$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
最近のノーベル賞
\section{最近のノーベル賞}
\begin{itemize}
\item 重力波の検出(2017):\\
$2017$年に重力波の直接観測が成功した。重力波は一般相対性理論で提唱されたもので、一般相対性理論が発表された$1916$年当時は検出のために必要な技術が存在しなかった。重力波の存在は$1974$年にパルサー連星系が一般相対性理論によって得られる重力放射によるエネルギー損失の式に合致して軌道減衰していることが観測されたことで間接的に確認されていた。\\
LIGO が観測した重力波は地球から$13$億光年離れた$2$個のブラックホール同士の衝突合体により生じたものである。地球から数千光年離れた場所に由来する重力波は$4~\text{km}$間隔の鏡で$10^{-18}~\text{m}$ほど歪むことが期待される。これはおよそ$10^{-21}~\text{m}$の相対的な歪みに相当する。\\
LIGO は$2$つのアームが取り付けられた干渉計を観測に利用した。これは大まかにはMichelson 干渉計と類似の干渉計である。\\
\item 青色発光ダイオード(2014):\\
発光ダイオード(LED)はp-n 接合を利用した良い例である。バイアス電圧が接合に掛けられると、片側の電子がもう片側の正孔と再結合してバンドギャップのオーダーのエネルギーを持った光子が放出される。これがLED が光子のエネルギーに対応した振動数で発光する原理である。赤色発光ダイオードと緑色発光ダイオードはバンドギャップに対応する必要なエネルギーが$1\sim3~\text{eV}$で、これは$1.4~\text{eV}$のGaAs や$2.2~\text{eV}$のGaP を利用すれば容易に実現可能である。しかし、直接遷移型かつバンドギャップに対応するエネルギーが$3~\text{eV}$以上の物質を見つけることは困難であった。以前はZnSe やSiC などが利用されていたがこれらは間接遷移型であった。\\
一般に、発光ダイオードには発光再結合確率の高い直接遷移型の半導体が適する一方で、一般的な半導体材料であるケイ素(シリコン)やゲルマニウムなどの間接遷移型半導体では、電子と正孔が再結合するときに光は放出されにくい。1990年代初めに直接遷移型かつバンドギャップに対応するエネルギーが$3.4~\text{eV}$の窒化ガリウム(GaN)による青色発光ダイオードの半導体が発明された。\\
\item グラフェンの分離(2010):\\
グラフェンは入手困難で研究が進んでいなかったが、$2004$年にセロハンテープにグラファイト(黒鉛)のかけらを貼り付けて剥がすことでグラフェンを得られるようになったことで応用研究が進んだ。\\
グラフェン内では炭素原子は六角形格子構造を取り、電子が共有結合的に結びついているため非常に特異な振る舞いを見せる。グラフェン内の電子は零質量粒子のように振る舞い、$\omega\propto k^2$ではなく$\omega\propto k$の分散関係に従う。これによりグラフェンの電気伝導度は非常に高くなる。\\
\end{itemize}