演算子の値
量子力学では、物理量は演算子を用いて表現され、状態関数(波動関数)を用いてその期待値や分散を計算します。ここでは、位置演算子と運動量演算子について、それぞれの期待値と分散の計算方法を示し、最後にそれらが不確定性関係とどのように関連するかを解説します。
位置演算子の期待値と分散
位置演算子xは、座標空間において位置を直接表す演算子であり、その作用は以下のように定義されます。
ˆxψ(x)=xψ(x),
ここで、ψ(x)は波動関数を表します。
期待値
位置演算子の期待値⟨x⟩は、位置の平均値を表します。その式は次のように定義されます。
⟨ˆx⟩=∫∞−∞x|ψ(x)|2,dx.
ここで、|ψ(x)|2は確率密度を表し、ψ(x)は規格化条件
∫∞−∞|ψ(x)|2dx=1
を満たす必要があります。
分散
位置演算子の分散Δxは、位置の期待値からのばらつきを示し、次のように定義されます。
Δx2=⟨ˆx2⟩–⟨ˆx⟩2.
ここで、⟨x2⟩は位置演算子の二乗の期待値であり、以下のように計算されます。
⟨ˆx2⟩=∫∞−∞x2|ψ(x)|2,dx.
運動量演算子の期待値と分散
運動量演算子ˆpは、位置空間において微分作用素として定義されます。
ˆpψ(x)=−iℏ∂∂xψ(x),
ここで、ℏは換算プランク定数です。
期待値
運動量演算子の期待値⟨p⟩は、運動量の平均値を表します。その式は次のように与えられます。
⟨ˆp⟩=∫∞−∞ψ∗(x)(−iℏ∂∂x)ψ(x),dx.
ここで、ψxは波動関数の複素共役です。
分散
運動量演算子の分散Δpは次のように定義されます。
Δp2=⟨ˆp2⟩–⟨ˆp⟩2.
⟨p2⟩は運動量演算子の二乗の期待値であり、以下のように計算されます。
⟨ˆp2⟩=∫∞−∞ψ∗(x)(−ℏ2∂2∂x2)ψ(x),dx.
不確定性関係
位置と運動量の分散には、不確定性原理として知られる基本的な関係が成り立ちます。ハイゼンベルクの不確定性関係は次のように表されます。
ΔxΔp≥ℏ2.
この関係は、位置と運動量を同時に測定する際の精度の限界を示します。具体的には、位置の不確定性Δxと運動量の不確定性Δpの積は、プランク定数 hの半分より小さくなることはありません。
導出の概要
不確定性関係は、量子力学における演算子の交換関係から導かれます。位置と運動量演算子は以下の交換関係を満たします。
[ˆx,ˆp]=iℏ,
ここで、[A,B]=AB−BAは交換子です。この交換関係を用いると、不確定性関係を次のように導けます。
ΔxΔp≥12|⟨[ˆx,ˆp]⟩|=ℏ2.
不確定性関係の重要性
不確定性関係は、以下のような意味で重要です。
1) 粒子の位置を高精度で測定すると、運動量の不確定性が大きくなる。
2) 固有状態(例えば、調和振動子の基底状態)におけるエネルギーの最小値は、不確定性関係に基づいて決まる。
今回のまとめ
量子力学では、位置と運動量の期待値や分散を計算することで、粒子の振る舞いを記述できます。位置と運動量の分散は、不確定性関係によって互いに制約されており、この関係は量子系の本質的な性質を示しています。具体的な例や応用についてさらに学ぶことで、この理論の深い理解を得ることができます。