MENU

【古典力学】古典力学04-剛体の力学2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
$\def\rmd{\mathrm{d}}$

古典力学04

簡単に解ける運動

質点系の角運動量と同様、剛体の角運動量は運動方程式
\begin{equation}
\dfrac{\rmd L_z}{\rmd t}=I\dfrac{\rmd\omega}{\rmd t}=\sum(\bm{r}\times\bm{F}_i)_z=N_z
\end{equation}
に従う。これが剛体の回転運動における基礎方程式となる。特に実体振り子の問題が頻出である。

おもりの質量が$m$、ひもの長さが$L$の振り子の振れ角$\theta$が微小で$\sin{\theta}\simeq\theta$と近似できる単振り子の問題の場合、運動方程式は
\begin{equation}
m\ddot{x}=-mgx/L
\end{equation}
となる。このとき、角振動数は以下で与えられる。
\begin{equation}
\omega=\sqrt{\dfrac{g}{L}}
\end{equation}
これが実体振り子の場合、角振動数は慣性モーメント$I$と腕の長さ$R$を用いて以下で与えられる。
\begin{equation}
\omega=\sqrt{\dfrac{mgR}{I}}
\end{equation}

滑りなしと滑りありの違い

滑りなしの運動と滑りありの運動についても簡単に注意しておく。具体例として、円柱や球体など簡単な軸対称の質量分布を持つ剛体が水平面となす角$\alpha$の斜面を転がる運動を考えよう。剛体の質量を$M$、慣性モーメントを$I$、外径を$2a$とする。また、剛体が斜面から受ける垂直抗力の大きさを$N$、摩擦力の大きさを$F$とすると、運動方程式は次のように書き下せる。
\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rcl}
M\ddot{x}&=&Mg\sin{\alpha}-F\\
M\ddot{y}&=&N-Mg\cos{\alpha}\\
I\ddot{\theta}&=&aF
\end{array}
\right.
\end{equation}
今、$y$座標は固定であることから第$2$式より$N=Mg\cos{\alpha}$とわかる。残された第$1,3$式には$x,\theta,F$と$3$種類の未知数が存在するため、この問題はもう$1$つ条件を必要とする。それが滑りなし・滑りなしの条件である。

滑りなしの場合、斜面の角度が十分小さく、斜面の静止摩擦係数$\mu$を用いて$F<\mu N=\mu Mg\cos{\alpha}$を満たすことが条件である。この場合、斜面に沿った重心の移動距離$x$と重心周りの回転角$\theta$には$x=a\theta$の関係が成り立つ。これによって具体的に運動方程式が計算できる。先の運動方程式を解くと、斜面水平方向の加速度は \begin{equation} \ddot{x}=\dfrac{1}{1+\dfrac{I}{Ma^2}}g\sin{\alpha} \end{equation} 質点が滑らかな斜面を滑り落ちる際の加速度は$g\sin{\alpha}$だから、剛体の慣性モーメントの値によって加速度は遅くなることが分かる。なお、この場合は運動の最中に動摩擦力が働かないのでエネルギーの損失はなく、力学的エネルギー保存則が適用できる。 滑りありの場合、斜面の角度が十分大きく、不等式$\tan{\theta}>(Ma^2+I)\mu/I$を満たすことが条件である。この場合、動摩擦力の大きさ$F$が$F=\mu’Mg\cos{\alpha}$となるためやはり運動方程式が計算できるようになる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。