球座標の勾配・発散・回転・ラプラシアン
量子力学では、系の対称性から球座標を使うと計算が楽になることが多いです。ここでは、このあとの計算の準備として、球座標系 (r,θ,ϕ) における勾配、発散、回転、ラプラシアンの導出を以下に示します。
球座標系の定義
球座標系の座標とデカルト座標系との関係は次の通りです。
x=rsinθcosϕ,y=rsinθsinϕ,z=rcosθ.
逆変換は以下のようになります。
r=√x2+y2+z2,θ=arccos(zr),ϕ=arctan2(y,x).
スケールファクターは以下のように定義されます。
hr=1,hθ=r,hϕ=rsinθ.
勾配(Gradient)
スカラー場 f(r,θ,ϕ) に対する勾配は次のように定義されます。
∇f=∂f∂rˆer+1r∂f∂θˆeθ+1rsinθ∂f∂ϕˆeϕ.
発散(Divergence)
ベクトル場 A=Arˆer+Aθˆeθ+Aϕˆeϕ に対する発散は次のように定義されます。
∇⋅A=1r2sinθ[∂∂r(r2sinθAr)+∂∂θ(rsinθAθ)+∂∂ϕ(rAϕ)].
これを展開すると次のようになります。
∇⋅A=1r2∂∂r(r2Ar)+1rsinθ∂∂θ(sinθAθ)+1rsinθ∂Aϕ∂ϕ.
回転(Curl)
ベクトル場 A=Arˆer+Aθˆeθ+Aϕˆeϕ に対する回転は次のように定義されます。
∇×A=1r2sinθ|ˆerrˆeθrsinθˆeϕ∂∂r∂∂θ∂∂ϕArrAθrsinθAϕ|.
これを展開すると各成分は以下のようになります。
(∇×A)r=1rsinθ[∂∂θ(Aϕsinθ)–∂Aθ∂ϕ],
(∇×A)θ=1r[1sinθ∂Ar∂ϕ–∂∂r(rAϕ)],
(∇×A)ϕ=1r[∂∂r(rAθ)–∂Ar∂θ].
ラプラシアン(Laplacian)
スカラー場 f(r,θ,ϕ) のラプラシアンは次のように定義されます。
∇2f=1r2∂∂r(r2∂f∂r)+1r2sinθ∂∂θ(sinθ∂f∂θ)+1r2sin2θ∂2f∂ϕ2.
球座標のラプラシアンはいつ使うか
球座標のラプラシアンは、量子力学における角運動量、波動関数の分離変数法、エネルギー固有値の計算において不可欠です。
特に、水素原子の問題や3次元の調和振動子の問題、そして散乱問題などで重要な役割を果たします。