$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
$\def\ap{\alpha’}$
$\def\gs{g_s}$
弦理論入門21
重なったD ブレーン:Chan-Paton 因子
これまで、$U(1)$ゲージ理論で記述される$1$枚のD$p$ ブレーンの上の開弦について見てきた。これを非果敢ゲージ理論に一般化するために、$N$枚のD ブレーンが重なったものに対応するChan-Paton 因子を導入する。
Chan-Paton因子は、弦理論においてオープン弦の端点に付随する量子数であり、ゲージ対称性を記述するために用いられる概念である。この因子は、弦が終端するDブレーンの存在を考えると自然に現れる。
開弦の端点には、ゲージ群の表現空間に対応するラベル(Chan-Paton因子)が割り当てられており、これにより弦の状態が追加の内部空間で記述される。これらの因子を行列として表し、弦の振動モードと組み合わせて状態を定義しよう。具体的には、開弦の端点間での振動モードがこれらの因子と相互作用し、ゲージ場の構造を生み出す。
例えば、開く弦が終端するDブレーンが \(N\) 個ある場合、Chan-Paton因子は \(N \times N\) 行列として表され、ゲージ対称性は \(U(N)\) 群となる。この構造により、開弦の弦理論は非可換ゲージ理論を自然に含むことができる。
Chan-Paton 因子は弦の端点が割り当てられているような世界面の視点における非動力学的な自由度である。これらの因子は様々に重なったD ブレーンとつながった開弦でラベル付けされている。例えば、Chan-Paton 因子$\lambda_{ij}$はブレーン$i$からブレーン$j$に伸びた弦でラベル付けされている。但し、$i,j\in\{1,\cdots,N\}$である。この結果得られる行列$\lambda$はLie 代数の要素になっている。このことから、向きづけれた弦において、開弦の散乱振幅とコンシステントなLie 代数のみが$U(N)$となっていることが分かる。但し、$N$は重なっているD ブレーンの枚数をあらわしている。従って、$\lambda$はHermite 行列であり、$\lambda_{ij}$が各成分に対応するように選べることになる。
Chan-Paton 因子は世界面の作用の大域的対称性であるが、標的時空においてはこれは局所的対称性となってしまう。重なったD ブレーンに端点がつながっている開弦の理論は事実上、非可換ゲージ理論を記述出来る。
これまで、我々は向きづけられた弦のみを考えてきた。ここでいう「向きづけられた」とは弦での左から右という向きが曖昧さなく定義されているという意味である。我々は空間方向の拡がりを$\sigma$でパラメトライズしたのだから、このことは明らかである。向きづけられていない弦は
\begin{equation}
\Omega : \sigma \rightarrow \sigma _ { 0 } – \sigma
\end{equation}
と定義されるパリティ変換$\Omega$を課すことで構成される。与えられた変換を$\sigma$に$2$回施すと、
\[
\Omega^2\sigma=\Omega(\sigma_0-\sigma)=\sigma_0-(\sigma_0-\sigma)=\sigma
\]
となるので、変換は確かにパリティ変換である。但し、閉弦で$\sigma_0=2\pi$、開弦で$\sigma_0=\pi$である。この世界面での向きを変えるような変換は、弦理論における大域的対称性である。我々は$\Omega$不変な弦の状態のみを用いることで理論を濾過することが出来る。$\Omega$はO プレーンとみなすことが出来る。もしO プレーンとD ブレーンを両方考えると、低エネルギーでのゲージ理論はゲージ群$SO(N)$または$USp(N)$を持つ。






