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【量子力学入門38】光の量子論

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光の量子論

光は古代から研究されてきた物理現象であり、19世紀にはマクスウェル方程式により電磁波としての性質が明らかになりました。しかし、20世紀に入ると、光の振る舞いを正確に理解するためには量子論が必要であることが判明しました。今回は、まずマクスウェル方程式の復習を行い、その後に量子論への拡張を議論します。

マクスウェル方程式の復習

マクスウェル方程式は、電場 E と磁場 B の振る舞いを記述する基本方程式です。以下にその基本形を示します。

ガウスの法則(電場)
E=ρε0,


ここで、ρ は電荷密度、ε0 は真空の誘電率です。

ガウスの法則(磁場)
B=0,


磁場の発散がゼロであることは、磁気単極子が存在しないことを示します。

ファラデーの法則
×E=Bt,


時間的に変化する磁場が渦状の電場を生成します。

アンペール-マクスウェルの法則
×B=μ0J+μ0ε0Et,


ここで、J は電流密度、μ0 は真空の透磁率です。

これらの方程式を連立して解くことで、電磁波としての光の性質が導かれます。

マクスウェル方程式を操作すると、電場と磁場の波動方程式が得られます。
2Eμ0ε02Et2=0,


2Bμ0ε02Bt2=0.

これらの解は光速度 c=1μ0ε0 を持つ平面波を記述します。

光の粒子性:光量子仮説

マクスウェル方程式は光の波動性を説明しますが、20世紀初頭の実験結果(例えば黒体放射や光電効果)から、光には粒子としての性質もあることが示されました。

プランクの黒体放射則

マックス・プランクは、黒体放射のスペクトルを説明するために、エネルギーが離散的な量子であることを提案しました。このエネルギー量子は以下の式で表されます:
E=hν,


ここで、h はプランク定数、ν は光の振動数です。

光電効果

アルベルト・アインシュタインは、光電効果の実験結果を説明するために、光を粒子(光子)としてモデル化しました。光子のエネルギーはプランクの式に従い、金属表面に当たったときに電子を放出します。この現象は波動理論では説明できません。

光の場の量子化

電磁場を量子化することで、光の粒子性と波動性を統一的に記述できます。

電磁場のハミルトニアン

電磁場のエネルギーは以下の式で与えられます。
H=12(ε0E2+1μ0B2)d3x.


このエネルギーを量子化するためには、場を量子力学的な演算子として扱います。

正準量子化

場の量子化では、電場とベクトルポテンシャル A を用いて以下の交換関係を定義します。
[ˆAi(x),ˆEj(y)]=iδijδ3(xy).


ここで、ˆAiˆEj はそれぞれ演算子としてのベクトルポテンシャルと電場です。

フォック空間

光の場の状態は、フォック空間と呼ばれる量子状態の空間で記述されます。フォック空間では、光子数を明示的に指定でき、以下のように記述されます。
|n1,n2,,


ここで、ni はそれぞれのモードにおける光子数を表します。

電磁場のモード展開

電磁場を空間的なモードに分解して考えると、各モードについて量子調和振動子と同様に扱うことができます。例えば、電場は次のように展開されます。
ˆE(x,t)=kωk2ε0V(ˆakei(kxωkt)+ˆakei(kxωkt)),


ここで、ˆakˆak はそれぞれ消滅演算子と生成演算子であり、光子の生成と消滅を記述します。

今回のまとめ

マクスウェル方程式から始まり、光の量子論までの道筋を説明しました。古典的な電磁場の理論は、光の波動性を記述するのに十分ですが、量子化を通じて初めて光の粒子性が理解されます。これにより、光の本質的な二重性が明らかになり、現代物理学の基盤が築かれました。

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