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【量子力学入門08】物質粒子の確率波1

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物質粒子の確率波1

これまでの要約

これまでに、光や物質粒子が場合によって波として振る舞ったり、粒子として振る舞ったりすることについて議論してきました。

しかし、これらの性質が互いに相容れないと考えられるにもかかわらず、同じものを状況によって二通りに考えることが許されるためには、その根本的な理由を明らかにする必要があります。

たとえば、光に波動的性質を持つものと粒子的性質を持つものの2種類が存在し、それらの混合物が一般的な光であると仮定することも可能です。具体的には、回折現象では波動性のものが、光電効果では粒子性のものが作用すると考えることもできます。

しかし、それぞれの状況によってなぜ特定の種類だけが作用し、他の種類が作用しないのかが明確でない限り、納得できる理論を作ったとは言えません。これは、自然現象に対して予測可能な理論を求める人間の欲求に基づくものです。

シュレーディンガーの解釈

シュレーディンガーは初めに波動論の立場をとり、波動が基本的なものであるとして粒子を説明しようとしました。この立場では、物質は雲のように空間に広がったものであり、電子はこの雲が比較的小さな範囲に凝縮したものだと考えます。この小さな範囲内においても、波動方程式が成立していると考えました。これは、昔の電子論における考え方に似ています。このような粒子の数式的な表現は、フーリエの定理によって任意の関数を三角関数の重ね合わせで表現できるように、波動方程式の単振動に相当する特殊解を重ね合わせることで達成できるでしょう。

しかし、この見解に対しては次のような反論があります。

まず第一に、上述したような重なり合った波は、一般的に時間の経過とともにその形状が変化します。たとえば、最初は小さな範囲に集中していた波が時間とともに広がる現象が起こります。これは熱伝導における温度の拡散に似ています。しかし、実際の電子は常に粒子としての性質を保っており、たとえば電子線の幅が進むにつれて広がるといった現象は観察されていません。

そして第二に、シュレーディンガーの方程式は単一の粒子の場合には空間座標と時間に関係していますが、多数の粒子の場合には仮想的な多次元空間に関するものとなります。これに対し、従来の波動論は三次元空間における現象を扱っており、シュレーディンガーの波動はこれとは全く異なる性質を持つという批判がありました。

ボルンの解釈

ボルンは、アルファ粒子が原子によって分散される問題をシュレーディンガーの方程式を基にして解明しました。

原子は核と、それを取り囲む複数の電子から成り立っています。遠くから飛んできたアルファ粒子が原子の近くを通過するとき、クーロンの法則による力を受け、その運動方向が変化します。

ボルン以前に、ラザフォードはこれにニュートン力学を適用し、アルファ粒子が統計的にどの方向に分散するかを計算しました。

波動の視点から見ると、飛んでくるアルファ粒子は平面波として表され、これが原子に当たることで分散します。この現象は光が微粒子によって散乱される様子と似ています。ただし、光の場合と異なり、微粒子の表面の境界条件に代わってクーロンの場が作用し、波動方程式の変数の数も増える点が異なります。

ボルンは、分散されたアルファ粒子に対応する波動関数を求め、その共役複素数を用いて波動関数の絶対値の二乗を計算しました。その結果、これはラザフォードが導いた式と完全に一致しました。

このことから、シュレーディンガーの波動関数は従来の波動を表すものではなく、粒子がある場所に存在する確率を示すものだとボルンは提唱しました。これにより、この波は確率波と呼ばれることがあります。この確率波という新しい概念は画期的なものです。

次回のコラムではその内容をさらに詳しく調べていきます。

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