$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}
\def\coloneqq{{:=}}$
磁場中の荷電粒子2
今回はランダウ準位の導出と生成・消滅演算子の役割についてみていきます。
磁場中の荷電粒子のラグランジアン
量子力学において、磁場中を運動する荷電粒子の動きを記述するために、まずラグランジアンを考えます。荷電粒子の運動は電磁ポテンシャルによって影響を受けるため、ラグランジアンは以下のように与えられます。
\begin{equation}
L = \frac{1}{2}m\mathbf{v}^2 + q\mathbf{v}\cdot\mathbf{A},
\end{equation}
ここで、$m$ は粒子の質量、$q$ は粒子の電荷、$\mathbf{v}$ は速度、$\mathbf{A}$ はベクトルポテンシャルです。
ベクトルポテンシャル $\mathbf{A}$ は磁場 $\mathbf{B}$ を次式で満たすように定義されます。
\begin{equation}
\mathbf{B} = \nabla \times \mathbf{A}.
\end{equation}
このラグランジアンを用いると、運動方程式はラーモアの円運動を示す形で得られます。
ハミルトニアン形式への変換
次に、対応するハミルトニアンを導出します。正準運動量 $\mathbf{p}$ は以下で定義されます。
\begin{equation}
\mathbf{p} = \frac{\partial L}{\partial \mathbf{v}} = m\mathbf{v} + q\mathbf{A}.
\end{equation}
従って、運動量 $\mathbf{p}$ は機械的運動量 $m\mathbf{v}$ とベクトルポテンシャル $\mathbf{A}$ の影響を受けます。ハミルトニアンは以下のように書けます。
\begin{equation}
H = \frac{1}{2m}(\mathbf{p} – q\mathbf{A})^2.
\end{equation}
この形式は量子力学的な解析に適しており、これをもとにシュレディンガー方程式を解きます。
磁場の選択と簡略化
系を簡単にするために、磁場が一様であると仮定し、$\mathbf{B} = B\hat{z}$ を取ります。これに対応するベクトルポテンシャルの一つの選択として、クーロンゲージを使用して $\mathbf{A} = (-\frac{1}{2}By, \frac{1}{2}Bx, 0)$ とします。
この場合、ハミルトニアンは次の形になります。
\begin{equation}
H = \frac{1}{2m}\left[ \left(p_x + \frac{qB}{2}y\right)^2 + \left(p_y – \frac{qB}{2}x\right)^2 + p_z^2 \right].
\end{equation}
ここで、$z$ 軸方向の運動は $\mathbf{B}$ によって影響を受けないため、以下では $z$ 軸方向を無視し、2次元問題として扱います。
ランダウ準位の導出
2次元平面でのハミルトニアンは次式で表されます。
\begin{equation}
H = \frac{1}{2m}\left[ \left(p_x + \frac{qB}{2}y\right)^2 + \left(p_y – \frac{qB}{2}x\right)^2 \right].
\end{equation}
ここで、
\begin{equation}
\omega_c = \frac{qB}{m}
\end{equation}
をサイクロトロン周波数と定義します。ハミルトニアンは以下の形に書き直せます。
\begin{equation}
H = \frac{1}{2m}\left[ p_x^2 + p_y^2 + \frac{m^2\omega_c^2}{4}(x^2 + y^2) + \frac{qB}{2}(xp_y – yp_x) \right].
\end{equation}
この形からわかるように、ハミルトニアンは2次元調和振動子に類似しており、$xp_y – yp_x$ の項は角運動量に対応します。
生成・消滅演算子の導入
ハミルトニアンの解法を簡略化するために、生成・消滅演算子を導入します。位置演算子 $x, y$ と運動量演算子 $p_x, p_y$ を用いて以下を定義します。
\begin{equation}
a = \sqrt{\frac{m\omega_c}{2\hbar}}\left(x + \frac{i}{m\omega_c}p_y\right), \quad a^\dagger = \sqrt{\frac{m\omega_c}{2\hbar}}\left(x – \frac{i}{m\omega_c}p_y\right).
\end{equation}
$a$ と $a^\dagger$ は調和振動子の生成・消滅演算子として振る舞い、次の交換関係を満たします。
\begin{equation}
[a, a^\dagger] = 1.
\end{equation}
ハミルトニアンはこれらの演算子を用いて次のように書けます。
\begin{equation}
H = \hbar\omega_c\left(a^\dagger a + \frac{1}{2}\right).
\end{equation}
これにより、ランダウ準位のエネルギー固有値が得られます。
ランダウ準位のエネルギー固有値
固有値は次の形になります。
\begin{equation}
E_n = \hbar\omega_c\left(n + \frac{1}{2}\right), \quad n = 0, 1, 2, \ldots.
\end{equation}
これがランダウ準位と呼ばれるエネルギー固有値であり、量子数 $n$ はそれぞれの準位の整数値を示します。各準位には磁場中の運動に対応する縮退が存在します。
今回のまとめ
ランダウ準位は、磁場中を運動する荷電粒子の量子化されたエネルギー準位を示します。その導出には、ベクトルポテンシャルによる磁場の記述、ハミルトニアン形式の構築、および生成・消滅演算子の導入が重要な役割を果たします。これにより、調和振動子の形式を用いて簡潔にエネルギー準位を計算できることがわかりました。ランダウ準位の物理的な意味は、電子などの荷電粒子が磁場中で運動する際の量子化された軌道運動を示す点にあります。






