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第21講:$\sigma$関数

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$\sigma$関数

以前、$\wp\left(u\right)$から$\zeta\left(u\right)$を導いたのと同様の手段を$\zeta\left(u\right)$に適用してみましょう。
\begin{eqnarray*}
\int_0^u\left\{\zeta\left(u\right)-\frac{1}{u}\right\}du&=&\int_0^u{\sum}’\left\{\frac{1}{u-w}+\frac{1}{w}+\frac{u}{w^2}\right\}du\\
&=&{\sum}’\left\{\log\frac{u-w}{-w}+\frac{u}{w}+\frac{u^2}{2w^2}\right\}
\end{eqnarray*}
今度は$\log$が出て来たので、これを消すために全体の指数関数を作ると
\[
\exp{\sum}’\left\{\log\frac{u-w}{-w}+\frac{u}{w}+\frac{u^2}{2w^2}\right\}={\prod}’\left\{\left(1-\frac{u}{w}\right)e^{\frac{u}{w}+\frac{u^2}{2w^2}}\right\}
\]
この無限乗積で表される$u$の関数は$0$以外の$w$の点で一位の零点をもちます。もし$u=0$でも一位の零点をもたせようとするなら、これに$u$の因数を掛けておけば良いです。よって、ここに
\[
\sigma\left(u\right)=u{\prod}’\left\{\left(1-\frac{u}{w}\right)e^{\frac{u}{w}+\frac{u^2}{2w^2}}\right\}\tag{1}
\]
という形の新しい関数を作ります。

 以上の手順から明らかな通り、$\sigma\left(u\right)$と$\zeta\left(u\right)$の間には次の関係があることが分かります。
\begin{alignat*}{1}
\sigma\left(u\right)&=u\exp\left[\int_0^u\left\{\zeta\left(u\right)-\frac{1}{u}\right\}du\right]\\
\log\sigma\left(u\right)&=\log u+\int_0^u\left\{\zeta\left(u\right)-\frac{1}{u}\right\}du\\
\zeta\left(u\right)&=\frac{d}{du}\log\sigma\left(u\right)=\frac{\sigma’\left(u\right)}{\sigma\left(u\right)}\tag{2}
\end{alignat*}

 $\sigma\left(u\right)$は今までの$\wp\left(u\right)$や$\zeta\left(u\right)$と違って$u=w$の点において極をもたず、また$w$以外の有限点ではもちろん正則だから、結局$\sigma\left(u\right)$は整関数であることになります。これは楕円関数ではありません。なお、$\sigma\left(u\right)$が奇関数であること、及び
\[
\lim_{u\rightarrow0}\frac{\sigma\left(u\right)}{u}=1
\]
であること等は(1)からただちに分かります。よって、
\[
\sigma\left(u\right)=u+c_3u^3+c_5u^5+\cdots
\]
とおいて(2)の右辺に入れ、前回得た$\zeta\left(u\right)$の展開式と比較すれば
\[
c_3=0,\ \ \ c_5=-\frac{g_2}{240},\ \ \ c_7=-\frac{g_3}{840},\ \cdots
\]
等の値を得ることができます。

 次には周期に対する性質を調べましょう。但し、上述のように$\sigma\left(u\right)$は楕円関数ではないため真の意味における周期であるものは存在しませんが、従来の$2\omega_1,2\omega_3$(一般には$w$)のことをやはり$\sigma\left(u\right)$の周期と呼ぶことにします。

 $\zeta\left(u\right)$に関しては以前導いたように
\[
\zeta\left(u+2\omega_1\right)=\zeta\left(u\right)+2\eta_1
\]
の公式が成立します。

この両辺を$u$に関して積分すれば、(2)より、
\[
\log\sigma\left(u+2\omega_1\right)=\log\sigma\left(u\right)+2\eta_1u+c\hspace{1cm}\left(cは定数\right)
\]
を得ます。従って、
\[
\sigma\left(u+2\omega_1\right)=Ce^{2\eta_1u}\sigma\left(u\right)\hspace{1cm}\left(Cは定数\right)
\]
となることが分かります。$C$を決定するために$u=-\omega_1$とおけば
\[
\sigma\left(\omega_1\right)=Ce^{-2\eta_1\omega_1}\sigma\left(-\omega_1\right)=-Ce^{-2\eta_1\omega_1}\sigma\left(\omega_1\right)
\]
ここで$\sigma\left(\omega_1\right)\neq0$だから、これから$C=-e^{2\eta_1\omega_1}$を得ることもできます。従って、次の公式を導くことができます。
\[
\sigma\left(u+2\omega_1\right)=-e^{2\eta_1\left(u+\omega_1\right)}\sigma\left(u\right)\tag{3}
\]
同様に
\[
\sigma\left(u+2\omega_3\right)=-e^{2\eta_3\left(u+\omega_3\right)}\sigma\left(u\right)\tag{4}
\]
(3)、(4)を反復して組み合わせればさらに一般の次の公式を得ることになります。
\[
\sigma\left(u+2h_1\omega_1+2h_3\omega_3\right)=\left(-1\right)^{h_1+h_3}e^E\sigma\left(u\right)
\]
ただし、
\[
E=2\left(h_1\eta_1+h_3\eta_3\right)\left(u+h_1\omega_1+h_3\omega_3\right)+2h_1h_3\left(\eta_1\omega_3-\eta_3\omega_1\right)
\]
この最後の項はLegendre の関係式を利用すれば$h_1h_3\pi i$にすることが出来る項です。

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