テータ関数と楕円積分の計算2
次に第三種の楕円積分を考えるのであるが、便宜上標準形を次の形にとる。
∫z0dz(1+nz2)√(1−z2)(1−k2z2)
ここでまたz=sn uとおけば、この積分は
∫u0du1+nsn2u
となる。しかしこれをそのまま考えるよりは次のように変化したものを考える方が便利である。まず被積分関数から1を引いて
∫u0−nsn2udu1+nsn2u
となる。ここで、n=−k2sn2a(aは定数)とおいて
k2sn2a∫u0sn2udu1−k2sn2a sn2u
とし、さらに積分記号の前の定数を少し変更したものを
Π(u,a)=k2sn a cn a dn a∫u0sn2udu1−k2sn2a sn2u
と名付ける。(4)をuで微分し、加法公式を用いて次のように計算する。
∂∂uΠ(u,a)=k2sn a cn a dn asn2u1−k2sn2a sn2u=12k2sn a sn u{sn(u+a)+sn(u−a)}
したがって、これらの式から以下の結果を得る。
2∂2∂u∂aΠ(u,a)=k2cn a dn a sn u{sn(u+a)+sn(u−a)}+k2sn a sn u{cn(u+a)dn(u+a)−cn(u−a)dn(u−a)}=k2sn u{sn(u+a)cn a dn a+sn a cn(u+a)dn(u+a)}+k2sn u{sn(u−a)cn a dn a−sn a cn(u−a)dn(u−a)}=k2sn u sn(u+2a){1−k2sn2(u+a)sn2a}+k2sn u sn(u−2a){1−k2sn2(u−a)sn2a}
一方で、加法公式
sn(u+v)=sn2u−sn2vsn u cn v dn v−sn v cn u dn u
を用いて計算すれば、
dn2a−dn2(u+a)=k2{sn2(u+a)−sn2a}=k2sn(u+2a){sn(u+a)cn a dn a−sn a cn(u+a)dn(u+a)}=k2sn(u+2a)sn u{1−k2sn2(u+a)sn2a}
同様にして以下の式が得られる。
dn2a−dn2(u−a)=k2sn(u−2a)sn u{1−k2sn2(u−a)sn2a}
これらを(6)に代入すれば、
2∂2∂u∂aΠ(u,a)=2dn2a−dn2(u+a)−dn2(u−a)
が得られる。ここで、aおよびuで逐次積分する。
∂∂uΠ(u,a)=E(a)−12E(u+a)+12E(u−a)+C
ここでCはaに無関係な定数だが、例えばa=0としてみれば(5)によってC=0となる。さらに積分すれば
Π(u,a)=uE(a)−12logΩ(u+a)+12logΩ(u−a)+¯C
となる。ただし¯Cはuに無関係な定数だが、u=0としてみると¯C=0となる。
この結果をさらに書き直すために、上式のuをwとてし、またα=a√e1−e3とすれば、
Π(w,α)=wE(α)−12logΩ(w+α)+12logΩ(w−α)=wE(α)+12logΩ(w−α)Ω(w+α)
が得られる。この式を用いた表式として、
E(w)=ddwlogΩ(w)=1√e1−e3ddulog{e12e1u2σ3(u)}=1√e1−e3{e1u+σ3′(u)σ3(u)}
が得られる。よってこの式から
E(α)=1√e1−e3{e1a+σ′3(a)σ3(a)}
という形で第三種楕円積分をあらわすことができる。
Ω(w−α)Ω(w+α)=e12e1(u−a)2σ3(u−a)e12e1(u+a)2σ3(u+a)=e−2e1auσ3(u−a)σ3(u+a)
これらを(7)に代入すれば次の結果を得られる。
Π(w,α)=u{e1a+σ3′(a)σ3(a)}−e1au+12logσ3(u−a)σ3(u+a)=uσ3′(a)σ3(a)+12logσ3(u−a)σ3(u+a)
これで第三種積分も既知関数で表すことができた。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017