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【超対称性理論】第28講 カイラル超場

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カイラル超場

$\Phi(x,\theta,\bar{\theta})$で書かれるカイラル超場は以下の拘束条件によって決定される。

\begin{equation}
\bar{\mathcal{D}}_{\dot{\alpha}}\Phi(x,\theta,\bar{\theta})=0\tag{185}
\end{equation}

成分場を見出すためには、以下の式のような、$x^\mu$と関連付けられた新しい超空間の座標$y_-^\mu$と$y_+^\mu$を導入するのが便利である。

\begin{equation}
y^\mu_{\pm}=x^\mu\pm i\theta\sigma^\mu\bar{\theta}\tag{186}
\end{equation}

座標$y_+^\mu$は以下の式を満たす。

\begin{equation}
\bar{\mathcal{D}}_{\dot{\alpha}}y^\mu_\pm=0\tag{187}
\end{equation}

更に、$\bar{\mathcal{D}}_{\dot{\alpha}}\theta=0$が成り立つので、(185)を満たす超場$\Phi(x,\theta,\bar{\theta})$は、$y_+$と$\theta$の任意の関数として次のように書ける。

\begin{align}
\Phi(x,\theta,\bar{\theta})=&\phi(y_+)+\sqrt{2}\theta\psi(y_+)+\theta^2F(y_+)\nonumber\\
=&\phi(x)+i\theta\sigma^\mu\bar{\theta}\partial_\mu\phi(x)+\dfrac{1}{4}\theta^2\bar{\theta}^2\partial_\rho\partial^\rho\phi(x)+\sqrt{2}\theta\psi(x)\nonumber\\
&-\dfrac{i}{\sqrt{2}}\theta^2\partial_\mu\psi(x)\sigma^\mu\bar{\theta}+\theta^2F(x)\tag{188}
\end{align}

但し、$\phi(x)$は複素スカラー場で、$\psi$は左巻きWeyl スピノール場である。更に、$F$は複素スカラー補助場である。最後の行の式は$\phi$、$\psi$、$F$の場を$x$座標系でTaylor 展開したものである。座標$y_-$を使うことは、以下のようなカイラル表現に対応している。これは超対称微分が反対称表現を取っている。

\begin{equation}
\mathcal{D}_\alpha=\dfrac{\partial}{\partial\theta^\alpha}+2i\sigma^\mu_{\alpha\dot{\alpha}}\bar{\theta}^{\dot{\alpha}}\dfrac{\partial}{\partial y^\mu_+} 、 \bar{\mathcal{D}}_{\dot{\alpha}}=-\dfrac{\partial}{\partial\bar{\theta}^{\dot{\alpha}}}\tag{189}
\end{equation}

問題

$\Phi_1$と$\Phi_2$がカイラル超場であるとき、$\Phi_1+\Phi_2$と$\Phi_1\Phi_2$もカイラル超場であるということを示せ。

問題

超場の超対称性変換(184)を用いて、成分場の超対称性変換を

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{l}
\delta_\epsilon\phi(x)=\sqrt{2}\epsilon\psi(x)\\
\\
\delta_\epsilon\psi(x)=\sqrt{2}i(\sigma^\mu\bar{\epsilon})\partial_\mu\phi(x)+\sqrt{2}\epsilon_\alpha F(x)\\
\\
\delta_\epsilon F(x)=\sqrt{2}i\bar{\epsilon}\bar{\sigma}^\mu\partial_\mu\psi(x)
\end{array}
\right.\tag{190}
\end{equation}

と決定せよ。これは(169)と一致するだろうか。

更に、次の式を満たすような反カイラル多重項$\Phi^\dagger$を導入することが出来る。

\begin{equation}
\mathcal{D}_\alpha\Phi^\dagger=0\tag{191}
\end{equation}

$\Phi^\dagger$は$y_+$と$\bar{\theta}$について、(188)で与えたカイラルな場合の展開と類似の式となる。この展開が上で用いたカイラル表現を有していたのに対して、$\Phi^\dagger$の展開は共役を取ることで得られるような反カイラル表現を用いることで簡潔な形となる。

問題

$\mathcal{D}$の複素共役が$\bar{\mathcal{D}}$であることを示せ。更に、もし$\Phi$がカイラル超場であるなら、その複素共役$\Phi^\dagger$が反カイラル超場であることについて述べ、$\Phi^\dagger$の展開式を与えよ。

問題

超場の積$\Phi^\dagger\Phi$の$\theta^2\bar{\theta}^2$の成分が以下の式で与えられることを示せ。

\begin{equation}
(\Phi^\dagger\Phi)_{\theta^2\bar{\theta}^2}=\dfrac{1}{4}\left(-2\partial_\mu\phi^*\partial^\mu\phi+\phi^*\partial_\rho\partial^\rho\phi+\phi\partial_\rho\partial^\rho\phi^*-2i\bar{\psi}\sigma^\mu\overleftrightarrow{\partial}_\mu\psi+4F^*F\right)\tag{192}
\end{equation}

ここで、$\Phi^\dagger\Phi$が実超場になることに注意せよ。

以上の演習問題はどれも基本的な計算なので、超場の計算に慣れるためにもぜひ演習してもらいたい。次回以降はベクトル超場の解説を2回に分けて行う。

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