テータ関数と楕円積分の計算1
ここまで、楕円積分の研究から出発し、これを三種の標準形に分類した。
その中の第一種楕円積分については数値計算法を議論したり、その逆関数を考えるなどして詳しく調べたが、他の二種はあまり議論していなかった。
今回は残りの二種類、つまり第二種楕円積分と第三種楕円積分について考える。
楕円積分の第二種標準形を
∫z0√1−k2z21−z2dz
とし、ここで
z=sn(u,k)
と置換すれば、
∫z0√1−k2z21−z2dz=∫u0dn ucn ud(sn u)=∫u0dn2udu
となる。我々はJacobiにしたがって
E(u)=∫u0dn2udu
と書くことにしよう。これを変形する準備として、以前議論した加法公式においてv=ω3とおいた式を作ると、
℘(u+ω3)+℘(u)+e3=14℘′(u)2{℘(u)−e3}2={℘(u)−e1}{℘(u)−e2}℘(u)−e3
したがって、
℘(u+ω3)−e3={℘(u)−e1}{℘(u)−e2}℘(u)−e3−℘(u)−2e3=e1e2+2e32℘(u)−e3=(e1−e3)(e2−e3)℘(u)−e3
従って、
℘(u+ω3)−e3e1−e3=e2−e3℘(u)−e3
となる。この右辺をさらに書き直せば、
e2−e3e1−e3e1−e3℘(u)−e3=k2sn2w
となる。ゆえに、
dn2w=1−k2sn2w=1−℘(u+ω3)−e3e1−e3=e1−℘(u+ω3)e1−e3
そこで、この式から以下の結果が得られる。
E(w)=∫w0e1−℘(u+ω3)e1−e3dw(w=u√e1−e3)=1√e1−e3∫u0{e1−℘(u+ω3)}du=1√e1−e3{e1u+ζ(u+ω3)−η3}
これで第二種積分を既知の関数で表すことができた。後の議論で必要だから、これをさらに積分したものも考える。∫w0E(w)dw=∫u0{e1u+ζ(u+ω3)−η3}du=12e1u2+logσ(u+ω3)σ(ω3)−η3u
これの指数関数をΩ(w)と書くことにすると
Ω(w)=exp∫w0E(w)dw=e12e1u2σ3(u)
となる。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017