$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
量子力学02
これまでの議論では、波動関数が与えられた後の話をしていました。
今回は波動関数をどう得るかという話をしていきましょう。
シュレーディンガー方程式
量子力学では、波動関数はシュレーディンガー方程式に従う。
\begin{equation}
i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t}\Psi(x,t)=\hat{H}\Psi(x,t)
\end{equation}
ここで、$\hat{H}$はハミルトニアンで、多くの場合は以下であらわせる。
\begin{equation}
\hat{H}=\dfrac{\hat{p}^2}{2m}+\hat{V}(x)=-\dfrac{\hbar^2}{2m}\dfrac{\partial^2}{\partial x^2}+\hat{V}(x)
\end{equation}
系のエネルギーを得るためには、ハミルトニアン$\hat{H}$の固有値を全て見つければ良い。このとき、シュレーディンガー方程式は、
\begin{equation}
i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t}\Psi(x,t)=E_n\Psi(x,t)
\end{equation}
とあらわせ、エネルギー固有値$E_n$に対応する固有関数$\psi_n$は$\Psi(x,t)=\mathrm{e}^{-iE_nt/\hbar}\psi_n(x)$を解くことであらわせる。ここで、$\psi_n(x)$は$t=0$のときの波動関数である。
一般の波動関数$\Psi(x,t)$のほとんどはハミルトニアン$\hat{H}$の量子力学的な系の時間発展を追う必要がある。以下にその手順を示す。
- 時間に依存しないシュレーディンガー方程式、$\hat{H}\psi=E\psi$を解いて、エネルギー固有値$E_n$に対応する固有関数$\psi_n(x)$を見つける。
- 見つけた固有関数$\psi_n(x)$の重ね合わせを$\Psi(x,0)$とみなして、線型結合$\Psi(x,0)=\sum_nc_n\psi_n(x)$を作る。
- $\mathrm{e}^{-iE_nt/\hbar}$の因子を先の$\Psi(x,0)$につけて、$\Psi(x,t)=\sum_nc_n\mathrm{e}^{-iE_nt/\hbar}\psi_n(x)$を作る。
多くの問題はよく知っている問題設定のハミルトニアンや固有関数$\psi_n(x)$が与えられて、時間依存性が聞かれるか、これらの状態のオブザーバブルの期待値を計算させられるか、あるいは$\Psi(x,t)$を求める手順を概念的に問われるかに限られる。量子力学でもエネルギー保存則は常に意識すべきである。
ここで、波動関数に関する重要な性質をまとめておこう。
- 異なる$n$に対応する固有関数は直交する。これは、これらの固有関数が異なるエネルギー固有状態に対応しているためである。
- $\psi$は常に連続である。$\psi’x$はポテンシャル$V(x)$が無限大に移り変わる点以外は常に連続である。
- $\psi$は時間依存性を考えない限り、実関数にとっても一般性を失わない。
- 最低エネルギー$E_0$に対応する基底状態に関する波動関数は節の数がゼロである(ここでいう節とは、波動関数が$x\rightarrow\pm\infty$以外で$x$軸と交わる点の数。)。励起状態はその状態の高さと同じ数だけの節をもつ。
- ポテンシャル$V(x)$が偶関数であれば、波動関数もパリティを有する。すなわち、波動関数は偶関数と奇関数のみに限られる。
交換子と不確定性関係
演算子は一般に非可換である。量子力学では交換子$[A,B] = AB-BA$を計算させられることが多い。一番代表的な例は、$[\hat{x},\hat{p}]=i\hbar$であろう。交換関係を計算するときには、攻撃される関数$f(x)$を$[A,B]f(x)$と付けて計算を行うとミスが少ない。交換関係の計算には以下の公式も便利である。
\begin{equation}
[AB,C]=A[B,C]+[A,C]B~,~[A,BC]=B[A,C]+[A,B]C
\end{equation}
量子力学では、測定$A$と測定$B$に関する基本的な不確定性を考えなければならない。ハイゼンベルグの不確定性原理は以下の通り。
\begin{equation}
\sigma_A^2\sigma_B^2\geq\left(\dfrac{1}{2i}\Braket{[\hat{A},\hat{B}]}\right)^2
\end{equation}
ここで、$\sigma_A^2$は統計学的な分散で、$\sigma_A^2 = \Braket{A^2}-\Braket{A}^2$と定義される。さて、ハイゼンベルグの不確定性原理に$A=x$、$B=p$を代入すると、ミクロな粒子の座標と運動量は同時に測定できない、という量子力学の基本的な主張が導ける。
\begin{equation}
\sigma_x\sigma_p\geq\dfrac{\hbar}{2}
\end{equation}
これを不確定性関係という。これは最小不確定性であり、これを満たす座標空間の波動関数はガウス関数である。他の関数に関する大雑把な評価としては、以下が用いられる。
\begin{equation}
\Delta x\Delta p\sim\hbar,~~~\Delta E\Delta t\sim\hbar
\end{equation}
学部の量子力学1ではこれらの不確定性関係を用いて何かの量の不確定性を計算するというのがメインテーマである。
例えば、自由粒子の波動関数は$\psi(x,t)=\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{e}^{i(kx-\omega t)}f(k)\rmd k$という波束によってあらわされる。これは位置$x$と運動量$k$がフーリエ変換の関係にあることを示しているから、$k$のピークは$\Delta k=1/\Delta x$の幅にある。