\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}
ベクトル解析演習19
今回は線積分の問題演習をしましょう。
要点のまとめ
以下、微分可能性を議論するのは面倒なので、スカラー関数やベクトル関数は全て滑らかであると仮定します。物理や工学での応用上はこれで充分です。また、定義域も空間全体\bm{R}^3とします。
始点と終点をもつ向きづけられた曲線C:x=x(t),y=y(t),z=z(t),~a\leq t\leq bとベクトル場\bm{v}(x,y,z)=(f,g,h)に対して、
\int_a^b\biggl\{ f\dfrac{dx}{dt} + g\dfrac{dy}{dt} + h\dfrac{dz}{dt} \biggr\}dt
という値を\bm{v}の積分路C上の線積分といい、\int_C\bm{v}\cdot d\bm{r}であらわします。ここで、d\bm{r}=(dx,dy,dz)です。流体力学の言葉で言えば、流体の速度ベクトルを\bm{v}としたとき、線積分はCに沿って単位時間に流れ出る流体の総量とみなすことができます。
線積分について成り立つ代表的な定理についてもまとめておきましょう。
\bm{v},\bm{w}をベクトル場、\lambda,\muを定数、C_1,C_2,Cを向きづけられた曲線とし、C_1の始点とC_2の始点が一致しているとき、以下が成り立ちます。
\int_{-C}\bm{v}\cdot d\bm{r} = – \int_{C}\bm{v}\cdot d\bm{r}
\int_C(\lambda\bm{v}+\mu\bm{w})\cdot d\bm{r} = \lambda\int_C\bm{v}\cdot d\bm{r} + \mu\int_C\bm{w}\cdot d\bm{r}
\int_{C_1+C_2}\bm{v}\cdot d\bm{r} = \int_{C_1}\bm{v}\cdot d\bm{r} + \int_{C_2}\bm{v}\cdot d\bm{r}
一般に、線積分は積分経路の取り方に依存し、始点と終点だけでは決まりません。しかし、特にスカラー場の勾配に限って言えば以下の式が成り立ちます。
\int_C(\nabla f)\cdot d\bm{r} = f(Q)-f(P)
つまり、スカラー場fの勾配\nabla fの線積分は途中の経路に依存せず、始点と終点のみから決まります。特にCが閉曲線ならばP=Qなので、\int_C(\nabla f)\cdot d\bm{r} =0が成り立ちます。このようなときの線積分は\ointと書くこともあります。
問題19
(1)
ベクトル場\bm{F}=(y,2x+z,x)の始点が原点で終点が(-3,6,12)の向きづけられた線分C上の線積分を求めよ。
(2)
平面上で3点(O(0,0),A(2,0),B(2,1)をこの順に結んでできる直角三角形の向きづけられた周をCとする。ベクトル場\bm{v}(x,y)=(2x+y^2,3y-4x)のC上の線積分を求めよ。
解答19
(1)
今、線分CはtをパラメーターとしてC:\{x=-t , y=2t , z=4t (0\leq t \leq 3)\}と表せ
これは明らかにCの向きに適合している。従って求める線積分は
\int_{C}\bm{F}\cdot d\bm{r}=\int^{3}_{0} \left\{y\frac{dx}{dt}+(2x+z)\frac{dy}{dt}+x\frac{dz}{dt}\right\}dt=-9
(2)
Cは以下のように3つの経路に分割できる。
C_1:\{(x,y)=(t,0) (t:0\rightarrow2)\} , C_2:\{(x,y)=(2,u) (u:0\rightarrow1)\} ,
C_3:\{(x,y)=(2v,v) (v:1\rightarrow0)\}
従って
\int_{C} \bm{v}\cdot d \bm{r}=\int_{C_1} \bm{v}\cdot d \bm{r}+\int_{C_2} \bm{v}\cdot d \bm{r}+\int_{C_3} \bm{v}\cdot d \bm{r}
=\int^{2}_{0} 2t dt + \int^{1}_{0} (3u-8)du + \int^{0}_{1} (2u^2+3v)dv=-\frac{14}{3}