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第44講:代数的加法公式と関数2

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代数的加法公式と関数2

今回も引き続き代数的加法公式と関数の性質について調べていこう。

簡単のためにf(u)を一価有理型関数とし、これが

R(ξ, η, ζ)=0

となる代数的加法公式をもつものとする。ただし

ξ=f(u),  η=f(v),  ζ=f(u+v)

で、またRは定数のみを係数とする有理整関数を表す。(1)u及びvに関してそれぞれ微分すれば

Rξdξdu+Rζζu=0Rηdηdv+Rζζv=0

そしてζu=ζvだから、上の二式からただちに

RξdξduRηdηdv=0

を得る。(1)(2)の間にζを消去した結果を

R1(ξ, η, dξdu, dηdv)=0

とし、この式においてv=c(任意の定数)とおいたものを

R2(ξ,dξdu)=0

すなわち

R2{f(u), f(u)}=0

とする。ただしR1R2はいずれも定数のみを係数とする有理整関数を表す。

(3)においてv=cとおいたときその結果が0=0となっては困るが、これに対しては次のように考える。R1ξdξdvの冪にしたがって整理し、

R1=Ai,jξi(dξdu)j=0

とする。R1は必ずdηdvを含むはずだから、すべてのAが形式的に0となることはない。よって一つのA0にするようなvの値をcとすればよい。もしまたそのAvのすべての値で0になるならば、Aの中のηdηdvをそれぞれξdξduと書き直したものをR2とすればよい。

これで(4)の微分方程式は常に得られることがわかる。ゆえに

定理1. f(u)が代数的加法公式をもつならば、f(u)は定数のみを係数とする第一階の代数的微分方程式を満足する。

微分方程式

R2(ξ, ξ)=0(ξ=dξdu)

をさらにuで微分すれば、

R2ξξ+R2ξξ=0

これから

f(u)=ξ= R2ξ R2ξξ

を得る。この右辺はξξの有理関数である。なお逐次に微分することによってξ等をすべてξξの有理関数として表すことが出来る。ゆえに以下の定理が成り立つ。

定理2. f(u)が代数的加法公式をもつならば、f(n)(u)  (n2)f(u)及びf(u)の有理関数として表される。

さて、f(u)は一価有理型と仮定しているから、もしそれがu=において正則であるかまたは極をもつならばf(u)は有理関数である。

またu=において真性特異点をもつならば、それは孤立するものかまたは極の集積点である。よって適当な数Cをとれば

f(u1)=f(u2)==C

となる無数に多くのu1u2を見つけ得る。これに対する

f(u1), f(u2), 

の値はいずれもR2(C,x)=0

の方程式の根になっているはずだが、一般に代数方程式は有限個数しか相異なる根をもち得ないから、(5)の中には無数に多くの等しい値があると言える。それらに対するuの値を便宜上やはりu1u2で表すこととすれば

{f(u1)=f(u2)=f(u1)=f(u2)=

となる。そうすれば定理2により一般に

f(n)(u1)=f(n)(u2)=(n2)

でなければならない。したがってf(u)のそれぞれu1及びu2を中心とした展開式は一致しなければならない。すなわち

{f(u)=c0+c1(uu1)+c2(uu1)2+f(u)=c0+c1(uu2)+c2(uu2)2+

この第一式においてuu+u1u2に変えれば

f(u+u1u2)=c0+c1(uu2)+c2(uu2)2+

となる。これを第二式と比較すれば

f(u+u1u2)=f(u)

すなわちf(u)u1u2の周期をもつことがわかる。

そこでu1u2=ωとおき、平面の原点と点ωを通る直線をgとし、ωの整数倍の各点を通りgに垂線を引いて全平面を幅|ω|の帯状の無限面分に分けたとする。

変数uが一つの周期帯の内にあっていずれか一方の向きに無限遠に近づくときlimf(u)が存在するならばこれをその方向における端値という。一つの周期帯内で無限遠に近づく方向が二つあるからその各々について端値の存否が考えられる、たとえ両方とも存在するとしてもその値は必ずしも等しいと限らない。

さて我々の考えているf(u)が上記の周期帯内で両方向ともに端値をもつ場合を考える。ここで

e2πiuω=z

とおけばf(u)zの一価関数となる。これをf(u)=φ(z)とする。この置換によってu平面の周期帯はz平面の全部に対応し、周期帯の無限に延びた両端はz=0及びに対応する。すると仮定によりf(u)は有理型でかつ端値をもつから、φ(z)0以外においては有理型でかつ0においても真性特異点をもつことはない。ゆえにφ(z)zの有理関数である。

したがってこの場合はf(u)ecuの有理関数である。

参考文献

参考文献は以下の通り。

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。

[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。

[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001

[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。

[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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