / 2 } \eta _ { \mu \nu } \mathrm { d } x ^ { \mu } \mathrm { d } x ^ { \nu } + H _ { p } ( r ) ^ { 1 / 2 } \mathrm { d } y ^ { i } \mathrm { d } y ^ { i } \end{equation}
\begin{equation} \mathrm{e} ^ { \phi } = g _ { \mathrm { s } } H _ { p } ( r ) ^ { ( 3 – p ) / 4 } \end{equation}
\begin{equation} C _ { ( p + 1 ) } = \left( H _ { p } ( r ) ^ { – 1 } – 1 \right) \mathrm { d } x ^ { 0 } \wedge \mathrm { d } x ^ { 1 } \wedge \cdots \wedge \mathrm { d } x ^ { p } \end{equation}
\begin{equation} B _ { M N } = 0 \end{equation}
但し、x^\mu~(\mu=0,\cdots,p)はブレーンの世界体積の座標であり、y^i~(i=p+1,\cdots,9)はブレーンの垂直方向の座標をあらわしている。更に、rはr^2=\sum_{i=p+1}^9y_i^2で定義される。これらの仮定をIIB 型超重力理論の運動方程式に当てはめると、運動方程式は特にr\neq0において、以下の方程式を示唆する。
\begin{equation} \Box H _ { p } ( r ) = 0 \end{equation}
換言すれば、H_p(r)は調和関数になる必要があり、それ故に以下の形で書くことが出来る。
\begin{equation} H _ { p } ( r ) = 1 + \left( \frac { L _ { p } } { r } \right) ^ { 7 – p } \end{equation}
ここで定数1はブレーンよりも十分遠方、すなわち、r\rightarrow\inftyの極限で10次元のMinkowski 時空が回復するとして選ばれている。
この仮定からL_pを決定するためには、Dp ブレーン解の電荷を決定しなければならない。この電荷は、(9-p)次元の横方向の空間における点電荷を囲む(8-p)次元球面の無限遠方におけるR-R フラックスを積分することで得られて、
\begin{equation} \mathcal{Q} = \frac { 1 } { 2 \kappa _ { 10 } ^ { 2 } } \int _ { S ^ { 8 – p } } {}^ * F _ { ( p + 2 ) } \end{equation}
となる。但し、{}^*は10次元におけるHodge 作用素である。解において電荷\mathcal{Q}は\mathcal{Q}=N\cdot\mu_pで与えられる(ここでの電荷はコンパクト化されたところだけで見ているときの電荷なので、実際の電荷と同一視するためには体積\text { Vol } \left( \mathbb { R } ^ { p , 1 } \right)を掛けて置く必要がある。\mathcal{Q}はこの体積も含んで電荷としていることに注意が必要。)。すなわち、電荷\mathcal{Q}はDp ブレーンの総数に読み替えられる。
右辺を計算し、\mathcal{Q}=Nとすることで、特徴的な長さL_pは以下のように見出せる。
\begin{equation} L _ { p } ^ { 7 – p } = ( 4 \pi ) ^ { ( 5 – p ) / 2 } \Gamma \left( \frac { 7 – p } { 2 } \right) g _ { s } N \alpha ^ { ( 7 – p ) / 2 } \end{equation}
特に、N枚のD3 ブレーンの場合は、
\begin{equation} L _ { 3 } ^ { 4 } = 4 \pi g _ { \mathrm { s } } N \alpha ^ { \prime 2 } \end{equation}
という関係式になることが分かる。IIA・B 型の超弦理論では、R-R ゲージポテンシャルC_{(p+1)}はDp ブレーンと結合して存在しているため、pが奇数のDp ブレーンとpが偶数のDp ブレーンはいずれも安定である。これらのブレーンの質量(あるいはエネルギーと言っても良い)は自身の電荷\mathcal{Q}に比例しているから、これらのブレーンはBPS ブレーンと呼ばれる。つまりこのとき、
\begin{equation} M = \text { Vol } \left( \mathbb { R } ^ { p , 1 } \right) \cdot N \cdot \mu _ { p } \end{equation}
という関係があることが分かる。IIA 型超重力理論とIIB 型超重力理論は異なるC{(p)}形式を有しているから、2つの理論では、可能なDp ブレーンの次元性も勿論異なることになる。それぞれの理論で可能なD ブレーンは表にまとめてある。C_{(6)}形式とC_{(8)}形式はそれぞれC_{(4)}形式とC_{(2)}形式のHodge 双対である。D5 ブレーンとD7 ブレーンは処方に従って、C_{(4)}形式とC_{(2)}形式のHodge 双対にそれぞれ磁気的な結合をする。
IIB 型 | \longleftrightarrow | D(-1)、D1、D3、D5、D7 ブレーン |
IIA 型 | \longleftrightarrow | D0、D2、D4、D6、D8 ブレーン |
IIA 型超弦理論とIIB 型超弦理論のブレーン
更に、以下のようなnear-extremal non-BPS p ブレーン解というものも存在している。
\begin{equation} \mathrm { d } s ^ { 2 } = H _ { p } ( r ) ^ { – 1 / 2 } \left( – f ( r ) \mathrm { d } t ^ { 2 } + \mathrm { d } x ^ { i } \mathrm { d } x ^ { i } \right) + H _ { p } ( r ) ^ { 1 / 2 } \left( \frac { \mathrm { d } r ^ { 2 } } { f ( r ) } + r ^ { 2 } \mathrm { d } \Omega _ { 8 – p } ^ { 2 } \right) \end{equation}
\begin{equation} f ( r ) = 1 – \frac { r _ { \mathrm{h} } ^ { 7 – p } } { r ^ { 7 – p } } \end{equation}
但し、ここでは極座標\rmd y^j\rmd y^j = \rmd r^2+r^2\rmd \Omega^2_{8-p}を用いた。D ブレーンの場合、ディラトンとR-R 形式は同じ形である。これらのnear extremal ブレーンも電荷の関係式として\mathcal{Q}=N\cdot\mu_pを持っているが、質量はもはや\mathcal{Q}に比例していない。f(r_{\mathrm{h}})=0なので、パラメーターr_{\mathrm{h}}はホライズンの役割を担っている。