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【古典力学】第10講 単振動と減衰振動

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第10講の導入

前々回、常微分方程式の解法についてお話ししました。ここでは、2階定数係数型の同次線型常微分方程式の解法の具体例として単振動と減衰振動について学んでいきましょう。必要に応じて第08講の内容を復習しながら読み進めていってください。

フックの法則とバネによる単振動

ここでは一番簡単な単振動の例としてバネによる単振動を議論します。まずはフックの法則の復習から始めましょう。外力を受けないバネにはたらく復元力の性質は、経験則として以下のようにまとめられます。これらをフックの法則と言います。

  • フックの法則
    バネの復元力$F$は自然長からの変位$x$に比例して$F=-kx$で与えられる。ここで、$k(>0)$はバネの形状などから決まる係数でバネ定数と呼ばれる。

さて、ニュートンの運動方程式に$F=-kx$を代入すると、バネにつながれた質量$m$の物体の運動方程式は以下で与えられます。
\[
m\frac{d^2x}{dt^2}=-kx
\]
これは第08講で説明した2階の常微分方程式の形なので、この常微分方程式は解くことが出来ます。$\omega=\sqrt{k/m}$とすれば、任意定数$A$、$B$を用いて
\[
x=A\cos{\omega t}+B\sin{\omega t}
\]
と書けます。あるいは、振幅$a$と初期位相$\delta$を用いて
\[
x=a\cos(\omega t+\delta)
\]
と書くことも出来ます。このとき、これらの文字は$A=a\cos\delta$、$B=-a\sin\delta$で結ばれています。この運動は2次元平面内を一定の速さで回転する円運動の1つの軸への射影であるとみなすことも出来ます。

先ほどの$\omega$は振動数と呼ばれ、運動状態は周期$T=2\pi/\omega$であらわされます。バネの場合は
\[
T=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}
\]
です。これは高校物理で暗記させられていた人もいるかもしれません。実はこのような式変形の下で導出される式なのです。

振り子による単振動

別の例として、振り子による単振動を考えてみましょう。長さ$l$のひもに質量$m$のおもりをくっつけた単振り子の運動を考えます。ひもは伸び縮みせず、重さが無視できるほど軽いとします。運動方程式はふれ角$\theta$を用いて次のように書くことが出来ます。
\[
ma_\theta=m(r\ddot{\theta}+2\dot{r}\dot{\theta})=ml\ddot{\theta}=-mg\sin{\theta}
\]
ここで、ふれ角が十分小さい場合の運動を考えます。$|\theta|\ll1$のときの近似式$\sin{\theta}\simeq\theta$を利用すると、運動方程式は次のように書くことが出来ます。
\[
\ddot{\theta}=-\frac{g}{l}\theta
\]
これは単振動の運動方程式に他なりません。$\omega^2=g/l$とおくと、振り子の周期は
\[
T=2\pi\sqrt{\frac{l}{g}}
\]
となります。

減衰振動

現実のバネや振り子は永遠に単振動を繰り返すことはなく、振幅はゆっくりと減少して最後には止まります。この減衰振動を記述するために、バネ定数$k$のバネにつながれた質量$m$の物体に速度に比例した抵抗力$-2h\dot{x}$がはたらく状況を考えましょう。このとき、運動方程式は次のように書くことが出来ます。
\[
m\ddot{x}=-kx-2h\dot{x}
\]
この式は$\gamma=h/m$、$\omega_0^2=k/m$とおくと次のように書き換えることが出来ます。
\[
\ddot{x}+2\gamma\dot{x}+\omega_0^2x=0
\]
従って、これを解くことが次の目標です。解を$x=\mathrm{e}^{-\gamma t}f(t)$と仮定すると方程式は
\[
\{\ddot{f}-2\gamma\dot{f}+\gamma^2f+2\gamma(\dot{f}-\gamma f)+\omega_0^2f\}\mathrm{e}^{-\gamma t}
\]
これを整理すると$\ddot{f}+(\omega_0^2-\gamma^2)f=0$が得られます。

減衰振動

粘性抵抗が小さく$\gamma<\omega_0$であるとき、$\omega_1=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}$とおくと$f$の式は$\ddot{f}=-\omega_1^2f$となって単振動の方程式の形になるので$f=a\cos{(\omega_1t+\delta)}$となります。従って、$x=a\mathrm{e}^{-\gamma t}\cos{(\omega_1t+\delta)}$となります。この解の振幅は緩和時間$1/\gamma$で指数関数的に減少します。これを減衰振動と言います。

過減衰

粘性抵抗が大きく$\omega_0<\gamma$の場合は$\sigma=\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2}$とおくと$f$の式は$\ddot{f}=\sigma^2f$となります。このときの一般解は$f=a_1\mathrm{e}^{\sigma t}+a_2\mathrm{e}^{-\gamma t}$となります。従って$x==a_1\mathrm{e}^{-(\gamma-\sigma)t}+a_2\mathrm{e}^{-(\gamma+\sigma)t}$。このような運動は過減衰と言います。

臨界減衰

減衰振動と過減衰の間の状態、$\omega_0=\gamma$のとき、$\ddot{f}=0$となるので$f=a+bt$となります。従って、$x=\mathrm{-\gamma t}(a+bt)$となります。このような運動を臨界減衰と言います。

第10講のまとめ

最後に一言コメントをして第10講を終わりにしましょう。ここでは古典力学を具体例として単振動や減衰振動を解説しました。しかし、単振動や減衰振動は古典力学以外の分野でも様々なところで顔を出します。例えば、コイルとコンデンサーで構成されるLC 回路を流れる電流は単振動の形であらわすことができます。また、インスリンによる血糖値の制御は減衰振動の形であらわせることが知られています。このように、古典力学で学んだ事柄は他分野でも盛んに応用されているのです。

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