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【波動論】力学的波動1-波動の基礎

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$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$

波動論01

今回から波動論について学習していきましょう。
この授業では波動論の様々な分野をなるべく簡単な言葉で要約していくことを目指します。

波動論の分野はやや特殊な分野である。特に大学物理では高校物理と同様、波が生じる原理そのものにはあまり言及せず、波が存在することを前提にした上でそれぞれの現象を議論するという傾向が強い。また、テーマ間の関連はそれほど強くなく、大学の問題で融合問題が出題されることはない。従って、体系的な学習が必要とされていた古典力学や熱力学とは対照的に、テーマごとに対策をしていくという戦略が有効である。

波の性質

波動とは、厳密には以下の波動方程式の解のことである。

\begin{equation}
\dfrac{1}{v^2}\dfrac{\partial^2f}{\partial t^2}=\dfrac{\partial^2f}{\partial x^2}
\end{equation}

$v$は波の速さである。任意の解$f(x)$に対して、$f(x\pm vt)$も解となる。$f(x-a)$は$f(x)$を$a$だけ右にスライドさせたものであるから、$f(x-vt)$は速さ$v$で$x$軸正の方向に進む波をあらわす。また、任意の$2$つの解$f(x,t)$、$g(x,t)$の線型結合も解となる。これを\textbf{重ね合わせの原理}という。

解$f(x,t)$は次のように書ける。

\begin{equation}
f(x,t)=A\cos{(kx-\omega t+\delta)}
\end{equation}

$A$を振幅、$k$を波数、$\omega$を角振動数、$\delta$を初期位相と呼ぶ。波が運ぶエネルギーは$A^2$に比例する。また、波長$\lambda$と周期$T$に対して以下のような関係がある。

\begin{equation}
\lambda=\dfrac{2\pi}{k},~T=\dfrac{2\pi}{\omega},~T=\dfrac{1}{f}
\end{equation}

分散関係

波動方程式を満たす波の式は$\omega=vk$という関係式を満たす。これはもちろん理想的な場合であり、波動方程式に散逸項などが加わるとこの関係式は成り立たなくなってしまう。しかし、それでもなお$\omega$は$k$の関数であり、何らかの関係式がなりたつ。この角振動数$\omega$と波数$k$の間の関係のことを分散関係と呼ぶ。これは$\omega$が$k$の関数であるということを示しているが、$\omega(k)$からは以下の$2$つの量を考えることができる。

\begin{equation}
(\text{Phase velocity})=\dfrac{\omega}{k}
\end{equation}

\begin{equation}
(\text{Group velocity})=\dfrac{\rmd\omega}{\rmd k}
\end{equation}

特に$\omega(k)=vk$のとき、これを線型な分散関係という。例えば光速度$c$の光は線型な分散関係である。これは$c=f\lambda$が成り立つことから確認できる。線型な分散関係の場合は位相速度と群速度は等しいものとなるが、それはあくまで特別な場合である。例えば、通常の量子力学では$E=\hbar\omega$と$p=\hbar k$が成り立つので、$\omega=\hbar k^2/(2m)\propto k^2$となる。

波の性質

張力$S$、線密度$\rho$の弦の波の速さは、波動方程式から以下のように導ける。

\begin{equation}
v=\sqrt{\dfrac{S}{\rho}}
\end{equation}

典型的な例は音波である。
%大気中を伝わる音の速さは気温によって異なる。気温が高くなると音速は大きくなる。体積弾性率$K$、密度$\rho$の気体の中を伝わる音速$v$は次のように書ける。
\begin{equation}
%v=\sqrt{\dfrac{K}{\rho}}
\end{equation}
常温での音速は大体$340~\text{m}/\text{s}$である。

定常波(定在波)

波の式が$f(x,t)=A(x)B(t)$と書ける場合、その波を\textbf{定常波}または\textbf{定在波}であるという。

例えば、$f(x,t)=\cos{x}\cos{vt}$という定常波を考えてみよう。この波は$t=0$で$f(x,0)=\cos{x}$、$t=\pi/(2v)$で$f(x,\pi/(2v))=0$、$t=\pi/v$で$f(x,\pi/v)=-\cos{x}$となる。このように定常波は時間の変化に伴って振動するが、波自体が移動することはない。このことは$f(x,t)$を積和公式を用いて

波の速さと音速

\begin{equation}
f(x,t)=\dfrac{1}{2}\{\cos{(x+vt)}+\cos{(x-vt)}\}
\end{equation}

と書き換えることでより明確になる。すなわち、右方向に進行する波と左方向に進行する波が同じ振幅でぶつかって打ち消し合っている。

固有振動

管中には特定の形の定常波が発生する。開管と閉管の問題は「ふた」が開いている部分は腹、閉じている部分は節になると考える。

両端開口管の場合、$f_n=\frac{n}{2}\frac{v}{L}~(n=1,2,3,\ldots)$で与えられる。片端開口管の場合、$f_n=\frac{2n-1}{4}\frac{v}{L}~(n=1,2,3,\ldots)$で与えられる。

自由端反射と固定端反射

波の反射には自由端反射と固定端反射の$2$種類の反射がある。作図をする際、自由端反射の場合は透過波を描いてそのまま折り返す。固定端反射の場合は透過波を描いて上下ひっくり返してから折り返す。固定端反射の「上下折り返す」という作業は位相が$\pi$だけズレたことを意味している。これは光学における反射でも同様である。

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