ベクトルの復習
ベクトルの定義
ベクトルとは、大きさと方向を持つ量です。ベクトルは、物理で重要な役割をもちます。
変位は物体がどれだけ移動したかを表します。速度は単位時間あたりの位置の変化です。加速度は単位時間あたりの速度の変化です。
ベクトルは通常、太字($\mathbf{v}$)または矢印付き($\vec{v}$)で記されます。たとえば、3次元空間におけるベクトル $\vec{v}$ は、以下のように成分で表されます。
\[
\vec{v} = (v_x, v_y, v_z)
\]
ここで、$v_x, v_y, v_z$ は、それぞれ $x$、$y$、$z$ 軸方向の成分を示します。
ベクトルの大きさ(またはノルム)は次式で与えられます。
\[
|\vec{v}| = \sqrt{v_x^2 + v_y^2 + v_z^2}
\]
これは、ベクトルが原点からどれだけ離れているかを示します。
ベクトルの和と差
ベクトルの和
2つのベクトル $\vec{a} = (a_x, a_y, a_z)$ と $\vec{b} = (b_x, b_y, b_z)$ の和 $\vec{c} = \vec{a} + \vec{b}$ は、次のように成分ごとに加算します。
\[
\vec{c} = (a_x + b_x, a_y + b_y, a_z + b_z)
\]
ベクトルの和は、2つのベクトルを尾から先に連結すると、その対角線が和のベクトルとなります。
ベクトルの差
2つのベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ の差 $\vec{d} = \vec{a} – \vec{b}$ は、次のように成分ごとに減算します。
\[
\vec{d} = (a_x – b_x, a_y – b_y, a_z – b_z)
\]
これは、ベクトル $\vec{b}$ を反転(符号を反対にする)し、それをベクトル $\vec{a}$ に加える操作としても理解できます。
ベクトルの内積
ベクトルの内積(スカラー積)は、2つのベクトル間の角度や成分の相関を表す操作です。ベクトル $\vec{a} = (a_x, a_y, a_z)$ と $\vec{b} = (b_x, b_y, b_z)$ の内積は次式で与えられます。
\[
\vec{a} \cdot \vec{b} = a_x b_x + a_y b_y + a_z b_z
\]
内積は、次の幾何学的な表現とも等価です。
\[
\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta
\]
ここで、$\theta$ は $\vec{a}$ と $\vec{b}$ のなす角です。
内積の重要な特徴を2つまとめておきましょう。
$\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ のとき、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ は直交する(垂直である)。
$\vec{a} \cdot \vec{a} = |\vec{a}|^2$ は、ベクトルの大きさの2乗に等しい。
ベクトルの外積
ベクトルの外積(ベクトル積)は、2つのベクトルに垂直な新たなベクトルを生成する操作です。ベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ の外積 $\vec{c} = \vec{a} \times \vec{b}$ は、次のように計算されます。
\[
\vec{a} \times \vec{b} =
\begin{vmatrix}
\mathbf{i} & \mathbf{j} & \mathbf{k} \\
a_x & a_y & a_z \\
b_x & b_y & b_z
\end{vmatrix}
\]
ここで、$\mathbf{i}, \mathbf{j}, \mathbf{k}$ はそれぞれ $x, y, z$ 軸方向の単位ベクトルを表します。
行列式を展開すると、外積の成分は次のように与えられます。
\[
\vec{a} \times \vec{b} =
\big(a_y b_z – a_z b_y\big) \mathbf{i}
– \big(a_x b_z – a_z b_x\big) \mathbf{j}
+ \big(a_x b_y – a_y b_x\big) \mathbf{k}
\]
幾何学的には、外積の大きさは次式で与えられます。
\[
|\vec{a} \times \vec{b}| = |\vec{a}| |\vec{b}| \sin\theta
\]
ここで、$\theta$ は $\vec{a}$ と $\vec{b}$ のなす角です。
外積の重要な特徴を3つまとめておきましょう。
$\vec{a} \times \vec{b} = -(\vec{b} \times \vec{a})$(反交換性)。
$\vec{a} \times \vec{a} = \vec{0}$(同じベクトルの外積はゼロ)。
外積ベクトルは、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ の両方に垂直である。
今回のまとめ
ベクトルの基本的な演算(和と差、内積、外積)は、古典力学の変位、速度、加速度を扱う際に重要な役割を果たします。これらの概念を理解することで、物体の運動を正確に解析できるようになります。