ニュートンの運動方程式
古典力学では、物体の運動を記述するために、ニュートンの運動方程式(Equation of Motion, EoM)を基礎に微分方程式を用います。この微分方程式を解析することで、物体の位置、速度、加速度を時間の関数として表現することができます。特に常微分方程式(Ordinary Differential Equation, ODE)は、力学系の運動を解析する上で中心的な役割を果たします。
ニュートンの運動方程式と常微分方程式
ニュートンの第2法則は次のように表されます。
F=ma=md2xdt2
ここで、F は物体に作用する力、m は物体の質量、x(t) は時間 t における物体の位置です。この方程式は、位置 x(t) の2階常微分方程式です。力 F が x、速度 v=dxdt、または時間 t の関数である場合、この微分方程式を解くことで運動を完全に記述できます。
ばねの単振動
ばねによる単振動は、簡単な常微分方程式の具体例の一つです。フックの法則により、ばねの復元力は次のように与えられます。
F=−kx
ここで、k はばね定数、x はばねの変位です。この力を運動方程式に代入すると、次の2階常微分方程式が得られます。
md2xdt2+kx=0
この式を解くと、一般解は次のようになります。
x(t)=Acos(ωt)+Bsin(ωt)
ここで、ω=√km は角振動数、A と B は初期条件に依存する定数です。この解は単振動を記述しており、物体が時間とともにどのように動くかを示します。
減衰振動
次に、単振動の振動を基準に、減衰を考慮した振動系を見てみます。例えば、ばねに減衰力(速度に比例する摩擦力)が作用する場合、運動方程式は次のようになります。
md2xdt2+cdxdt+kx=0
ここで、c は減衰係数です。この2階常微分方程式を解析すると、減衰の程度によって異なる解が得られます。例えば、弱減衰の場合、解は次のようになります。
x(t)=e−γt(Acos(ω′t)+Bsin(ω′t))
ここで、γ=c2m は減衰率、ω′=√km–γ2 は減衰振動の角振動数です。この式は、振幅が時間とともに指数関数的に減衰する振動を表します。
非線形力学系
多くの現実の力学系では、運動方程式が非線形となります。例えば、振り子の運動は次の運動方程式で記述されます。
md2θdt2+mgsinθ=0
ここで、θ は振り子の角度、g は重力加速度です。小さな振動では近似として sinθ≈θ を用いることで線形化できます。この振動は単振り子と呼ばれ、単振動の振る舞いと数学的に等価です。しかし、大きな振動ではこの非線形方程式を直接解析する必要があります。
数値解法について
解析的に解ける常微分方程式は限られていますが、数値解法を用いることで任意の微分方程式を近似的に解くことが可能です。例えば、オイラー法やルンゲ=クッタ法などの数値手法を用いて、物体の運動をシミュレーションできます。数値解法については、理工系の大学であれば学部1~3年で習うことになります。
惑星運動
これまでは話を1次元に限定していましたが、運動が常に1次元で記述できるわけではありません。例えば、惑星の運動は、ニュートンの万有引力の法則に基づく次のような微分方程式で記述されます。
md2→rdt2=−GMm|→r|3→r
ここで、→r は惑星の位置ベクトル、G は万有引力定数、M は中心天体の質量です。この式を解析または数値的に解くことで、惑星の軌道を求めることができます。これについては中心力のもとでの運動のところで詳しく扱っていきます。
今回のまとめ
常微分方程式は、古典力学において物体の運動を記述するための基本的なツールです。これらの方程式を解くことで、単純な振動から複雑な非線形運動、さらには天体運動まで、さまざまな現象を解析できます。解析解が得られない場合でも、数値解法を用いることで現実世界の複雑な運動を理解する道が開かれます。このように、常微分方程式は古典力学を深く学ぶための基盤となる数学的手法です。