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【量子力学】量子力学1-量子力学の定式化1

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$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$

量子力学01

今回からは量子力学のお話しをしていきます。

1粒子系だろうが多粒子系だろうが、量子力学では波動関数と呼ばれるひとつの複素関数$\Psi$によって状態があらわされるものと考えます。1粒子系の場合は$\Psi(x,t)$と書き、$n$粒子系の場合は$\Psi(x_1,\cdots,x_n,t)$と書きます。多粒子系について考える必要があるのはボース統計とフェルミ統計に関する問題が出たときくらいなので、以下では1粒子の場合に限定して話を進めて行きます。

波動関数と演算子

波動関数$\Psi(x,t)$の粒子が$x$と$x+\rmd x$の間に存在している確率は$|\Psi(x,t)|^2\rmd x$である。ここで、$|\Psi(x,t)|^2=\Psi^*(x,t)\Psi(x,t)$であり、一般に$\Psi(x,t)^2$ではないことに注意しよう。粒子が「どこかで」見つかる確率は$1$に規格化しておく必要がある:

\begin{equation}
\int_{-\infty}^\infty|\Psi(x,t)|^2\rmd x=1
\end{equation}

もし$3$次元であれば、これは$|\Psi(x,y,z)|^2\rmd x\rmd y\rmd z$、$|\Psi(r,\theta,\phi)|^2r^2\sin{\theta}\rmd r\rmd\theta\rmd\phi$などと書くことに注意しよう。また、波動関数が次元解析できることも覚えておくと良い。$d$次元空間における波動関数の次元は$-\frac{d}{2}$である。確率の流れ密度$\bm{S}(\bm{x},t)$は

\begin{equation}
\bm{S}(\bm{x},t)=-\dfrac{i\hbar}{2m}\{\Psi^*(\nabla\Psi)-\Psi(\nabla\Psi^*)\}
\end{equation}

$P(\bm{x},t) = |\Psi(x,t)|^2$とすると、確率保存則が成り立つ。

\begin{equation}
\dfrac{\partial P(\bm{x},t)}{\partial t}+\nabla\cdot\bm{S}(\bm{x},t)=0
\end{equation}

オブザーバブル$A$はエルミート演算子$\hat{A}$であらわされ、この形で$\Psi$に作用する(オブザーバブルは必ずエルミートでなければならない。運動量演算子$-i\hbar\nabla$に$i$がついているのは演算子がエルミートであることを保証するためである。同様の理由から、微分を$1$つしか含まない演算子には必ず$i$が付かなければエルミートにはならない。)。ここで、エルミート演算子とは、任意の関数$f(x)、g(x)$に対して以下の関係が成り立つような演算子$\hat{A}$のことである。

\begin{equation}
\int_{-\infty}^\infty f(x)^*\left(\hat{A}g(x)\right)\rmd x=\int_{-\infty}^\infty\left(\hat{A}f(x)\right)^*g(x)\rmd x
\end{equation}

状態$\Psi$におけるオブザーバブル$A$の期待値は以下で計算できる。

\begin{equation}
\Braket{A}=\int_{-\infty}^\infty\Psi^*\hat{A}\Psi\rmd x
\end{equation}

エルミート演算子の重要な性質は、固有値が全て実数であるということ、及び、異なる固有値に対応する固有関数は直交するということの$2$点である。古典力学では全てのオブザーバブルは位置$x$と運動量$p$であらわすことができた。量子力学では演算子$\hat{x}=x、\hat{p}=-i\hbar\partial_x$はエルミート演算子であり、殆どのオブザーバブルがこれらのみをもちいてあらわせる。学部レベルでの代表的な例外はスピン演算子である。以下ではオブザーバブルと演算子という言い方をしばしば併用したり、ハット記号を省略したりすることがあるが、オブザーバブルは測定可能な物理量のことで、演算子はその数学的な表式を示すということを心に留めておこう。

状態$\Psi$の時刻$t_0$におけるオブザーバブル$A$の測定は、エルミート演算子$\hat{A}$の固有値を返す。ある特定の固有値$\lambda_n$を見出す確率を求めたい場合は、まず、$\hat{A}$の各固有値$\lambda_k$に対応した規格直交関数系$f_k(x)$を用いて$\Psi(x,t_0)=\sum_kc_kf_k(x)$と展開する。この展開係数のうち、$|c_n|^2$が$\lambda_n$を見出す確率となる。一般に、展開係数は次のように計算できる。

\begin{equation}
c_n=\int_{-\infty}^\infty f_n(x)^*\Psi(x,t)\rmd x
\end{equation}

また、測定$A$の期待値は$\Braket{A}=\sum_k\lambda_k|c_k|^2$となる。

ディラックの記法

ここではディラックのブラケット記法を導入する。ディラックの記法では、ケットと呼ばれるベクトル$\Ket{a}$とそれにくっつくブラと呼ばれるベクトル$\Bra{b}$を用いる。これらの内積を$\Braket{b|a}$と書くことにする。また、複素共役を取ると$\Braket{a|b} = \Braket{b|a}^*$という関係が成り立つと決めておく。これにより、$\Braket{a|a}=\Braket{a|a}^*$となるから、ベクトルのノルムを常に実数にすることができる。

また、$\hat{A}\Ket{b} = \Ket{\hat{A}b}$と定義することで、$\Braket{a|\hat{A}b} = \Braket{\hat{A}^{\dagger} a|b}$と定義することができる。ここで、$\hat{A}^{\dagger}$は$\hat{A}$のエルミート共役である。$\hat{A}$がエルミート演算子であれば、$\hat{A}=\hat{A}^{\dagger}$が成り立つので、$\Braket{a|\hat{A}b}=\Braket{\hat{A}a|b} = \Braket{a|\hat{A}|b}$が成り立つ。

更に、次のような表記も定義する。

\begin{equation}
\Braket{x|f} = f(x)~,~\Braket{f|g} = \int_{-\infty}^\infty f(x)^*g(x)\rmd x
\end{equation}

ディラックのブラケット記法は、その数学的な定義が聞かれることはあまりなく、この記法を用いて固有関数の係数や測定の期待値を計算させる問題が大部分を占める。

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