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【量子力学入門11】不確定性原理

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不確定性原理と波動関数

不確定性原理は量子力学の基本原理の一つであり、観測可能な物理量(例えば位置と運動量)の測定に関する根本的な制限を示しています。この原理は1927年にヴェルナー・ハイゼンベルクによって提唱されました。ここでは、波動関数との関係を詳しく解説し、数式を用いてその本質を説明します。

波動関数の概要

量子力学では、粒子の状態は波動関数 ψ(x,t) によって記述されます。この波動関数は次の性質を持っています。

1) ψ(x,t) は複素数値関数であり、位置 x における粒子の振幅を表す。
2) 波動関数の絶対値の二乗 |ψ(x,t)|2 は、粒子が位置 x に存在する確率密度を表す。

波動関数はシュレーディンガー方程式
iψ(x,t)t=22m2ψ(x,t)x2+V(x)ψ(x,t)
を満たします。

位置と運動量の表現

量子力学では、位置と運動量はそれぞれ演算子によって表されます。

位置演算子: ˆx=x
運動量演算子: ˆp=iddx

波動関数に作用することで、これらの演算子は期待値や分散といった物理量を計算するために用いられます。

不確定性の数学的背景

物理量の不確定性(標準偏差)は、波動関数を用いて次のように定義されます。

位置の不確定性は以下の通りです。
Δx=x2x2

運動量の不確定性は以下の通りです。
Δp=p2p2

ここで、期待値 A は演算子 ˆA を用いて次のように計算されます。
A=ψ(x)ˆAψ(x)dx

ハイゼンベルクの不確定性原理

不確定性原理は、位置と運動量の不確定性が以下の関係を満たすことを述べています。
ΔxΔp2

この式は、同時に位置と運動量を任意の精度で測定することが不可能であることを意味します。以下、この式の導出を説明します。

コーシー・シュワルツの不等式

波動関数 ψ(x) に対して、次のコーシー・シュワルツの不等式を適用します。
|f(x)g(x)dx|2|f(x)|2dx|g(x)|2dx

ここで、f(x)g(x) を以下のように定義します。
f(x)=(xx)ψ(x),g(x)=iddxψ(x)

これを用いて計算を進めると、以下の関係が得られます。
ΔxΔp2

不確定性原理の解釈

この不等式は、粒子の位置と運動量が同時に完璧に確定できないことを表しています。この制限は、測定装置の精度や観測技術に由来するものではなく、量子系そのものの本質的な性質です。

ガウス型波動関数による例

位置と運動量の不確定性を具体的に理解するために、ガウス型波動関数を考えます。
ψ(x)=(12πσ2x)1/4exp(x24σ2x)

この波動関数に対して、位置と運動量の不確定性を計算すると、次の結果が得られます。
Δx=σx,Δp=2σx

不確定性の積は常に /2 に等しくなります。
ΔxΔp=2

この結果は、ガウス型波動関数が不確定性原理の等号を満たす最適な波動関数であることを示しています。

不確定性原理の物理的意味

不確定性原理は、以下のような重要な意味を持っています。

1) 波動-粒子二重性: 粒子は波動としての性質を持つため、位置と運動量が同時に確定できない。
2) 量子力学的限界: 古典力学では無視される微小な効果が、量子力学では本質的な役割を果たす。
3) 測定の影響: ある物理量を測定することで、他の物理量に影響を与える。

今回のまとめ

不確定性原理は量子力学の中心的な概念であり、波動関数の性質から直接導かれる基本的な法則です。この原理は、量子世界の挙動を理解する上で不可欠であり、位置と運動量の間のトレードオフを明確に示しています。波動関数を通じて、粒子の性質を深く掘り下げることで、量子力学の驚くべき性質が浮き彫りになります。

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