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Bosonic string の臨界次元がなぜ26次元なのか

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$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
$\def\ap{\alpha’}$
$\def\coloneqq{:=}$

Bosonic string の臨界次元がなぜ26次元なのか

世界面上での振動モード

ボゾン的な弦理論では、弦の振動モードを記述するために、弦が広がる空間の次元が重要である。これらの振動モードは「世界面」の上で定義される量子場として振る舞い、これが理論の構造に影響を与える。

Virasoro 代数の中心電荷

量子化を進める際、理論の内部対称性を維持するためには、Virasoro 代数の中心荷(異常項)が消えなければならない。中心荷の消失条件を計算すると、時空の次元
$D$に関して以下の関係が得られます:
\[
c=D-26=0
\]
つまり、D=26 のときに異常が消えることが分かる。これは、理論が自己無撞着であるために必要な条件である。

より詳細な議論

真空$\Ket{0,k}$を

\begin{equation}
p^M\Ket{0,k}=k^M\Ket{0,k} 、 a^i_m\Ket{0,k}=0\label{eq:4.29}
\end{equation}

と定義すると、$a_m^{i\dag}$を$\Ket{0,k}$に作用させることで一般の状態$\Ket{N,k}$を

\begin{equation}
\Ket{N,k}=\left[\prod_{i=1}^{D-2}\prod_{n=1}^\infty\dfrac{\left(a^{i\dag}_n\right)^{N_{in}}}{\sqrt{N_{in}!}}\right]\Ket{0,k}\label{eq:4.30}
\end{equation}

と構成することが出来る。ここで、$N_{in}$はそれぞれのモードの占有数である。すなわち、$\Ket{N,k}$は

\begin{equation}
a^{i\dag}_na^i_n\Ket{N,k}=N_{in}\Ket{N,k}\label{eq:4.31}
\end{equation}

を満たす。前の式の左辺の$i$と$n$は和を取らない。ここでは、生成・消滅演算子$a_m^{i\dag}$、$a_m^i$を$L_n~n\neq0$で書き直してみる。$L_0$については正規順序化の曖昧さがあるため注意が必要である。講義で用いた生成消滅演算子の定義より$L_0$は

\begin{equation}
L_0=\ap p^Mp_M+\sum_{i=1}^{D-2}\sum_{n=1}^\infty na^{i\dag}_na^i_n=:\ap p^Mp_M+N\label{eq:4.32}
\end{equation}

と書くことが出来る。物理的な状態$\Ket{\psi}$はVirasoro 拘束条件を解決する必要があるので、

\begin{equation}
(L_0-a)\Ket{\psi}=0 、 L_n\Ket{\psi}=0 \mathrm{for~all~n\in\mathbb{N}}\label{eq:4.33}
\end{equation}

となることが必要である。但し、$a$は順序化のあいまいさから生じるもので、

\begin{equation}
a=\dfrac{D-2}{2}\sum_{n\geq0}n\label{eq:4.34}
\end{equation}

で与えられる。これは以下のように計算する。まず無限級数の公式を利用して、

\begin{align}
& \displaystyle\sum_{n=1}^\infty(\mathrm{e}^{-\epsilon})^n=\dfrac{\mathrm{e}^{-\epsilon}}{1-\mathrm{e}^{-\epsilon}}=\dfrac{1}{\mathrm{e}^{\epsilon}-1}=\dfrac{1}{\left(1+\epsilon+\dfrac{\epsilon^2}{2!}+\dfrac{\epsilon^3}{3!}+\cdots\right)-1} \nonumber\\
=&\dfrac{1}{\epsilon}\times\dfrac{1}{1+\left(\dfrac{1}{2}\epsilon+\dfrac{1}{6}\epsilon^2+\mathcal{O}(\epsilon^3)\right)}=\dfrac{1}{\epsilon}\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\epsilon+\dfrac{1}{6}\epsilon^2+\mathcal{O}(\epsilon^3)\right)+\left(\dfrac{1}{2}\epsilon+\dfrac{1}{6}\epsilon^2+\mathcal{O}(\epsilon^3)\right)^2\mp\cdots\right\}\nonumber\\
=&\dfrac{1}{\epsilon}\left\{1-\dfrac{1}{2}\epsilon+\left(-\dfrac{1}{6}+\dfrac{1}{2^2}\right)\epsilon^2+\mathcal{O}(\epsilon^3)\right\}=\dfrac{1}{\epsilon}-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{12}\epsilon+\mathcal{O}(\epsilon^2)\nonumber
\end{align}

を得る。これを利用すれば、

\[
\sum_{n=1}^\infty n\mathrm{e}^{-\epsilon n}=-\dfrac{d}{d\epsilon}\sum_{n=1}^\infty(\mathrm{e}^{-\epsilon})^n=\dfrac{1}{\epsilon^2}-\dfrac{1}{12}+\mathcal{O}(\epsilon)\overset{\epsilon\rightarrow0}{\sim}\sum_{n=1}^\infty n
\]

と正則化を行うことが出来る。これは、第$1$項が発散項、第$2$項が定数項、第$3$項が消滅項に対応している。無限級数の見かけの量が発散項と定数項と消滅項の和になっているときは、消滅項は全体に寄与せず、発散項は繰り込めると解釈し、定数項だけがその級数の実際の値であると考える。

さて、以上の議論から弦の状態の質量を

\begin{equation}
M^2=\dfrac{1}{\ap}\left(N+\dfrac{2-D}{24}\right)\label{eq:4.36}
\end{equation}

と決定することが出来る。但し、$N$は暗に定義されていた。最も質量が低い状態の開弦のスペクトラムを決定しよう。最も軽い状態は、質量が$M^2=(2-D)/(24\ap)$の真空$\Ket{k,0}$である。$D>2$のとき、質量の$2$乗は負になる。すなわち、$\Ket{k,0}$はタキオン的になり、それ故に真空は不安定になる。Boson 的弦理論に安定した真空が存在するかは知られていないが、超弦理論における真空は安定であることが分かっている。そのため、この問題にはこれ以上立ち入らないことにして第一励起状態、

\begin{equation}
a^{i\dag}_1\Ket{k,0} \mathrm{with} M^2=\dfrac{D-26}{24\ap}\label{eq:4.37}
\end{equation}

について考えることにしよう。全ての状態は、横方向の空間の回転群$SO(D-2)$の下でベクトルとして変換する。このことは、弦の励起は質量をもたない必要があり、それ故にMinkowski 時空におけるBoson 的弦理論は$D=26$次元でのみ辻褄が合うということを示唆している。

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