MENU

【量子力学入門05】ハミルトン・ヤコビの理論

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ハミルトン・ヤコビの理論

ハミルトン・ヤコビ理論は解析力学における重要な理論であり、力学系の挙動を解析する上で非常に強力なツールです。特に、この理論は量子力学と深い関連を持ち、シュレディンガー方程式の導出や古典と量子の橋渡しとして重要な役割を果たします。今回は、ハミルトン・ヤコビ理論の基礎から始め、量子力学とのつながりを数式を通じて明らかにします。

ハミルトン力学の復習

ハミルトニアンと正準方程式

ハミルトン力学は以下のハミルトニアン H(qi,pi,t) を基礎とします。ここで、qi は一般化座標、pi は一般化運動量を表します。正準方程式は次の形で記述されます。
˙qi=Hpi,   ˙pi=Hqi


これにより、力学系の時間発展が記述されます。

ハミルトン・ヤコビ方程式 (HJE)

ハミルトン・ヤコビ理論の導入

ハミルトン・ヤコビ理論では、運動方程式をスカラー関数 S(qi,t) を用いて記述します。この S は作用関数(action function) と呼ばれ、次の関係を満たします。
S=L(qi,˙qi,t),dt,


ここで L はラグランジアンです。

作用関数 S を用いると、ハミルトニアン H に対して次の\textbf{ハミルトン・ヤコビ方程式 (HJE)} が得られます。
H(qi,Sqi,t)+St=0.

HJEの特徴

この偏微分方程式は、S が求められれば力学系の運動を完全に記述できるという点で特徴的です。具体的には、
pi=Sqi

の関係を用いて、運動量や座標の時間発展を計算できます。

古典から量子へ:波動関数と作用関数

波動的記述の萌芽

ハミルトン・ヤコビ方程式は、波動力学の枠組みへの自然な接続を提供します。作用関数 S を用いた位相の記述は、量子力学での波動関数の位相に対応します。

シュレディンガー方程式との関係

量子力学では、波動関数 ψ(q,t) が次のシュレディンガー方程式を満たします。
iψt=ˆHψ.

ここで、ˆH はハミルトニアン演算子です。波動関数を次の形で仮定します。
ψ(q,t)=A(q,t)eiS(q,t),

ここで A(q,t) は振幅、S(q,t) は作用関数です。この形式をシュレディンガー方程式に代入すると、S に対する古典的なハミルトン・ヤコビ方程式と、A に対する振幅の補正項が現れます。

ハミルトン・ヤコビ理論の応用

ここではハミルトン・ヤコビ理論の応用についてごく簡単に紹介しておきます。

完全積分可能な系

ハミルトン・ヤコビ方程式は完全積分可能な系において特に有効です。S を分離可能な形で表現できる場合、系の解析が大幅に簡略化されます。
S(qi,t)=W(qi)Et,


ここで W(qi) は空間的な部分、E はエネルギーを表します。この分離形を用いると、運動の解析が直感的に行えます。

光学系への応用

ハミルトン・ヤコビ理論は幾何光学にも応用されます。光の経路を古典的な力学系の粒子運動として記述することで、光学的問題を解くことが可能です。

今回のまとめ

ハミルトン・ヤコビ理論は、古典力学を解析するための強力な手法であり、量子力学の波動的記述への重要な関係になります。作用関数 S の導入により、古典系の完全な解析が可能となり、その枠組みは量子力学のシュレディンガー方程式にも引き継がれています。本理論の深い理解は、物理学のさまざまな分野での応用に寄与します。

特に、量子力学のシュレーディンガー方程式と重要な関係があります。この点について、次回以降詳しく説明していくことにしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。