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【弦理論入門10】ボソン弦の理論10

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$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$

弦理論入門10

背景場におけるBoson 的弦理論:重力の発生2

驚くことに、ベータ関数が消えることは標的時空の作用

\begin{equation}
\mathcal { S } = \frac { 1 } { 2 \tilde { \kappa } ^ { 2 } } \int \mathrm { d } ^ { D } X \sqrt { – g } e ^ { – 2 \phi } \left( R + 4 \nabla _ { M } \phi \nabla ^ { M } \phi – \frac { 1 } { 12 } H _ { M N R } H ^ { M N R } – \frac { 2 ( D – 26 ) } { 3 \alpha ^ { \prime } } + \mathcal { O } ( \alpha ^ { \prime } ) \right)
\end{equation}

からの運動方程式を導くことと等価である。但し、$R$と$\nabla_M$はそれぞれ標的時空の計量$g_{MN}$と関連したRicci スカラーと共変微分である。従って、この式を$\phi$、$g_{MN}$、$B_{MN}$に関する零質量の閉弦の有効作用とみなすことが出来る。

前の記事にて言及したように、弦の結合定数はディラトン場の期待値を用いて$g_s=\mathrm{e}^\phi$で与えられる。更に、零質量でランクが$2$の対称テンソル場$g_{MN}$は有効作用から直ちに従うように運動方程式$\beta^g_{MN}=0$を満たす必要があるため、重力であると特定される。第$1$項はディラトン場と結合したEinstein-Hilbert 項である。従って、$g_{MN}$は標的時空の計量であると特定される。

ディラトン場$\phi$の運動項の符号は通常の記法と逆であるということに注意しなければならない。$D>2$での計量を

\begin{equation}
\tilde { g } _ { M N } = e ^ { \frac { 4 } { D – 2 } \left( \phi _ { 0 } – \phi \right) } g _ { M N }
\end{equation}

とリスケールすることで、作用のEinstein-Hilbert 項は正準規格化され、運動項の前の因子は負になって、

\begin{equation}
\mathcal { S } = \frac { 1 } { 2 \kappa ^ { 2 } } \int \mathrm { d } ^ { D } X \sqrt { – \tilde { g } } \left( \tilde { R } – \frac { 4 } { D – 2 } \nabla _ { M } \tilde { \phi } \nabla ^ { M } \tilde { \phi } – \frac { 1 } { 12 } e ^ { – \frac { 8 } { D – 2 } \tilde { \phi } } H _ { M N R } H ^ { M N R } – \frac { 2 ( D – 26 ) } { 3 \alpha ^ { \prime } } e ^ { \frac { 4 } { D – 2 } \tilde { \phi } } + \mathcal { O } ( \alpha ^ { \prime } )\right)
\end{equation}

となる。但し、$\tilde{\phi}=\phi-\phi_0$であり、$\phi_0$はディラトン場の漸近値である。$\kappa=\tilde{\kappa}\mathrm{e}^{\phi_0}$であることと、$\kappa$はNewton 定数$G$を用いて$\kappa=\sqrt{8\pi G}$となることにも注意しなければならない。リスケールされた計量${\tilde{g}}_{MN}$によって決められたRicci スカラーを含む部分をみると、作用のEinstein-Hilbert 項のディラトン場$\phi$を含む因子を取り除いたということが分かる。元々の場を用いて書いた作用がstring frame action であるのに対して、正準規格化がなされた作用はEinstein-frame 作用と呼ばれる。

一般に、弦理論におけるEinstein-frame 作用は、弦理論の低エネルギー極限において重力や他の場を記述する際に使用される特定の形式の作用のことである。この枠組みは、特に超重力理論や時空の幾何構造の研究において重要である。

弦理論では、弦フレーム(string frame)と呼ばれる別の枠組みも使われる。この枠組みでは、作用は次のような形になる。
\[
\mathcal{S}_{\text{string}} = \dfrac{1}{2\kappa^2} \int d^Dx \sqrt{-g} e^{-2\phi} [R + 4(\nabla \phi)^2 + \cdots]
\]
ここで、$\phi$はディラトン場で、$e^{-2\phi}$は弦の結合定数に関連する「有効な重力定数」を表す。

まとめると、弦フレームでは、ディラトン場$\phi$の指数因子が重力項$R$に掛かっており、重力とディラトンが結合している。
Einstein-frame では、計量テンソルが再スケールされるため、重力項の前の係数が一定になり、ディラトン場の影響が分離される。

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