非対称排他過程の概略
非対称排他過程(Asymmetric Exclusion Process)の典型的な例として、1次元格子上に粒子がいっぱいいるとして、各粒子が確率的に移動するという問題を考える。粒子は次の2つのルールに従って移動する。
- 各粒子は各時刻で、もし右隣のサイトが空いている場合に限り、確率pで飛び移る。
- もし右隣のサイトが他の粒子に占有されていたら、飛び移ることは出来ない。
2番目のルールが排他的相互作用に対応している。下図では説明の都合上、3個の粒子を描いている。
図5 非対称排他過程の例
これは後半にやる非平衡統計力学のモデルであり、Kardar-Parisi-Zhang 普遍クラスと呼ばれる。6頂点模型は平衡統計力学のモデルだったが、実は6頂点模型はKardar-Parisi-Zhang 普遍クラスとつながりがある。
確率的6頂点模型の概略
確率的6頂点模型とは6頂点模型の一種である。まず、後の便宜のために次のような略記法を更に導入する。
図6 確率的6頂点模型の略記図
そして、0≤δ1<1、0≤δ2<1を用いて(ω1,ω2,ω3,ω4,ω5,ω6)=(1,1,δ1,δ2,1−δ1,1−δ2)とする。これが確率的6頂点模型の設定である。境界条件のあるZ2≥1上の確率6頂点模型を、簡単のためにδ1=0として考えよう。
図7 境界条件のあるZ2≥1上の確率的6頂点模型(δ1=0)
図8 図7に対応したランダムウォークの図
右側の粒子から順に粒子を粒子A、B、C と名付ける。
粒子A はtが0→1となるときにδ22(1−δ2)、1→2となるときに(1−δ2)、2→3となるときにδ2(1−δ2)という重みになる。
粒子B は0→1となるときは排他効果で1になる。tが1→2となるときに(1−δ2)、2→3となるときは排他効果で1になる。
粒子C はtが0→1となるときと1→2となるときは排他効果で1になる。2→3となるときにδ2(1−δ2)という重みになる。
確率的6頂点模型は前小節で説明したモデルと違って1マス以上飛び移ることが出来ているが、これも非対称排他過程の1種である。