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【統計物理学】第13講 Yang-Baxter 方程式2

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Yang-Baxter 方程式2

 

 


図45 6頂点模型の略記図

 

 

Wu(i1,j1;i2,j2) (1) (2) (3) (4)
Wu(i1,j1;i2,j2) 1sqgu1su (1s2qg1)u1su usqg1su 1qg+11su
Wcu(i1,j1;i2,j2) 1sqgu1su (1qg)u1su usqg1su 1s2qg1su
Lu(i1,j1;i2,j2) 1sqgu1su su(1qg)1su s(usqg)1su 1s2qg1su

図10を再掲すると、以下のようになっている。

 

図10 6頂点模型の略記図

 

故に、点線を1、実線を2とすると、

R=(rαβ,jkij)=(a0000bc00cb0000a)

であったから、例えばr11,22=bなどとなる。さて、図を考えてみると以下のようになる。但し、黒丸がX、矢印がWに対応している。

 

図46 6頂点模型の略記図

 

図47 6頂点模型の略記図

 

X(a2,a1;c2,c1)Wu1(m,c1;k,b1)Wu2(k,c2;n,b2)=Wu2(m,a2;k,c2)Wu1(k,a1;n,c1)X(c2,c1;b2,b1)

但し、ai,bi(0,1)m,n,k{0,1,2,}であり、c1,c2,kについては和を取るものとする。また、Wu(m,a;n,b)は図48左図のような状況をあらわしている。太い縦矢印の部分は複数本の矢印が存在することを示している。これが特に1本であるならYang-Baxter 方程式に他ならないので、hsvm の式はYang-Baxter 方程式の拡張とみなすことが出来るであろう。

次にオペレーター表示について説明する。これは図48右図のような状況をあらわしたものであり、モノドロミー行列T(u)End(WV0)を用いた表示法である。但し、W2次のベクトル空間CCであり、V0C0C1Cである。

 

図48 6頂点模型の略記図

 

このとき、オペレーター表示では、

T(u)=(A1(u)C1(u)B1(u)D1(u))

とする。但し、A1(u)D1(u)End(V0)である。

さて、V0↑↑gに対応する基底をegと書くことにすると、

{A1(u):A1(u)eg=Wu(g,0:g,0)egB1(u):B1(u)eg=Wu(g,1:g+1,0)egC1(u):C1(u)eg=Wu(g,0:g1,1)egD1(u):D1(u)eg=Wu(g,1:g,1)eg

と書くことが出来る。これは図49の絵を基にしている。

 

 


図49 6頂点模型の略記図

 

これは先の6頂点模型のA(u)からD(u)の定義とB(u)C(u)の位置が逆になっていることに注意しなければならない。これはどちらに(1,0)T(0,1)Tを割り当てるかという違いでしかないので、本質的なものではない。以下、この定義に従って議論する。6頂点模型のときの(8)、(9)と同様に、高次元スピン頂点模型について以下が成立することが分かる。

ˇX(T(u1)T(u2))=(T(u2)T(u1))ˇX

但し、ˇX=PXである。また、T(u1)T(u2)は以下のようになっている。

T(u1)T(u2)=(A1(u1)A1(u2)A1(u1)C1(u2)C1(u1)A1(u2)C1(u1)C1(u2)A1(u1)B1(u2)A1(u1)D1(u2)C1(u1)B1(u2)C1(u1)D1(u2)B1(u1)A1(u2)B1(u1)C1(u2)D1(u1)A1(u2)D1(u1)C1(u2)B1(u1)B1(u2)B1(u1)D1(u2)D1(u1)B1(u2)D1(u1)D1(u2))

これも前述の通り、6頂点模型のA(u)からD(u)の定義とB(u)C(u)の位置が逆になっていることに注意しなければならない。また、ABBAなどにも注意を要する。

T(u)の一般化として、1×L+1高次元スピン頂点模型に対応するモノドロミー行列をTL(u)とする。すなわち、

TL(u)=(AL(u)CL(u)BL(u)DL(u))End(WV0VL)

である。これは下図のように図示できる。

 

図50 1×L+1高次元スピン頂点模型の略記図

 

このTL(u)についても(12)と同じ式が成立して、

ˇX(TL(u1)TL(u2))=(TL(u2)TL(u1))ˇX

である。

問題20

6頂点模型の(8)、(9)の導出を復習して、(13)が成立することを確かめよ。

解答20

一般化されたYang-Baxter 方程式より、今、

X12TL13(u1)TL23(u2)=TL23(u2)TL13(u1)X12

が成り立っている。これに左からP12を掛けると、

P12X12TL13(u1)TL23(u2)=P12TL23(u2)TL13(u1)X12=P12TL23(u2)P12P12TL13(u1)P12P12X12=TL13(u1)TL23(u2)P12X12ˇX12TL13(u1)TL23(u2)=TL13(u1)TL23(u2)ˇX12

となる。これにより、

ˇX(TL(u1)TL(u2))=(TL(u2)TL(u1))ˇX

と書くことが出来る。よって題意は示された。

 

図51 6頂点模型の略記図

=

図52 6頂点模型の略記図

 

6頂点模型の(9)と同様、(13)からAL(u)からDL(u)についての関係式が以下のように得られる。

{AL(u1)AL(u2)=AL(u2)AL(u1)BL(u1)BL(u2)=BL(u2)BL(u1)DL(u1)DL(u2)=DL(u2)DL(u1)BL(u1)DL(u2)=u1u2qu1u2DL(u2)BL(u1)+(1q)u2u2qu1BL(u2)DL(u1)

以上が高次元スピン頂点模型における可積分性からの帰結である。

問題21

(4)を確かめよ。

解答21

ˇX=(u1qu20000(1q)u2u1u200q(u1u2)(1q)u10000u1qu2)

であるから、与式に代入して両辺の各成分をあらわに書くと、

ˇX(TL(u1)TL(u2))=(u1qu20000(1q)u2u1u200q(u1u2)(1q)u10000u1qu2)          (AL(u1)AL(u2)AL(u1)CL(u2)CL(u1)AL(u2)CL(u1)CL(u2)AL(u1)BL(u2)AL(u1)DL(u2)CL(u1)BL(u2)CL(u1)DL(u2)BL(u1)AL(u2)BL(u1)CL(u2)DL(u1)AL(u2)DL(u1)CL(u2)BL(u1)BL(u2)BL(u1)DL(u2)DL(u1)BL(u2)DL(u1)DL(u2))=(AL(u1)AL(u2)(u1qu2)AL(u1)CL(u2)(u1qu2)BL(u1)AL(u2)(u1u2)+AL(u1)BL(u2)(1q)u2BL(u1)CL(u2)(u1u2)+AL(u1)DL(u2)(1q)u2BL(u1)AL(u2)(1q)u1+AL(u1)BL(u2)q(u1u2)BL(u1)CL(u2)(1q)u1+AL(u1)DL(u2)q(u1u2)BL(u1)BL(u2)(u1qu2)BL(u1)DL(u2)(u1qu2)CL(u1)AL(u2)(u1qu2)CL(u1)CL(u2)(u1qu2)DL(u1)AL(u2)(u1u2)+CL(u1)BL(u2)(1q)u2DL(u1)CL(u2)(u1u2)+CL(u1)DL(u2)(1q)u2DL(u1)AL(u2)(1q)u1+CL(u1)BL(u2)q(u1u2)DL(u1)CL(u2)(1q)u1+CL(u1)DL(u2)q(u1u2)DL(u1)BL(u2)(u1qu2)DL(u1)DL(u2)(u1qu2))

(TL(u2)TL(u1))ˇX=(AL(u2)AL(u1)AL(u2)CL(u1)CL(u2)AL(u1)CL(u2)CL(u1)AL(u2)BL(u1)AL(u2)DL(u1)CL(u2)BL(u1)CL(u2)DL(u1)BL(u2)AL(u1)BL(u2)CL(u1)DL(u2)AL(u1)DL(u2)CL(u1)BL(u2)BL(u1)BL(u2)DL(u1)DL(u2)BL(u1)DL(u2)DL(u1))                    (u1qu20000(1q)u2u1u200q(u1u2)(1q)u10000u1qu2)=(AL(u2)AL(u1)(u1qu2)CL(u2)AL(u1)q(u1u2)+AL(u2)CL(u1)(1q)u2AL(u2)BL(u1)(u1qu2)CL(u2)BL(u1)q(u1u2)+AL(u2)DL(u1)(1q)u2BL(u2)AL(u1)(u1qu2)DL(u2)AL(u1)q(u1u2)+BL(u2)CL(u1)(1q)u2BL(u2)BL(u1)(u1qu2)DL(u2)BL(u1)q(u1u2)+BL(u2)DL(u1)(1q)u2    CL(u2)AL(u1)(1q)u1+AL(u2)CL(u1)(u1u2)CL(u2)CL(u1)(u1qu2)CL(u2)BL(u1)(1q)u1+AL(u2)DL(u1)(u1u2)CL(u2)DL(u1)(u1qu2)DL(u2)AL(u1)(1q)u1+BL(u2)CL(u1)(u1u2)DL(u2)CL(u1)(u1qu2)DL(u2)BL(u1)(1q)u1+BL(u2)DL(u1)(u1u2)DL(u2)DL(u1)(u1qu2))

となる。(1,1)成分、(1,4)成分、(4,4)成分、(2,4)成分などを比較することで所望の式を得ることが出来る。よって題意は示された。

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