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【量子力学入門46】多粒子の量子力学入門

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多粒子の量子力学入門

これまで議論してきた量子力学は、粒子が1個の単粒子系について考えてきました。今回は、これまでの量子力学を多粒子系に拡張することについて話します。

正準交換関係と単粒子系

量子力学では、運動量演算子 ˆp と位置演算子 ˆx は以下の正準交換関係を満たします。
[ˆx,ˆp]=i


ここで、[ˆA,ˆB]=ˆAˆBˆBˆA は交換子を表します。

単一の粒子系では、波動関数 ψ(x) が状態を記述します。この系のハミルトニアン ˆH は典型的には次の形をとります。
ˆH=ˆp22m+V(ˆx)


ここで、V(ˆx) はポテンシャルエネルギーを表します。

多粒子系への拡張

多粒子系では、複数の粒子が関与するため、状態は高次元の波動関数 ψ(x1,x2,,xN) によって記述されます。ここで、N は粒子数です。これらの粒子がボース粒子かフェルミ粒子であるかによって、波動関数の対称性が異なります。

ボース粒子の波動関数は粒子交換に対して対称です。
ψ(x1,x2,,xN)=ψ(x2,x1,,xN)

フェルミ粒子の波動関数は粒子交換に対して反対称です。
ψ(x1,x2,,xN)=ψ(x2,x1,,xN)

生成・消滅演算子

多粒子系を効率的に扱うために、生成演算子と消滅演算子を導入します。

生成演算子 ˆa と消滅演算子 ˆa

これらの演算子は以下の交換関係を満たします。

ボース粒子の場合 (交換関係)
[ˆai,ˆaj]=δij,[ˆai,ˆaj]=[ˆai,ˆaj]=0

フェルミ粒子の場合 (反交換関係)
{ˆai,ˆaj}=δij,{ˆai,ˆaj}={ˆai,ˆaj}=0


ここで、{ˆA,ˆB}=ˆAˆB+ˆBˆA は反交換子を表します。

生成演算子 ˆai は粒子を特定の状態 i に追加し、消滅演算子 ˆai は状態 i から粒子を取り除きます。これにより、多粒子系の状態を次のように表現できます。
|n1,n2,=(ˆa1)n1(ˆa2)n2n1!n2!|0


ここで、|0 は粒子が存在しない真空状態を表します。

第二量子化

第二量子化の基礎

第二量子化では、多粒子系のハミルトニアンを生成・消滅演算子を用いて表現します。単粒子の基底 {ϕi(x)} を選び、それに基づく場演算子を次のように定義します。
ˆψ(x)=iϕi(x)ˆai,ˆψ(x)=iϕi(x)ˆai


ここで、ˆψ(x) は位置 x における粒子の消滅を表し、ˆψ(x) は粒子の生成を表します。

ハミルトニアンの形式

多粒子系のハミルトニアンは、通常以下の形をとります。
ˆH=dxˆψ(x)h(x)ˆψ(x)+12dxdxˆψ(x)ˆψ(x)V(x,x)ˆψ(x)ˆψ(x)

第一項は単粒子演算子 h(x) を含む項で、運動エネルギーや外部ポテンシャルを表します。
第二項は粒子間相互作用を記述します。V(x,x) は位置 xx における相互作用ポテンシャルです。

応用例

自由ボース気体のハミルトニアン

自由ボース気体では、相互作用がないため、ハミルトニアンは次のようになります。
ˆH=iϵiˆaiˆai


ここで、ϵi は単粒子エネルギー準位を表します。この場合の基底状態は、最も低いエネルギー準位に全粒子が集中するボース凝縮状態です。

フェルミ気体のハミルトニアン

非相互作用フェルミ気体では、ハミルトニアンはボース気体と同様に表現できますが、フェルミ粒子の占有状態はパウリの排他原理により制約されます。
ˆH=iϵiˆaiˆai,ni{0,1}


ここで、ni は占有数演算子を表します。

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