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【量子力学入門44】磁場中の荷電粒子4

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磁場中の荷電粒子4

量子ホール効果 (Quantum Hall Effect, QHE) は、強い磁場中に置かれた二次元電子系において観測される現象であり、その特徴的な性質は物性物理学やトポロジーの分野で重要な役割を果たしています。今回は、磁場中の荷電粒子の一般的なラグランジアンを復習し、そこから量子ホール効果の基本的な性質を導出します。

磁場中の荷電粒子の運動

まず、磁場中の荷電粒子の運動方程式を導出するために、ラグランジアンを復習します。

ラグランジアンの形式

荷電粒子のラグランジアンは以下のように書けます。
L=12m˙r2+q˙rA(r),


ここで、m は粒子の質量、q は粒子の電荷、r=(x,y,z) は粒子の位置、A(r) は磁場のベクトルポテンシャルであり、B=×A を満たすとします。

オイラー-ラグランジュ方程式

ラグランジアンを用いてオイラー-ラグランジュ方程式を立てると、以下が得られます。
ddt(L˙r)Lr=0.


各項を計算すると、
L˙r=m˙r+qA(r),Lr=q˙rAr.

この式から運動方程式を導くと、ローレンツ力を含む形式、
m¨r=q˙r×B,

が得られます。

量子ホール効果の理論

量子ホール効果は、二次元電子系(例えば、半導体ヘテロ構造やグラフェン)の強い磁場中での電子の量子力学的振る舞いに基づいています。この現象を理解するために、次のステップで議論を進めます。

ランダウ準位

二次元電子系を考え、系に強い磁場 B=Bˆz を印加します。ベクトルポテンシャルは、ロンドンゲージ A=(By,0,0) を用います。この状況で、電子のハミルトニアンは次のようになります。
H=12m(pqA)2.


運動量演算子 p を含む項を展開すると、
H=12m[p2x+(py+qBy)2].

このハミルトニアンを解くと、エネルギー固有値はランダウ準位と呼ばれる離散的な値をとり、
En=ωc(n+12),n=0,1,2,,

ωc=qBm はサイクロトロン周波数です。

電気伝導の量子化

次に、ホール効果の伝導特性を導出します。外部電場 E を印加し、磁場と直交する電流 j を考えます。ローレンツ力と電場による力のバランスからホール電圧が生じます。

量子ホール効果においては、ホールコンダクタンス σxy が次の量子化された値を取ります。
σxy=νe2h,νZ.


ここで、ν はランダウ準位の占有数に対応する整数です。この量子化は、電子系のエッジ状態の整列とトポロジカル不変量に起因します。

トポロジカルな視点

量子ホール効果はトポロジーとも深い関係があります。特に、ハミルトニアンのベリー曲率 F を用いたチャーン数 C によって特徴づけられます。
C=12πBZFd2k,


ここで、積分はブリルアンゾーン (BZ) 全体で行われます。このチェルン数が整数値をとることが、ホールコンダクタンスの量子化を保証します。

今回のまとめ

量子ホール効果は、電子系の量子力学的性質とトポロジーが結びついた現象であり、その基本的な理論はランダウ準位の形成とチェルン数によるホール伝導の量子化に基づいています。この効果は、高精度な基準抵抗の実現やトポロジカル絶縁体の研究にも応用されています。

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