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【量子力学入門41】磁場中の荷電粒子1

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磁場中の荷電粒子1

磁場中にある荷電粒子のラグランジアンの導出は、古典力学の枠組みから始めて量子力学に拡張する形で説明されます。今回は、古典力学でのラグランジアンの基本的な構造を確認した後、それを量子力学に応用する方法を数式を用いて詳しく解説します。

今回導出した量子力学における磁場中の荷電粒子のラグランジアンを用いて、次回から4回にわたって色々な応用を紹介します。

古典力学における磁場中の荷電粒子のラグランジアン

磁場中にある荷電粒子の運動は、ローレンツ力によって記述されます。ローレンツ力は次式で与えられます。

\begin{equation}
\mathbf{F} = q(\mathbf{E} + \mathbf{v} \times \mathbf{B}),
\end{equation}

ここで、$q$ は粒子の電荷、$\mathbf{E}$ は電場、$\mathbf{B}$ は磁場、$\mathbf{v}$ は粒子の速度です。

まず、静電場と静磁場を考慮したラグランジアンを構築します。この場合、粒子のラグランジアンは以下のように仮定されます。

\begin{equation}
L = T – V,
\end{equation}

ここで、$T = \frac{1}{2}m\mathbf{v}^2$ は粒子の運動エネルギー、$V$ はポテンシャルエネルギーです。

電場と磁場を記述するために、電磁ポテンシャル $\phi$(スカラー電位)と $\mathbf{A}$(ベクトルポテンシャル)を導入します。これらは次の関係を満たします。

\begin{equation}
\mathbf{E} = -\nabla \phi – \frac{\partial \mathbf{A}}{\partial t}, \quad \mathbf{B} = \nabla \times \mathbf{A}.
\end{equation}

このポテンシャルを用いると、ラグランジアンは次の形になります。

\begin{equation}
L = \frac{1}{2}m\mathbf{v}^2 – q\phi + q\mathbf{v} \cdot \mathbf{A}.
\end{equation}

ここで、$q\mathbf{v} \cdot \mathbf{A}$ の項は磁場による影響を表しています。このラグランジアンは、オイラー-ラグランジュ方程式を適用することでローレンツ力を再現します。

オイラー-ラグランジュ方程式の確認

ラグランジアンから運動方程式を導出するために、オイラー-ラグランジュ方程式を適用します。

\begin{equation}
\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{\mathbf{r}}}\right) – \frac{\partial L}{\partial \mathbf{r}} = 0.
\end{equation}

$L = \frac{1}{2}m\dot{\mathbf{r}}^2 – q\phi + q\dot{\mathbf{r}} \cdot \mathbf{A}$ を用いると、$\mathbf{r}$ の項について次のように計算できます。

\begin{align}
\frac{\partial L}{\partial \dot{\mathbf{r}}} &= m\dot{\mathbf{r}} + q\mathbf{A}, \\
\frac{\partial L}{\partial \mathbf{r}} &= -q\nabla \phi + q\dot{\mathbf{r}} \cdot \nabla \mathbf{A}.
\end{align}

時間微分を計算すると、

\begin{equation}
\frac{d}{dt}\left(m\dot{\mathbf{r}} + q\mathbf{A}\right) = m\ddot{\mathbf{r}} + q\frac{\partial \mathbf{A}}{\partial t} + q\dot{\mathbf{r}} \cdot \nabla \mathbf{A}.
\end{equation}

これを整理すると、ローレンツ力の方程式が再現されます。

量子力学への拡張

古典力学のラグランジアンを用いて、量子力学における磁場中の荷電粒子のハミルトニアンを導出します。まず、対応する運動量 $\mathbf{p}$ を導出します。

\begin{equation}
\mathbf{p} = \frac{\partial L}{\partial \dot{\mathbf{r}}} = m\dot{\mathbf{r}} + q\mathbf{A}.
\end{equation}

この運動量を用いると、ハミルトニアンは次のように定義されます。

\begin{equation}
H = \mathbf{p} \cdot \dot{\mathbf{r}} – L.
\end{equation}

具体的な形に展開すると、

\begin{equation}
H = \frac{1}{2m}(\mathbf{p} – q\mathbf{A})^2 + q\phi.
\end{equation}

このハミルトニアンは、シュレディンガー方程式やディラック方程式に直接用いることができます。

量子力学における応用

量子力学では、運動量 $\mathbf{p}$ を演算子 $-i\hbar \nabla$ に置き換えます。この結果、シュレディンガー方程式は次のようになります。

\begin{equation}
i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t} = \left[\frac{1}{2m}\left(-i\hbar \nabla – q\mathbf{A}\right)^2 + q\phi\right]\psi.
\end{equation}

この方程式は、磁場と電場が存在する場合の波動関数の時間発展を記述します。

さらに、ベリー位相や量子ホール効果といった現象も、この形式に基づいて記述されます。特に、ベクトルポテンシャル $\mathbf{A}$ がゲージ変換を受ける場合、波動関数の位相因子がどのように変化するかが重要な役割を果たします。

今回のまとめ

磁場中の荷電粒子のラグランジアンは、古典力学の枠組みで運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの差として定義され、ローレンツ力を再現する形に設計されます。このラグランジアンを量子力学に拡張することで、シュレディンガー方程式やその他の量子力学的記述が導かれます。これにより、磁場や電場が量子系に与える影響を解析する道が開かれます。

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