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【量子力学入門15】量子論的波動論

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量子論的波動論

量子力学の中心的な概念の一つに「波動関数」があります。これは、系の状態を記述するための複素数値関数であり、物理系のすべての情報を含んでいます。今回は、波動関数の性質について学部1年生向けに説明し、古典的な波動論との関連を考察します。

波動関数の定義

量子力学では、粒子の状態を記述する波動関数が導入されます。この関数は複素数値を持ち、その絶対値の二乗が粒子の位置に関する確率密度を表します。つまり、粒子が時間に位置に見つかる確率密度は次式で与えられます。

P(x,t)=|ψ(x,t)|2.

確率密度の性質から、波動関数は次の規格化条件を満たす必要があります。

|ψ(x,t)|2dx=1.

この規格化条件は、粒子が空間のどこかに存在する確率が1であることを保証します。

波動方程式とのつながり

波動関数はシュレディンガー方程式に従います。1次元の場合、シュレディンガー方程式は以下の形をとります。

iψ(x,t)t=22m2ψ(x,t)x2+V(x)ψ(x,t),

ここで、はプランク定数h2πで割ったもの、mは粒子の質量、V(x)は位置におけるポテンシャルエネルギーを表します。

この式は、波動関数の時間発展を記述する基本方程式です。特に、古典的な波動論における波動方程式と形式的な類似性があります。

古典的波動論との関係

古典的な波動論では、波動方程式は次の形をとります。

2u(x,t)t2=c22u(x,t)x2,

ここで、は波動の変位、は波の伝播速度です。この方程式とシュレディンガー方程式の主な違いは、古典的波動方程式が二階時間微分を含むのに対し、シュレディンガー方程式は一次時間微分を含むこと、波動関数が複素数の値であることの2点です。

ただし、両者には重要な共通点もあります。それは、波動関数と古典的な波動の両方が「干渉」と「重ね合わせの原理」に従うことです。

波動関数の具体例

以下に、シュレディンガー方程式の具体的な解をいくつか示します。

自由粒子の場合V(x)=0

自由粒子に対して、シュレディンガー方程式の解は平面波として表されます:

ψ(x,t)=Aei(kxωt),

ここで、Aは振幅、kは波数、ωは角振動数であり、エネルギーEと運動量pは以下の関係を持ちます。

E=ω,p=k.

この平面波解は古典的な波動論の波と類似していますが、量子力学では確率的な解釈を持つ点が異なります。

調和振動子の場合V(x)=12mω2x2

この場合、解はエルミート多項式を用いた波動関数で表されます。

ψn(x)=NnHn(ξ)eξ2/2,ξ=mωx,

ここで、Nnは規格化定数、Hn(ξ)はエルミート多項式です。このような波動関数は、古典的調和振動子に対応する離散的なエネルギー準位を持ちます。

波動関数の物理的意味

波動関数の重要な性質を以下にまとめます。

  • 確率解釈
    波動関数の絶対値の二乗は確率密度を表し、観測可能な物理量と直接関連します。
  • 重ね合わせの原理
    波動関数は線形方程式に従うため、異なる波動関数の線形結合もまた解になります。
  • 干渉現象
    複数の波動関数が重ね合わさると、干渉項が現れ、古典波動論と類似した現象が見られます。
  • 不確定性原理
    波動関数の形状は運動量と位置の不確定性を反映しており、これにより粒子の運動が制約されます。

古典論から量子論への橋渡し

古典的波動論と量子力学の波動関数の関係は、対応原理を通じて理解されます。量子力学では、古典論における波動のエネルギーや運動量がプランク定数を通じて離散化されますが、大きな量子数の極限では古典的な振る舞いに漸近します。このような連続性を意識すると、量子力学の波動関数が古典波動論の拡張であることが分かります。

今回のまとめ

波動関数は量子力学における基礎的な概念であり、粒子の確率的性質を記述する役割を果たします。シュレディンガー方程式を通じてその時間発展が決定され、古典的な波動論と多くの類似点を持つ一方で、量子力学固有の確率的解釈や不確定性原理などを内包しています。古典論から量子論への橋渡しを理解することで、両者の関係を深く学ぶことができます。

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