代数的加法公式と関数3
前回の続きから、代数的加法公式と関数の性質について議論する。
前回の議論の結果を用いて、f(u)が少なくとも一方の方向において端値をもたない場合を考える。そのとき∞がf(u)の真性特異点だから再び
f(u1′)=f(u2′)=⋯
となるような無数に多くの点u1′、u2′、⋯を見つけることができる。しかもそれらは同一の周期内に引き直してあると考えてよい。このことから前のようにしてf(u)はu1′−u2′の周期をもつことが結論できる。u1′、u2′、⋯は一つの周期帯内で∞に向かって収束するものであるから、u1′−u2′は前のωとはその偏角が等しくないようにとれる。よってこの場合にはf(u)は二重周期をもつことになる、そして有理型であるから、楕円関数である。
以上の結果をまとめると次の定理を得る。
定理3. 一価有理型にして代数的加法公式をもつ関数f(u)は次の三種に限る。
1) uの有理関数
2) ecuの有理関数
3) uの楕円関数
これを証明するために、我々はまずこのような関数が定理1にあるような微分方程式を満足することを示した。定理3の仮説は次のように言い換えることも出来る。
定理4. 一価有理型にして定数のみを係数とする第一階の代数的微分方程式を満足する関数は定理3の関数f(u)に限る。
これはすなわちBriot-Bouquetの定理の特別の場合である。
さて、定理3には「一価有理型である」という仮定があったが、次はその仮定がない場合を考えてみよう。
関数f(u)はu=0において正則であるとし、その展開式を
f0(u)=a0+a1u+a2u2+⋯
とする。f0(u)は解析関数f(u)の一要素である。f0(u)の収束円をK0とし、その半径をrとする。いま三点u、v、u+vがともにK0内にある限り常に
R{f0(u), f0(v), f0(u+v)}=0
の関係式が成立するものと仮定する。ただしRは前のように有理整関数を示す。そしてなおついでにR(x, y, z)はx、y、zに関して規約であると考える。
(1)は代数的加法公式だが、今はそれをf(u)のただ一つの要素f0(u)だけについて仮定するということである。いまf0(u)はu=0における要素と考えているが、これは他の点におけるものとしても以下の論法には影響がない。要するにどこかの一点における要素について(1)が成立すると仮定すればよい。
いま|u|<r2とすれば(1)においてv=uとおくことが出来るから、
R{f0(u), f0(u), f0(2u)}=0
R1{f0(u), f0(2u)}=0
と書くことにする。R1が恒等的に0になることはない。なぜならばもし0になるならばRがf0(u)−f0(v)の因数をもつことになって仮定に反するからである。
楕円関数の代数加法点公式は、楕円関数における基本的な性質の一つで、複素平面上の楕円格子を基にした周期性を反映している。この公式は、楕円関数 ℘(u) (Weierstrassの楕円関数)に関連していて、楕円曲線の幾何的な性質を代数的に表現できる。
楕円関数 ℘(u) は、複素数平面上で定義され、2つの独立な周期 ω1 と ω2 を持つ二重周期関数である。この周期性により、次が成り立つ。
℘(u+ω1)=℘(u),℘(u+ω2)=℘(u).
Weierstrassの楕円関数 ℘(u) の加法公式は次のように表される。
℘(u+v)=−℘(u)–℘(v)+14(℘′(u)–℘′(v)℘(u)–℘(v))2.
ここで℘′(u) は ℘(u) の導関数で、以下の関係を満たす。
(℘′(u))2=4℘(u)3–g2℘(u)–g3.
これはWeierstrassの楕円関数が満たす楕円曲線の方程式である。
加法公式は、楕円曲線の点 (x,y) の加法規則と深く関連している。具体的には、楕円関数 ℘(u) を使うと、楕円曲線上の点 P と Q の和 R を次のように計算できる
P=(℘(u),℘′(u)), $Q=(℘(v),℘′(v)), R=(℘(u+v),℘′(u+v))
これにより、代数的な計算で楕円曲線上の点の加法を扱うことが可能になる。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017