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【熱統計力学】統計力学1-古典統計力学

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$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$

古典統計力学

カノニカル分布と分配関数

各状態$E_i$をとる確率$p_i$は以下で与えられる。
\begin{equation}
p_i=\dfrac{g(E_i)\mathrm{e}^{-\beta E_i}}{\sum_jg(E_i)\mathrm{e}^{-\beta E_j}}~,~\beta=-\dfrac{1}{k_B T}
\end{equation}
$g(E_i)$は系がエネルギー$E_i$をとるときの状態の数(縮退度)をあらわしている。このときの確率の規格化因子を$Z^{-1}$とおいて分配関数と名付ける。
\begin{equation}
p_i=\dfrac{\mathrm{e}^{-\beta E_i}}{Z}~,~Z=\sum_j\mathrm{e}^{-\beta E_j}
\end{equation}
統計力学ではエネルギー、スピン、磁化など、あるパラメーター$\mathcal{O}$の平均値を計算したいことがよくある。これを計算する公式は、$\langle\mathcal{O}\rangle=\sum_ip_i\mathcal{O}_i$である。例えば、内部エネルギーは以下の公式で計算できる。
\begin{equation}
\langle E\rangle=\sum_ip_iE_i=-\dfrac{\partial}{\partial\beta}Z
\end{equation}
この公式によってエネルギー平均を分配関数から直接求めることができる。特に量子力学における調和振動子を題材にした問題がよく出題される。

例題として、$1$次元の量子力学的な調和振動子の分配関数を計算しよう。これは、$E_n=(n+\frac{1}{2})\hbar\omega$なので、
\[
Z=\sum_{n=0}^\infty\exp{\left(-\dfrac{\hbar\omega(n+\frac{1}{2})}{k_B T}\right)}=\mathrm{e}^{-\frac{\hbar\omega}{2k_B T}}\sum_{n=0}^\infty\mathrm{e}^{-\frac{n\hbar\omega}{k_B T}}=\mathrm{e}^{-\frac{\hbar\omega}{2k_B T}}\times\dfrac{1}{1-\mathrm{e}^{-\frac{\hbar\omega}{k_B T}}}=\dfrac{1}{2\sinh{\left(\dfrac{\hbar\omega}{2k_B T}\right)}}
\]
と計算できる。

統計力学的なエントロピー

Boltzmann のエントロピーの公式

\begin{equation}
S=k_B\ln\Omega\label{Boltzmann}
\end{equation}
$\Omega$は系のマクロな状態に対応するミクロな状態の数。状態数が少ない場合や数えやすい場合はこの公式が有効。

分配関数からエントロピーを求める公式

\begin{equation}
S=\dfrac{\partial}{\partial T}(k_B T\ln{Z})
\end{equation}
この公式は分配関数が分かっている場合に有効。

単原子分子理想気体のエントロピー

\begin{equation}
S=Nk_B\left(\ln{\dfrac{V}{N}}+\dfrac{3}{2}\ln{T}+\dfrac{5}{2}+\dfrac{3}{2}\ln{\dfrac{2\pi mk_B}{h^2}}\right)=Nk_B\ln{\dfrac{VT^{\frac{3}{2}}}{N}}+\text{Const.}
\end{equation}

分配関数の古典極限

分配関数の古典極限の式は以下であらわされる。

\begin{equation}
Z_N=\dfrac{1}{N!h^{3N}}\int\mathrm{e}^{-\beta H(\bm{p}_1,\cdots,\bm{p}_n,\bm{x}_1,\cdots,\bm{x}_n)} \times d^3 \bm{p}_1 \cdots d^3 \bm{p}_n d^3 \bm{x}_1 \cdots d^3 \bm{x}_n
\end{equation}

但し、$N$個の同種粒子についての分配関数であるということに注意。具体的に計算するときには、$N$が十分大きい場合の近似式、Stirling の公式が有効な場合も多い。
\begin{equation}
\ln{N!}\sim N\ln N-N
\end{equation}

エネルギー等分配則と2原子分子気体の定積比熱

単原子分子気体は現実で実際に気体状態にある物質のうちごくわずかであり、多くの気体は多原子分子である。多原子分子は単原子分子のように空間を並進するだけの球とみなすことはできない。Maxwell は統計的推測により、自由度$f$の粒子の内部エネルギーは$(1/2)k_B T\times f$と考えた。単原子分子の場合は$U=(3/2)Nk_B T,~C_V=(3/2)Nk_B$、$2$原子分子の場合は$U=(5/2)Nk_B T,~C_V=(5/2)Nk_B$となる。

Maxwell の議論に依れば、$2$原子分子の定積比熱は$C_V=(5/2)Nk_B$である。しかし、温度が広範囲に変化する場合は比熱の値も変化することが実験により明らかにされている。この事実は、低温の場合と高温の場合では分子の運動の種類が違っていることを考えなければならないということを示唆している。すなわち、低温の場合は並進運動だけを行うため自由度は$3$であり$2$原子分子はあたかも単原子分子のように運動している。温度を上げると分子の中で原子の回転運動が起こり自由度が$5$になる。更に温度を上げると振動の自由度も生きてきて自由度は$7$となる。このように温度上昇に伴って回転や振動の自由度が生きてくるという事実は量子論の助けを借りなければ説明できない。

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