Yang-Baxter 方程式2
図45 6頂点模型の略記図
Wu(i1,j1;i2,j2) | (1) | (2) | (3) | (4) |
Wu(i1,j1;i2,j2) | 1−sqgu1−su | (1−s2qg−1)u1−su | u−sqg1−su | 1−qg+11−su |
Wcu(i1,j1;i2,j2) | 1−sqgu1−su | (1−qg)u1−su | u−sqg1−su | 1−s2qg1−su |
Lu(i1,j1;i2,j2) | 1−sqgu1−su | −su(1−qg)1−su | −s(u−sqg)1−su | 1−s2qg1−su |
図10を再掲すると、以下のようになっている。
図10 6頂点模型の略記図
故に、点線を1、実線を2とすると、
R=(rαβ,jkij)=(a0000bc00cb0000a)
であったから、例えばr11,22=bなどとなる。さて、図を考えてみると以下のようになる。但し、黒丸がX、矢印がWに対応している。
図46 6頂点模型の略記図
図47 6頂点模型の略記図
X(a2,a1;c2,c1)Wu1(m,c1;k,b1)Wu2(k,c2;n,b2)=Wu2(m,a2;k,c2)Wu1(k,a1;n,c1)X(c2,c1;b2,b1)
但し、ai,bi∈(0,1)、m,n,k∈{0,1,2,⋯}であり、c1,c2,kについては和を取るものとする。また、Wu(m,a;n,b)は図48左図のような状況をあらわしている。太い縦矢印の部分は複数本の矢印が存在することを示している。これが特に1本であるならYang-Baxter 方程式に他ならないので、hsvm の式はYang-Baxter 方程式の拡張とみなすことが出来るであろう。
次にオペレーター表示について説明する。これは図48右図のような状況をあらわしたものであり、モノドロミー行列T(u)∈End(W⊗V0)を用いた表示法である。但し、Wは2次のベクトル空間C⋯⊕C−であり、V0はC⋮⏟0本C↑⏟1本⊕⋯⊕C↑である。
図48 6頂点模型の略記図
このとき、オペレーター表示では、
T(u)=(A1(u)C1(u)B1(u)D1(u))
とする。但し、A1(u)∼D1(u)∈End(V0)である。
さて、V0の↑↑⋯↑⏟g本に対応する基底をegと書くことにすると、
{A1(u):A1(u)eg=Wu(g,0:g,0)egB1(u):B1(u)eg=Wu(g,1:g+1,0)egC1(u):C1(u)eg=Wu(g,0:g−1,1)egD1(u):D1(u)eg=Wu(g,1:g,1)eg
と書くことが出来る。これは図49の絵を基にしている。
図49 6頂点模型の略記図
これは先の6頂点模型のA(u)からD(u)の定義とB(u)とC(u)の位置が逆になっていることに注意しなければならない。これはどちらに(1,0)Tと(0,1)Tを割り当てるかという違いでしかないので、本質的なものではない。以下、この定義に従って議論する。6頂点模型のときの(8)、(9)と同様に、高次元スピン頂点模型について以下が成立することが分かる。
ˇX(T(u1)⊗T(u2))=(T(u2)⊗T(u1))ˇX
但し、ˇX=PXである。また、T(u1)⊗T(u2)は以下のようになっている。
T(u1)⊗T(u2)=(A1(u1)A1(u2)A1(u1)C1(u2)C1(u1)A1(u2)C1(u1)C1(u2)A1(u1)B1(u2)A1(u1)D1(u2)C1(u1)B1(u2)C1(u1)D1(u2)B1(u1)A1(u2)B1(u1)C1(u2)D1(u1)A1(u2)D1(u1)C1(u2)B1(u1)B1(u2)B1(u1)D1(u2)D1(u1)B1(u2)D1(u1)D1(u2))
これも前述の通り、6頂点模型のA(u)からD(u)の定義とB(u)とC(u)の位置が逆になっていることに注意しなければならない。また、AB≠BAなどにも注意を要する。
T(u)の一般化として、1×L+1高次元スピン頂点模型に対応するモノドロミー行列をTL(u)とする。すなわち、
TL(u)=(AL(u)CL(u)BL(u)DL(u))∈End(W⊗V0⊗⋯⊗VL)
である。これは下図のように図示できる。
図50 1×L+1高次元スピン頂点模型の略記図
このTL(u)についても(12)と同じ式が成立して、
ˇX(TL(u1)⊗TL(u2))=(TL(u2)⊗TL(u1))ˇX
である。
問題20
6頂点模型の(8)、(9)の導出を復習して、(13)が成立することを確かめよ。
解答20
一般化されたYang-Baxter 方程式より、今、
X12TL13(u1)TL23(u2)=TL23(u2)TL13(u1)X12
が成り立っている。これに左からP12を掛けると、
P12X12TL13(u1)TL23(u2)=P12TL23(u2)TL13(u1)X12=P12TL23(u2)P12P12TL13(u1)P12P12X12=TL13(u1)TL23(u2)P12X12⟺ˇX12TL13(u1)TL23(u2)=TL13(u1)TL23(u2)ˇX12
となる。これにより、
ˇX(TL(u1)⊗TL(u2))=(TL(u2)⊗TL(u1))ˇX
と書くことが出来る。よって題意は示された。
図51 6頂点模型の略記図
=
図52 6頂点模型の略記図
6頂点模型の(9)と同様、(13)からAL(u)からDL(u)についての関係式が以下のように得られる。
{AL(u1)AL(u2)=AL(u2)AL(u1)BL(u1)BL(u2)=BL(u2)BL(u1)DL(u1)DL(u2)=DL(u2)DL(u1)BL(u1)DL(u2)=u1−u2qu1−u2DL(u2)BL(u1)+(1−q)u2u2−qu1BL(u2)DL(u1)
以上が高次元スピン頂点模型における可積分性からの帰結である。
問題21
(4)を確かめよ。
解答21
ˇX=(u1−qu20000(1−q)u2u1−u200q(u1−u2)(1−q)u10000u1−qu2)
であるから、与式に代入して両辺の各成分をあらわに書くと、
ˇX(TL(u1)⊗TL(u2))=(u1−qu20000(1−q)u2u1−u200q(u1−u2)(1−q)u10000u1−qu2) (AL(u1)AL(u2)AL(u1)CL(u2)CL(u1)AL(u2)CL(u1)CL(u2)AL(u1)BL(u2)AL(u1)DL(u2)CL(u1)BL(u2)CL(u1)DL(u2)BL(u1)AL(u2)BL(u1)CL(u2)DL(u1)AL(u2)DL(u1)CL(u2)BL(u1)BL(u2)BL(u1)DL(u2)DL(u1)BL(u2)DL(u1)DL(u2))=(AL(u1)AL(u2)(u1−qu2)AL(u1)CL(u2)(u1−qu2)BL(u1)AL(u2)(u1−u2)+AL(u1)BL(u2)(1−q)u2BL(u1)CL(u2)(u1−u2)+AL(u1)DL(u2)(1−q)u2BL(u1)AL(u2)(1−q)u1+AL(u1)BL(u2)q(u1−u2)BL(u1)CL(u2)(1−q)u1+AL(u1)DL(u2)q(u1−u2)BL(u1)BL(u2)(u1−qu2)BL(u1)DL(u2)(u1−qu2)CL(u1)AL(u2)(u1−qu2)CL(u1)CL(u2)(u1−qu2)DL(u1)AL(u2)(u1−u2)+CL(u1)BL(u2)(1−q)u2DL(u1)CL(u2)(u1−u2)+CL(u1)DL(u2)(1−q)u2DL(u1)AL(u2)(1−q)u1+CL(u1)BL(u2)q(u1−u2)DL(u1)CL(u2)(1−q)u1+CL(u1)DL(u2)q(u1−u2)DL(u1)BL(u2)(u1−qu2)DL(u1)DL(u2)(u1−qu2))
(TL(u2)⊗TL(u1))ˇX=(AL(u2)AL(u1)AL(u2)CL(u1)CL(u2)AL(u1)CL(u2)CL(u1)AL(u2)BL(u1)AL(u2)DL(u1)CL(u2)BL(u1)CL(u2)DL(u1)BL(u2)AL(u1)BL(u2)CL(u1)DL(u2)AL(u1)DL(u2)CL(u1)BL(u2)BL(u1)BL(u2)DL(u1)DL(u2)BL(u1)DL(u2)DL(u1)) (u1−qu20000(1−q)u2u1−u200q(u1−u2)(1−q)u10000u1−qu2)=(AL(u2)AL(u1)(u1−qu2)CL(u2)AL(u1)q(u1−u2)+AL(u2)CL(u1)(1−q)u2AL(u2)BL(u1)(u1−qu2)CL(u2)BL(u1)q(u1−u2)+AL(u2)DL(u1)(1−q)u2BL(u2)AL(u1)(u1−qu2)DL(u2)AL(u1)q(u1−u2)+BL(u2)CL(u1)(1−q)u2BL(u2)BL(u1)(u1−qu2)DL(u2)BL(u1)q(u1−u2)+BL(u2)DL(u1)(1−q)u2 CL(u2)AL(u1)(1−q)u1+AL(u2)CL(u1)(u1−u2)CL(u2)CL(u1)(u1−qu2)CL(u2)BL(u1)(1−q)u1+AL(u2)DL(u1)(u1−u2)CL(u2)DL(u1)(u1−qu2)DL(u2)AL(u1)(1−q)u1+BL(u2)CL(u1)(u1−u2)DL(u2)CL(u1)(u1−qu2)DL(u2)BL(u1)(1−q)u1+BL(u2)DL(u1)(u1−u2)DL(u2)DL(u1)(u1−qu2))
となる。(1,1)成分、(1,4)成分、(4,4)成分、(2,4)成分などを比較することで所望の式を得ることが出来る。よって題意は示された。