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第10講:加法公式

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第10講:加法公式

 一つの関数f(u)について、一般にf(u)f(v)f(u+v)の間の関係を表した式をその関数の加法公式(または加法定理)といいます。ただしuvは変数の二つの値です。

例えばeuの加法公式はeu+v=euevsinuの加法公式は sin(u+v)=sinucosv+cosusinvですね。

もしsinのみで表そうと思えばcosu=±1sin2u等と書き直せば良いことになります。同様に、楕円関数sn uの加法公式を求める一つの方法を次に述べます。まず次のような微分方程式を考えます。
dx(1x2)(1k2x2)+dy(1y2)(1k2y2)=0
この方程式はいわゆる変数分離形に属するから簡単に解けます。すなわち、今
u=x0dx(1x2)(1k2x2)v=y0dy(1y2)(1k2y2)}
とおけば
u+v=c(c)
は明らかに(1)の解です。

さて、(2)から
dxdu=(1x2)(1k2x2),    dydv=(1y2)(1k2y2)
を得ます。ここで(3)を参照すればさらに次の式を得ることができます。
dydu=dydv=(1y2)(1k2y2)
これらの式から
d2xdu2=(1+k2)x+2k2x3d2ydu2=(1+k2)y+2k2y3
したがって
yd2xdu2xd2ydu2y2(dxdu)2x2(dydu)2=2k2xy1k2x2y2
を得ます。これを変形すれば
yd2xdu2xd2ydu2ydxduxdydu=2k2xy(ydxdu+xdydu)1k2x2y2
さらにこの両辺をuに関して積分すれば
log(ydxduxdydu)=log(1k2x2y2)+c(c)
となります。これからただちに
ydxduxdydu1k2x2y2=C(C)
を得ます。(4)をu,vで表すには、これに
x=sn u,y=sn vdxdu=cn u dn u,dydu=cn v dn v
を代入すれば良いです。これによって(4)は
sn u cn v dn v+sn v cn u dn u1k2sn2u sn2v=C
となります。

(5)もまた微分方程式(1)の解であることが分かります。すると(1)は第一階の常微分方程式であるから、これが(3)及び(5)の二通りの解をもつとすれば、これらの両式の左辺の間には何らかの関数関係がなければなりません。よって試しに(5)の左辺をf(u+v)に等しいとおき、ここにおいてv=0とすれば
sn u=f(u)
となります。ゆえに関数fsnであることが分かります。

これによって次の公式を得ることができます。
sn(u+v)=sn u cn v dn v+sn v cn u dn u1k2sn2u sn2v
これはすなわちsnの加法公式です。

(I)の分母をDで表せば
D=cn2u+sn2u dn2v=cn2v+sn2v dn2u
であることが容易に証明されます。よって
cn2(u+v)=1sn2(u+v)=D2(sn u cn v dn v+sn v cn u dn u)2D2
この分子において
D2=(cn2u+sn2u dn2v)(cn2v+sn2v dn2u)
とおいて計算すれば結局
cn(u+v)=cn u cn vsn u sn v dn u dn v1k2sn2u sn2v
を得ます。これはすなわちcn関数の加法公式です。また同様にして
D=dn2u+k2sn2u cn2v=dn2v+k2sn2v cn2u
となることを利用すれば
dn(u+v)=dn u dn vk2sn u sn v cn u dn v1k2sn2u sn2v
を得ます。これはすなわちdn関数の加法公式です。

さてここで
sn K=1,  cn K=0,  dn K=k
となることに注意すれば、上の加法公式によりただちに次の結果を得ます。
{sn(u+K)=cn udn ucn(u+K)=ksn udn udn(u+K)=kdn u{sn(u+2K)=sn ucn(u+2K)=cn udn(u+2K)=dn u{sn(u+3K)=cn udn ucn(u+3K)=ksn udn udn(u+3K)=kdn u{sn(u+4K)=sn ucn(u+4K)=cn udn(u+4K)=dn u
この(I)、(II)、(III)を他の形に直したり、またはこれから種々雑多な公式を誘導したりすることも出来ますがここでは省略することにして、ただ二三の簡単なものを次に挙げておくに留めます。
{sn(u+v)=sn2usn2vsn u cn v dn vsn v cn u dn ucn(u+v)=sn u cn u dn vsn v cn v dn usn u cn v dn vsn v cn u dn udn(u+v)=sn u cn v dn usn v cn u dn vsn u cn v dn vsn v cn u dn u
{sn 2u=2sn u cn u dn u1k2sn4ucn 2u=12sn2u+k2sn4u1k2sn4udn 2u=12k2sn2u+k2sn4u1k2sn4u
{sn2u2=1cn u1+dn ucn2u2=dn u+cn u1+dn udn2u2=k2+dn u+kcn u1+dn u
{sn(u+v)sn(uv)=sn2usn2v1k2sn2u sn2vcn(u+v)cn(uv)=cn2usn2v dn2u1k2sn2u sn2vdn(u+v)dn(uv)=dn2uk2sn2v cn2u1k2sn2u sn2v

参考文献

参考文献は以下の通り。

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。

[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。

[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001

[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。

[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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