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【古典力学入門05】常微分方程式の解法

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古典力学における常微分方程式の解法

前回のコラムではニュートンの運動方程式と常微分方程式についてを扱いました。

古典力学では、運動を記述するために常微分方程式(ODE)が頻繁に登場します。これらの方程式を解くことにより、物体の運動状態を完全に記述できます。本稿では、古典力学で頻出するODEの型を具体例とともに解説し、それぞれの解法を説明します。

一般的な常微分方程式の分類

常微分方程式は、次のように分類されます。

1) 線形微分方程式
未知関数とその導関数が一次の関係にある。
\[
a_n(t)\frac{d^n y}{dt^n} + a_{n-1}(t)\frac{d^{n-1}y}{dt^{n-1}} + \cdots + a_0(t)y = f(t)
\]

2) 非線形微分方程式
未知関数やその導関数が非線形の関係にある。例えば、以下の方程式。
\[
\frac{d^2y}{dt^2} + y^2 = 0
\]

線形常微分方程式

一次線形常微分方程式

一次線形ODEの一般形は次のように書けます。
\[
\frac{dy}{dt} + P(t)y = Q(t)
\]
これを解くためには、積分因子を用いる必要があります。

1) 積分因子 \(\mu(t) = e^{\int P(t)dt}\) を計算する。
2) 方程式を両辺に \(\mu(t)\) を掛けて整理する。
3) 両辺を積分して解を得る。

例題演習

\[
\frac{dy}{dt} – 2y = e^t
\]
積分因子は \(\mu(t) = e^{-2t}\)。両辺に掛けると、
\[
e^{-2t}\frac{dy}{dt} – 2e^{-2t}y = e^{-t}
\]
左辺は積分可能な形になります。この式から、
\[
\frac{d}{dt}(e^{-2t}y) = e^{-t}
\]
が得られます。これを更に積分して計算すると、以下の式を得ます。
\[
e^{-2t}y = -e^{-t} + C
\]
従って、求める解は未知定数$C$を用いて
\[
y = Ce^{2t} – e^t
\]

二次線形常微分方程式

二次の線形ODEの一般形は次のように書けます。
\[
\frac{d^2y}{dt^2} + p\frac{dy}{dt} + qy = 0
\]
特性方程式を用いることで解くことができます。

1) \(r^2 + pr + q = 0\) を解き、根 \(r_1, r_2\) を求める。
2) 根の種類に応じて解を記述する。

例題演習

\[
\frac{d^2y}{dt^2} – 3\frac{dy}{dt} + 2y = 0
\]
特性方程式は以下のようにあらわせます。
\[
r^2 – 3r + 2 = 0
\]
解は \(r_1 = 1, r_2 = 2\)。したがって一般解は、
\[
y(t) = C_1e^t + C_2e^{2t}
\]

古典力学で頻出の微分方程式

単振動の方程式

単振動は次の2階線形微分方程式で記述されます。
\[
m\frac{d^2x}{dt^2} + kx = 0
\]
これは次のように書き直せます。
\[
\frac{d^2x}{dt^2} + \omega^2x = 0, \quad \omega = \sqrt{\frac{k}{m}}
\]
特性方程式を解くことで解を求めることができます。
\[
r^2 + \omega^2 = 0 \quad \Rightarrow \quad r = \pm i\omega
\]
解は次のようになります。
\[
x(t) = A\cos(\omega t) + B\sin(\omega t)
\]

減衰振動

減衰振動は次の形で記述されます。
\[
m\frac{d^2x}{dt^2} + c\frac{dx}{dt} + kx = 0
\]
一般化すると。
\[
\frac{d^2x}{dt^2} + 2\gamma\frac{dx}{dt} + \omega^2x = 0, \quad \gamma = \frac{c}{2m}
\]
特性方程式を解きます。
\[
r^2 + 2\gamma r + \omega^2 = 0
\]
根の種類に応じて解が異なります。
1) 弱減衰 (\(\gamma^2 < \omega^2\)) \[ x(t) = e^{-\gamma t}(A\cos(\omega' t) + B\sin(\omega' t)), \quad \omega' = \sqrt{\omega^2 - \gamma^2} \] 2) 臨界減衰 (\(\gamma^2 = \omega^2\)) \[ x(t) = (A + Bt)e^{-\gamma t} \] 3) 過減衰 (\(\gamma^2 > \omega^2\))
\[
x(t) = C_1e^{r_1t} + C_2e^{r_2t}, \quad r_{1,2} = -\gamma \pm \sqrt{\gamma^2 – \omega^2}
\]

数値解法の必要性

解析解が得られない場合、数値解法を用います。

1) オイラー法
次のように更新式を用いる。
\[
x_{n+1} = x_n + v_n\Delta t, \quad v_{n+1} = v_n + a_n\Delta t
\]

2) ルンゲ=クッタ法
より高精度な数値解法で、次の更新式を用います。
\[
x_{n+1} = x_n + \frac{1}{6}(k_1 + 2k_2 + 2k_3 + k_4)\Delta t
\]

今回のまとめ

常微分方程式は古典力学の基盤であり、運動を解析するために不可欠な手法です。線形方程式では解析解を求めやすい一方、非線形方程式では数値解法が重要となります。これらの解法を適切に選択することで、単振動や減衰振動、さらには複雑な天体運動まで、幅広い物理現象を理解することが可能です。

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