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【量子力学入門06】シュレーディンガー方程式1

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シュレーディンガー方程式1

シュレーディンガー方程式は量子力学の基礎を成す重要な方程式であり、その成立には古典力学や解析力学の進展が深く関与しています。その中でも、ハミルトン・ヤコビ理論はシュレーディンガー方程式の着想に重要な役割を果たしました。今回は、シュレーディンガー方程式の誕生に至る歴史を辿りながら、ハミルトン・ヤコビ理論との関係を数式を交えて解説します。

古典力学と解析力学の発展

ニュートン力学の基本

ニュートン力学では、粒子の運動はニュートンの運動方程式
md2rdt2=F


によって記述されます。ここで m は質量、r は位置、F は力を表します。

ハミルトン形式への移行

ニュートン力学を解析的に扱うために発展したのがラグランジュ力学とハミルトン力学です。ハミルトン形式では、運動を位置 q=(q1,q2,,qn) とその共役運動量 p=(p1,p2,,pn) の変数で記述します。

ハミルトニアン H(q,p,t) を用いると、ハミルトンの運動方程式は次のように表されます。
dqidt=Hpi,dpidt=Hqi(i=1,2,,n)

ハミルトン・ヤコビ理論の概要

ハミルトン・ヤコビ方程式の導出

ハミルトン形式をさらに解析的に深化させたものがハミルトン・ヤコビ理論です。この理論の中心となるのがハミルトン・ヤコビ方程式です。

ハミルトンの主関数 S(q,t) を用いると、ハミルトニアンは以下の形式で書けます。
H(q,Sq,t)+St=0

この式がハミルトン・ヤコビ方程式です。この方程式を解くことで、系の時間発展を解析的に求めることができます。

波動力学との類似性

ハミルトン・ヤコビ方程式において、主関数 S(q,t) は運動量と位置の関係を記述する役割を果たします。この S が後にシュレーディンガー方程式における波動関数の位相と結びつく点が重要です。

波動力学の誕生

ド・ブロイの波動仮説

1924年、ルイ・ド・ブロイは粒子に波動的性質があることを提唱しました。この仮説によると、粒子に対応する波長 λ は運動量 p によって以下のように決定されます。
λ=hp,


ここで h はプランク定数です。

ド・ブロイの波動仮説は、古典的な粒子と波動の二重性を示唆し、シュレーディンガー方程式の導出に大きな影響を与えました。

シュレーディンガー方程式の導出

いよいよシュレーディンガー方程式の登場です!エルヴィン・シュレーディンガーは1926年に、ハミルトン・ヤコビ理論とド・ブロイの波動仮説を組み合わせることで、非相対論的量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式を導出しました。

ハミルトン・ヤコビ方程式における主関数 S(q,t) を波動関数 ψ(q,t) の位相として仮定し、
ψ(q,t)=A(q,t)eiS(q,t)/


と表します。ここで =h/(2π) は換算プランク定数です。

この仮定を用いることで、シュレーディンガー方程式、
iψt=22m2ψ+V(q)ψ


が導かれます。

シュレーディンガー方程式と古典力学の対応

シュレーディンガー方程式は量子力学の基本を記述するものですが、古典力学との対応原理を持ちます。波動関数 ψ の振幅が極大となる部分は、古典的な運動方程式を満たす軌道に対応します。このことは、波動力学がハミルトン・ヤコビ理論を量子論的に拡張したものであることを示しています。

今回のまとめ

シュレーディンガー方程式は、ハミルトン・ヤコビ理論を基礎とし、ド・ブロイの波動仮説と結びつけることで成立しました。この方程式は、古典力学と量子力学を橋渡しする役割を果たし、現代物理学の基盤として重要な位置を占めています。

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