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第24講:乗法公式

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関数の乗法公式

既に関数の加法公式を知っているから、それによって(2u)(3u)等を(u)で表すことが出来るはずであるがその計算は非常に面倒である。試しに(2u)を求めてみよう。 前回(4)においてv=uとおくと右辺が不定形になるから、まず
limvu(u)(v)(u)(v)=limvu(v)(v)=6(u)212g2(u)
として、次の式を得る。
(2u)+2(u)=14{6(u)212g2}2(u)2
したがって
(2u)=14{6(u)212g2}24(u)3g2(u)g32(u)=(u)4+12g2(u)2+2g3(u)+116g224(u)3g2(u)g3
これでは(3u)を求めるのすら容易でない、そこで次のような工夫をする。前回(1)の公式において、uvをそれぞれnuuとおく、ただしnは自然数とする。
(nu)(u)=σ(¯n+1u)σ(¯n1u)σ(nu)2σ(u)2
これをさらに変形するために今
ψn(u)=σ(nu)σ(u)n2
とおけば、(1)は次のようになる。
(nu)=(u)ψn+1(u)ψn1(u)ψn(u)2
 ここでψn(u)の関数について考えてみる。まずこれはuの楕円関数である、試しにu2ω1を加えれば
ψn(u+2ω1)=σ(nu+2nω1)σ(u+2ω1)n2=(1)ne2nη1(nu+nω1)σ(nu)(1)n2e2n2η1(u+ω1)σ(u)n2=σ(nu)σ(u)n2=ψn(u)
さてψn(u)は楕円関数であってかつnが奇数ならば偶関数、偶数ならば奇関数である(証明は容易につき略す)。ゆえにψn(u)nが奇数ならば(u)の有理関数、nが偶数ならば(u)の有理関数に(u)をかけたものに等しい(これは次回で証明する)。次にその式を今少し詳しく調べよう。
 まずnを奇数とする。ψn(u)はその定義からただちにわかる通り基本周期平行四辺形内ではu=0においてのみ極をもち、その位数は明らかにn21である。ゆえにψn(u)(u)で表せば、(u)のときにのみψn(u)となるから、(u)の有理整関数であってその次数はn212でなければならない。すなわち
ψn(u)=c0(u)n212+c1(u)n232+
両辺をuの冪級数に展開し、その最低冪の項の係数を比較すればc0=nであることを知る。ゆえに
ψn(u)=n(u)n212+
 nが偶数のときはψn(u)(u)で割ったものについて上と同様に考えれば、
ψn(u)=(u){n2(u)n242+}
であることが証明される。
 よって一般にnが奇数のときはψn(u)=Pnnが偶数のときはψn(u)=(u)Pn
とおくことにすれば、(2)は次のようになる。
 nが奇数のときは
(nu)=(u)(u)2Pn+1Pn1Pn2
 nが偶数のときは
(nu)=(u)Pn+1Pn1(u)2Pn2
 これによって(nu)の式を求める問題は一般にPnを求めることに帰着されたが、そのPnを求めるには次のような方法による。
 mnを二つの異なる自然数とし、
(mu)(u)=ψm+1(u)ψm1(u)ψm(u)2(nu)(u)=ψn+1(u)ψn1(u)ψn(u)2
辺々引けば(右辺では(u)を略す)
(mu)(nu)=ψm+1ψm1ψn2ψn+1ψn1ψm2ψm2ψn2
一方においてまた前回(1)によれば
(mu)(nu)=σ(¯m+nu)σ(¯mnu)σ(mu)2σ(nu)2
したがって
(mu)(nu)=ψm+nψmnψm2ψn2
(5)と(6)を比較すれば次の関係を得る、
ψm+nψmn=ψm+1ψm1ψn2ψn+1ψn1ψm2
特にm=n+1とすれば
ψ2n+1=ψn+2ψn3ψn+13ψn1
またmnをそれぞれn+1n1とすれば
(u)ψ2n=ψn(ψn+2ψn12ψn+12ψn2)
この最後の二式をPに関する公式に直せば次のようになる。
P2n+1={Pn+2Pn3(u)4Pn+13Pn1(n)(u)4Pn+2Pn3Pn+13Pn1(n)P2n=Pn(Pn+2Pn12Pn+12Pn2)
これによってnのときのP_nを知ればn\gt4のときの値は全て算出される。n\leqq4のときのP_nは実際の計算によって次のようになることが知られる、
\begin{align} P_1=&1、\hspace{1.5cm}P_2=-1\\ P_3=&3\wp\left(u\right)^4-\frac{3}{2}g_2\wp\left(u\right)^2-3g_3\wp\left(u\right)-\frac{1}{16}{g_2}^2\\ P_4=&-2\wp\left(u\right)^6+\frac{5}{2}g_2\wp\left(u\right)^4+10g_3\wp\left(u\right)^3+\frac{5}{8}{g_2}^2\wp\left(u\right)^2\\ &\hspace{2cm}+\frac{1}{2}g_2g_3\wp\left(u\right)+{g_3}^2-\frac{1}{32}{g_2}^3 \end{align}
これからただちに判る通り一般に
P_n=\sum C_{\lambda、\mu、\nu}{g_2}^\lambda{g_3}^\mu\wp\left(u\right)^\nu\hspace{1cm}\left(Cは有理定数\right)
で、ここに\lambda、\mu、\nu
2\lambda+3\mu+\nu=\left\{\begin{array}{ll} \displaystyle\frac{n^2-1}{2}\ \ \ & \left(nが奇数のとき\right)\\ \displaystyle\frac{n^2-4}{2}\ \ \ & \left(nが偶数のとき\right) \end{array}\right.
を満たすあらゆる負でない整数値をとるものとする。

参考文献

参考文献は以下の通り。

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。

[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。

[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001

[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。

[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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