$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
\subsection{量子統計力学}
実在する粒子はスピン角運動量をもっている.そして,その大きさに応じて,以下の$2$種類に分類されている.
\begin{description}
\item[Fermion:]電子,陽子,中性子などの素粒子やヘリウム$3$(${}^3$He)など.スピンの大きさは半奇数.
\item[Boson:]光子やフォノンなどの素粒子やヘリウム$4$(${}^4$He)など.スピンの大きさはゼロまたは自然数.
\end{description}
\subsubsection{Fermi-Dirac 分布}
Fermion には$1$つのエネルギー準位を占有できる粒子の数は$0$か$1$に限られるという性質がある.分布関数は以下で与えられる.
\begin{equation}
F_{\text{FD}}(\epsilon_i)=\dfrac{1}{\mathrm{e}^{(\epsilon_i-\mu)/\kb T}+1}
\end{equation}
Pauli の排他律により,$F_{\text{FD}}$は$1$を超えない.$T=0$では分布関数が階段関数となる:
\begin{equation}
F_{\text{FD}}(\epsilon_i)=\left\{
\begin{array}{cl}
1&(\epsilon<\mu)\\
0&(\epsilon>\mu)
\end{array}
\right.
\end{equation}
Fermion では,$\epsilon_i<\mu$であるようなエネルギー準位を占有する平均粒子数は$T\rightarrow0$の極限で$1$に近付く.これは,$\epsilon_i<\mu$であるようなエネルギー準位が極低温で完全に占有されるということを意味している.占有される準位とされない準位の境目のエネルギー$\epsilon_{\mathrm{F}}$を\textbf{Fermi エネルギー}または\textbf{Fermi 準位}と呼ぶ.そして,このエネルギー以下の準位が全て占有されていることを\textbf{Fermi 縮退}と呼ぶ.\\
\subsubsection{Bose-Einstein 分布}
Boson の分布関数は以下で与えられる.
\begin{equation}
F_{\text{BE}}(\epsilon_i)=\dfrac{1}{\mathrm{e}^{(\epsilon_i-\mu)/\kb T}-1}
\end{equation}
理想Bose 気体では化学ポテンシャル$\mu$は$\mu<0$を満たす必要がある.$0\leq\epsilon_i,\mu>0$とすると,$\mathrm{e}^{(\epsilon_i-\mu)/\kb T}<1$となって粒子数の平均が負になるためである.\\
Fermion においてFermi 縮退が起こったのに対して,Boson では$T\rightarrow0$の極限で基底状態を占有する粒子数が発散する.この状態は\textbf{Bose-Einstein 凝縮}と呼ぶ.\\
\subsubsection{占有数の期待値}
占有数の期待値は,縮退度$g(\epsilon_i)$を用いて以下のように書ける.
\begin{equation}
\Braket{N}=\sum_ig(\epsilon_i)F(\epsilon_i)
\end{equation}
例えば,スピン$1/2$の自由Fermion はエネルギーが同じ状態が$2$つ存在するので縮退度は$2$となる.\\
エネルギーが$\epsilon$と$\epsilon+\rmd\epsilon$の間にある状態数を見積もる式は,状態密度$\rho(\epsilon)$を用いて以下のように書ける.
\begin{equation}
\Braket{N}=\int\rho(\epsilon)F(\epsilon)\rmd\epsilon
\end{equation}
GRE では積分を具体的に評価することは無いが,分布関数や状態密度の意味を問われることがあるため,概略は覚えておくと良い.