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【量子力学入門37】変換理論

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変換理論

量子力学では、状態を表す波動関数や状態ベクトルが、ヒルベルト空間内のベクトルとして扱われます。変換理論は、量子系を異なる表現(表記)に変換する際の数学的枠組みを提供し、その中で位置演算子や運動量演算子などの物理量がどのように取り扱われるかを説明します。

以下では、変換理論の基本的な考え方を数式とともに説明します。

状態ベクトルとヒルベルト空間

量子力学の状態は、ヒルベルト空間\( \mathcal{H} \)に属するベクトルとして表されます。状態\( |\psi\rangle \)は、ある基底\( \{|\phi_n\rangle\} \)に関して次のように展開されます。
\[
|\psi\rangle = \sum_n c_n |\phi_n\rangle,
\]
ここで\( c_n \)は複素係数であり、内積\( c_n = \langle \phi_n | \psi \rangle \)によって計算されます。

演算子\( \hat{A} \)は、ヒルベルト空間上の線形作用素であり、観測可能量(オブザーバブル)に対応します。

基底変換と座標系の選択

ある物理量、例えば位置\( \hat{x} \)が固有値を持つ基底\( \{|x\rangle\} \)では、状態ベクトル\( |\psi\rangle \)は次のように表されます。
\[
\psi(x) = \langle x | \psi \rangle.
\]
\( \psi(x) \)は、位置空間における波動関数です。

一方で、運動量\( \hat{p} \)が固有値を持つ基底\( \{|p\rangle\} \)を選ぶと、状態は運動量空間で次のように記述されます。
\[
\tilde{\psi}(p) = \langle p | \psi \rangle.
\]

基底間の変換:変換核

位置基底と運動量基底の間の変換は、内積\( \langle x | p \rangle \)を通じて行われます。この内積は次のように与えられることが知られています。
\[
\langle x | p \rangle = \frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} e^{i p x / \hbar}.
\]

これを用いて、位置空間と運動量空間の波動関数の間の変換が次のように記述されます。
\[
\tilde{\psi}(p) = \int_{-\infty}^{\infty} \psi(x) \langle p | x \rangle \, dx = \frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} \psi(x) e^{-i p x / \hbar} \, dx.
\]
\[
\psi(x) = \int_{-\infty}^{\infty} \tilde{\psi}(p) \langle x | p \rangle \, dp = \frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} \int_{-\infty}^{\infty} \tilde{\psi}(p) e^{i p x / \hbar} \, dp.
\]
これらはフーリエ変換とその逆変換の形式を持ちます。

観測可能量の表現

量子力学では、観測可能量は演算子として表されます。位置演算子\( \hat{x} \)と運動量演算子\( \hat{p} \)の間には、交換関係が成り立ちます。
\[
[\hat{x}, \hat{p}] = i\hbar.
\]

位置空間での表現では、
\[
\hat{x} = x, \quad \hat{p} = -i\hbar \frac{\partial}{\partial x}.
\]

運動量空間では、
\[
\hat{p} = p, \quad \hat{x} = i\hbar \frac{\partial}{\partial p}.
\]

このように、基底を変えることで演算子の形が異なります。

エネルギー固有状態と時間発展

ハミルトニアン\( \hat{H} \)が与えられる場合、その固有値問題を解くことでエネルギー固有状態\( |E_n\rangle \)が得られます。
\[
\hat{H} |E_n\rangle = E_n |E_n\rangle.
\]

初期状態\( |\psi(0)\rangle \)が与えられると、時間発展はシュレディンガー方程式に従います。
\[
i\hbar \frac{\partial}{\partial t} |\psi(t)\rangle = \hat{H} |\psi(t)\rangle.
\]

これをエネルギー固有状態の基底で展開すると、
\[
|\psi(t)\rangle = \sum_n c_n e^{-iE_n t / \hbar} |E_n\rangle, \quad c_n = \langle E_n | \psi(0) \rangle.
\]

今回のまとめ

変換理論は、量子力学における物理量の取り扱いを基底変換によって柔軟に行う枠組みを提供します。位置や運動量などの物理量が異なる基底でどのように表現されるかを理解することは、量子力学の応用や解析において極めて重要です。

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