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調和振動子2
前回、量子力学における調和振動子のエネルギー準位と固有関数について紹介しました。今回はその導出をしましょう。
量子力学における調和振動子
量子力学における調和振動子は、シュレーディンガー方程式を用いて解かれる典型的な問題の一つであり、量子力学の基礎を理解する上で非常に重要です。以下では、調和振動子の波動関数とエネルギー準位をシュレーディンガー方程式から導きます。
調和振動子のポテンシャルエネルギー
調和振動子のポテンシャルエネルギーは以下のように表されます。
\[
V(x) = \frac{1}{2}m\omega^2x^2
\]
ここで、$m$は質量、$\omega$は角振動数、$x$は位置を表します。
時間に依存しないシュレーディンガー方程式
調和振動子のハミルトニアンは以下のように与えられます。
\[
\hat{H} = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} + \frac{1}{2}m\omega^2x^2
\]
時間に依存しないシュレーディンガー方程式は以下の形を取ります。
\[
\hat{H}\psi(x) = E\psi(x)
\]
これを展開すると次のようになります。
\[
-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2\psi(x)}{dx^2} + \frac{1}{2}m\omega^2x^2\psi(x) = E\psi(x)
\]
無次元化
解析を簡単にするために、無次元化を行います。以下の変数を導入します。
\[
\xi = \sqrt{\frac{m\omega}{\hbar}}x
\]
また、波動関数を次のように変換します。
\[
\psi(x) = \phi(\xi)e^{-\frac{\xi^2}{2}}
\]
これにより、シュレーディンガー方程式は次の形に書き換えられます。
\[
\frac{d^2\phi(\xi)}{d\xi^2} – 2\xi\frac{d\phi(\xi)}{d\xi} + \left(2\epsilon – \xi^2\right)\phi(\xi) = 0
\]
ここで、$\epsilon = \frac{E}{\hbar\omega}$は無次元化されたエネルギーです。
エルミート多項式の導入
この方程式は、エルミート多項式を用いることで解くことができます。波動関数が物理的に許容される($\psi(x)$が無限大で発散しない)ためには、解が多項式形になる必要があります。そのため、$\phi(\xi)$を次の形で仮定します。
\[
\phi(\xi) = H_n(\xi)
\]
ここで、$H_n(\xi)$はエルミート多項式であり、以下の直交関係を満たします。
\[
H_n(\xi) = (-1)^n e^{\xi^2}\frac{d^n}{d\xi^n}e^{-\xi^2}
\]
$n$は非負整数です。
エネルギー準位
エルミート多項式の性質を考慮すると、エネルギー準位は次のように離散化されます。
\[
E_n = \hbar\omega\left(n + \frac{1}{2}\right) \quad (n = 0, 1, 2, \ldots)
\]
これは、調和振動子のエネルギーがゼロ点エネルギー$\frac{1}{2}\hbar\omega$を持ち、量子数$n$に比例して増加することを意味します。
波動関数
最終的な波動関数は以下の形で表されます。
\[
\psi_n(x) = \left(\frac{m\omega}{\pi\hbar}\right)^{1/4}\frac{1}{\sqrt{2^n n!}}H_n(\xi)e^{-\frac{\xi^2}{2}}
\]
ここで、$\xi = \sqrt{\frac{m\omega}{\hbar}}x$です。
エルミート多項式の例
いくつかの低次のエルミート多項式を示します。
\[
H_0(\xi) = 1, \quad H_1(\xi) = 2\xi, \quad H_2(\xi) = 4\xi^2 – 2, \quad H_3(\xi) = 8\xi^3 – 12\xi
\]
これらを用いることで、低次の波動関数を具体的に求めることができます。
正規化条件
波動関数は次の正規化条件を満たします。
\[
\int_{-\infty}^{\infty} |\psi_n(x)|^2 dx = 1
\]
これにより、$\psi_n(x)$の正規化定数が決定されます。
今回のまとめ
調和振動子のシュレーディンガー方程式を解くことで、エネルギー準位が離散化され、波動関数がエルミート多項式とガウス関数の積で表されることがわかりました。






